アタシ、マッキー十二歳
その後も、アタシは四十歳だと何度も言ったが、取り合ってくれず。
挙げ句の果てには、俺もそうだったけど、十四、五のガキ頃は、夢と現実が……と、持論を展開して説教までしてきた。
先ほどまでの暗い雰囲気がなくなり、みんな微笑みながら顔を上げて周囲の警戒をし始めたので、大人しく説教をされることにした。
アタシは大人だから話しは全て聞いたよ。けど、見た目の事ばかりで長いので、まとめて返事をしたよ。
「それでもアタシは四十歳」
その後、アランさんは説得を諦めたみたいで、黙って行ってしまった。
でも、砦の門の前に着いたところだから、もしかしたら理由は違うのかもしれない。
アランさんは、そのまま先に歩いて行き、プレートを見せながら門兵に話しかけていた。
どうやらアタシの事を説明してくれている様で、門兵がチラチラ見てきていた。
アランさんは何やら書類にサインをして、最後に銀貨一枚渡していた、そして代わりに真っ赤なプレートを受け取っていた。
これは、一時滞在入門許可書で身元保証はアランさん。
ギルド証でも住民証でも、なんでも身分証明出来る物と引き替えに銀貨を返却してくれるとのこと。
これは子供だけの制度(大人は銀貨五枚で返却なし)なので、これからは、見た目通りの十二歳と言いなさいと言われた。
アラフォー女子が十二歳の振りって、どんなバツゲームなのかと肩を落としたアタシを見て、アランさんはしてやったり顔。
だから草原では、あんなに長々と説得しようとしていたのか。初めから理由を言ってくれれば良かったのにと、睨み付けたがどこ吹く風だった。
砦の門は二重になっており、第一門は開いていたが第二門は閉じていて、その横の通用門の前に居る門兵にプレートを見せることで砦に入ることが出来た。
入ってすぐは、大広場になっていて、囲むように石造りの頑丈そうな建物が並んでいた。話を聞くと砦の守護兵が住んでいて有事の際、大広場に集合するとのこと。
そこを抜けると、沢山の人々が生活しているとわかる、街があった。
街中に行くと思いきや、入ってすぐの大きな建物に向かっていった。
ここが冒険者ギルドのようだ。壁にはプレートに刻印されていたのと同じ、盾の前に剣と杖がクロスしている意匠が施されている。
躊躇なく進むアランさん達から離れないようについていった。
ギルドの中は、沢山の椅子や机がならんでいて、奥はカウンターになっていて銀行の窓口の見える。
アランさん達はアタシにそこで座って待っていてくれと言って。ギルド職員に話しかけていた。
話を聞いた職員は驚愕した表情を見せて、奥に消えていったが、すぐに戻ってきてアランさん達を連れてまた奥に消えていった。
ゴブリンの話をしにいったのだと思って、何気にギルド内を観察することにした。
カウンターは三つあり、二つは女性、一つは男性の職員が座っていた。三人とも美人さんである。
その後ろに、厳つい男性がどっしり座っていた。
今は日暮れ前くらいの時間なので、戻ってくる冒険者達で慌ただしくなると思っていたが、そんなことはなく、何となくおかしい気もしたが、ファンタジー小説と現実とでは違うのかもと考えていた。
しばらくすると、アランさん達が戻ってきた。
ここで一旦解散のようで、アランさんを残してアタシに手を振りながらギルドから出ていった。
アランさんが言うには、何がなくても、先ずは身分証ってことで、冒険者ギルドに登録することを進めてきた。
アタシみたいな身無し子が入手出来る身分証は、冒険者ギルド以外には無く。ギルドに貢献することによって星が刻まれればギルドが身元保証をしてくれることになるとのこと。
星無しの間は、見習い扱いなので身元責任は紹介者のアランさんが引き受けることになるらしい。
さすがに、そこまでして貰う訳にはいかないと辞退しようとしたが、命の恩人を無下にすることは出来ないと、幼い割りには物事がしっかり分かっていると、だから信用出来るから問題なしと押しきられてしまった。
ギルド登録に銀貨一枚が必要となったが、さすがに金銭の事は、信用以前の事だと断り入門証の代金と合わせて自分の背負い袋から出して返金した。
刻印のあるプレートは、やはりギルドカードと言うものであった。
カードを発行するための書類を自分で書き込んでいたら、職員さんに誉められた。
十二歳の振りをしなければならないので、「ありがとう」と返しておいてから、背後にいるアランさんを睨んでおいた。
最後に血液を垂らして下さいと言われてギョッとしたが、成り済まし防止の為に魔力を登録する必要があるとのことであった。
以外とセキュリティが高いみたいだ。
出来上がったギルドカードを受け取り、内容を確認した。
この世界での表記だとアタシの名前は『MAKKII』となるのだけど、なんだか字面が美しくないと感じて。これでも読めるから良いかしらと聞いて決めた。
名前:MACKY
ギルド貢献度:ARANNAOISENNKO
見習いの間は身元責任者の名前になるとのことで裏面は何も描かれていない。
しかし相変わらず読みづらい。
知っているから『アラン 青い閃光』と読めるけど知らなければ『あらんなおいせんこ』意味不明だ。
ギルドカードを入手して、身分証明が出来るようになったが、ここに訪れた本題はこれからだ。
再びアランさんがギルド職員に話しかけて、アタシを連れて奥に向かって行った。




