初依頼
真紀は蜘蛛糸警報器からの反応が無いのに目が覚めた。
周囲を見ても薄暗いから、まだ日の出前だと考えられるけどなんでだろう?
なんでだろう。
あっ思い出した。ここは宿屋だっけ。
窓がしまっているから暗いのか。
蜘蛛糸を伝わって壁際に移動、窓を開けた。
登りたての日差しが優しく、真紀を包む。
どうやら習慣通りに、目が覚めていたようだ。
旅の間中、起きたらラジオ体操と言う名の準備運動をしていたのだが、室内では人の迷惑になりそうなので、外に出ることにして、身体が軽いことに気がついた。
森の中では寝る時もフル装備でいたが、ここは安全な砦の中だと思い、マントと背負い袋は床の隅に置いて寝たのを思い出し、袋を背負いマントを羽織って廊下に出た。
まだ早い時間なのか、誰とも会わずに、裏庭に出ることができた。
裏庭には、井戸が有り自由に使って良いと聞いていたので、水を汲み上げて顔を洗った。
準備運動を終えた頃に、宿屋の親父が現れて朝御飯の準備ができていると教えてくれた。
その時に、アランさん達の事を聞くと、遅くまで飲んでいたから、起きるのは昼になるんじゃないかと教えてくれた。
フワフワではないが、焼きたてのパンは美味しい、スープは野菜と肉が沢山入っていてしっかり食べることができた。
満足したところで、冒険者ギルドに行き、バーンさんのギルドカードを受け取った。カードには幾つか穴が明けられて見た目で違いがすぐに分かるようになっている。
冒険者ギルドを年齢や怪我で引退する時に、思い出として、処理を受ける人が居るとギルド職員改めギルド店員さんが言っていた。
せっかく来たので依頼表を見てみると、昨日座っていた所からでは死角になっていた壁一面に貼り紙がしてあった。
その中で星無印の依頼を見ると、砦内の清掃や荷物運び、畑仕事、草刈り等、簡単なお手伝いが殆どであった。
簡単な仕事だけに、依頼料は銅貨十枚から五十枚程。
宿の料金は銅貨五十五枚、三日以上の滞在だと割引で五十枚になったので五日分を先払いした。
銅貨の価値は百円強程で、銅貨三枚でパンと飲み物を買うことが出来る。ちなみに、銅貨百枚で銀貨一枚となり、銀貨百枚で金貨一枚となる。
何か依頼を受けようかと思ったが、自分の格好を見て、先ずは服装を整えることにした。
ギルド店員に服屋の場所を聞いて来たのだが、古着屋のようだ。
子供服は古着と言うのが一般的らしい。
新品の服で着飾る気はないし、作業着のつもりなので、ちょうど良いと言えばそうなんだけど。
丈夫そうで汚れても目立たない、な濃い緑色をした長袖シャツと長ズボンを二着ずつと、ベルト一本とタオル三枚購入した。
さっそく宿に持ち帰り、部屋で着替えようとして、下着を買っていないことに気がついたが。
包帯水着が下着代わりになると考えてなおして、そのまま着ることにした。
服を着たあと、念のため包帯水着を鑑定したが、やはり回復能力は消えてしまい普通の包帯になっていた。
服の上から腕装備と足装備をして、宿を信用していない訳では無いが、自分の背負い袋は戸棚ではなく、天井裏の柱に丈夫な蜘蛛糸で縛っておいた。
中身を整理した元ジョンさんの袋を背負って、腰にハタキを装備しマントを羽織って、片手にホウキ。見た目は殆ど変わらないが街中用の身軽な格好になった。
当然、黒い石ころと回復包帯入り袋はベルトにくくりつけて両腰にぶら下がっている。
準備完了で一階に降りると、アランさん達が遅い朝飯と言うか昼飯を食べていたのでアタシも同席した。
ランチは宿泊者と言うことで銅貨五枚。朝食メニューに鶏肉のステーキのような物が追加されていた。
食べながら話を聞くと、明日の朝、オーク討伐の依頼を完遂するために再出発、ギルドからも指名依頼を受けてゴブリンの調査もを兼ねて行くことになったと。
任務完遂すれば星三個に昇級することになったので、気合いを入れて午後は出発の準備をするとのこと。
だからマッキーの面倒を見てあげられなくて、ごめんと言っていたが、アタシ的には問題ないので大丈夫だよと言っておいた。
アランさん達と宿で別れて冒険者ギルドに到着した。星無しの依頼表を確認すると、殆ど減っていない。見習い冒険者は少ないみたいだ。
アタシに出来ることを考える。倉庫整理や荷物運び、砦の補修作業とかの力仕事は非力な為除くと、砦内の清掃、ドブ清掃、道路清掃、ネズミ駆除、草刈り、畑仕事、ペット探し、店番等しか選べない。定番の薬草採取は星半分からとなっていた。
無印の間は砦内作業のみのようだ。
アタシの能力的にペット探しが良さそうだけど、ペットとして飼われていたのなら、自力でエサを得ることが出来ないだろうから。日数が経っているのは残念だけど無理だよね。
ネズミ駆除。ネズミ五匹で銅貨五枚、以後一匹に付銅貨一枚の出来高払い、場所は見たことがあるなと思い、思い出したドブ清掃の依頼書と同じ場所だ。こちらは銅貨十五枚。
依頼書を持って受付の店員に同時に依頼を受けても良いかと尋ねたら、微笑みつつ問題無いとのこと。
さっそく場所を聞いて現場に行った。
そこは老夫婦の住む大きな屋敷で、以前は旦那が定期的に清掃していたが、腰を痛めてしまい、屈む作業が出来なくなったので依頼を出したが、誰も受けて貰えず。そのうちネズミが集まって来たから更に依頼を出したとのこと。
期待されている事が嬉しくて、さっそく作業に取り掛かる。装備は全て外し、包帯水着だけになった。
詰まっている臭い泥を掻き出して麻袋に入れる。良く乾燥させると肥料になるらしく、物置の横に置いておいて欲しいと指示を受けた。
掻き出し終了後に井戸から水を汲み上げてドブに流し込み、掻き出しきれなかった泥を流す。ついでに自分の身体にもかけて匂いを落として作業完了。
ネズミ駆除に取り掛かる。これは振動感知を使うことによって、潜伏場所を特定して効率良く捕らえる。都合二十五匹、これで屋敷にネズミは居なくなった。
ネズミは屋敷の中にも居たので奥様に付きそって貰っていたが、こんなに居るとは思っても居なかったと笑ながら旦那に話していた。
旦那は、ギルドから派遣されたのが小さな子供だったのは驚いたが、これだけ丁寧で、かつ手際よく作業出来るなら納得だと言ってくれた。
依頼書にサインを頂き、ネズミ駆除の追加金銅貨二十枚に更に銅貨十枚上乗せしてくれた。
こうして、真紀は初依頼を完遂する事が出来た。
その後、冒険者ギルドにネズミ駆除依頼が急増したのは、気のせいであろう。




