イジらしさと
川岸から少し離れた森の中の獣道を歩いていく。
初めは視界の広い草原の方が安全を確保しやすくて歩きやすいと考え歩いていたのだけど。
目で見える分、気になってしまい、常に周囲をキョロキョロ伺っていたので歩くペースも落ちるし、緊張で余計に疲れてしまった。
アタシ的には、振動感知能力があるので、森の方が安全に移動できると考え直して今に至る。
獣道は、真っ直ぐではなく左右に蛇行したり、分かれ道があったりと、難易度は低いけど天然の迷路みたいだ。
たまに行き止まりになったりしている。
そんな場所は果実の樹があったり、イモやニンジンなどの根野菜があったりしているので、がっかりすることは少ないが、来た道を戻って別の道へ進み直さないと行けないのが厄介である。
そんな行き止まりに、またもや着いてしまったが、今までとは明らかに様相が違う。
よくよく調べてみると、草やつるに覆われているが、元は家だったようだ。
柱や屋根は崩れ落ち、壁が一部残っているだけなので、放棄されてから、かなりの年月が経っていると考えられる。
作りとしては、丸太小屋とかロッジとか、そんな感じである。
周囲は切り開かれ、元は畑にしていたに違いない。
何せ、トウモロコシが何本もはえている。
まだ食べられるほど成長していないことが残念であった。
家の中の調査は断念。
近付いた事により、振動感知の反応で白蟻が数千単位で居ることが分かってしまったから。
下手に触ると崩れて生き埋めになりかねない。
家の周囲を調べたが、これと言っておかしな物はなかった。
家を通過して少し歩いた所に石を積んだ物があり、周囲には骨が散らばっている。
積まれた石は、お墓のようだ。
お墓は荒らされた感じは無いのに、周囲に散らばる骨は何だろう。
お墓の石を良く見ると、平石に何かが刻まれているようだ。
『WAGAIKITAAKASHIURANIWANIUMERU』
やはりローマ字読みの日本語のようだ。
『わが いきた あかし うらにわに うめる』
で間違いないだろう。
さぁ、どうしようかな。
あからさまに怪しい。
宝のある場所を示す石板のセオリーは、最初の位置に埋まっていることが多い。
もしかしたら、家の中に書き置きがあって、墓を探せってなっているかもだけど。
アタシ的には、ここを掘るか、放置して先に進むかの二択である。
感情では立ち去りたい。
だって、生きた証なんて見つけさせられたら、岩を掘った人の思うつぼだよね。
こんな危ない場所にいると言うことは、人付き合いなんて出来なかったのだろうし。
独りで死ぬなんて寂しかったのだろう。
死んだ後でも、他人に迷惑を掛けられる。
悔しいけど、すばらしい作戦だ。
ってアタシの勝手な思い込み。
理性は、少しでも情報がほしい。
だから掘りたい、と言ってきている。
結局。
予想通りと言うか、やっぱりと言うか、お弁当箱サイズの金属製の箱が埋まっていた。
箱を開けると、紙が入っていた。
嫌な予感がしつつも、読んでみる。
『この紙を読む者がいると言うことは、我はこの世に、いないのであろう。心配するな数々の試練を乗り越えてきたお前の経験は、この先、生きて行く助けになるだろう。我が生きた証は、お前の経験に昇華され、次代に受け継がれ永遠の命となる…』
その後は、自分に対する美辞麗句が並んでおり、最後に名前らしく。
ジークフリート・シザー この上に眠る。と締められていた。
どうやら、本当に独りで居たらしい。
そして、自分が死んでも埋めて貰えない事が分かっていたから、この(墓の)上に眠るってことなのね。
それに試練とか経験とか書いてあるけど、この人どんだけ他人を振り回す気でいたのかしら。
振り回している間のどこかに、やる気を出し続けてもらうため、値打ちのあるものがあるかもしれないが、元から全クリアは目指していないので紙を金属箱に戻し、埋め直した。
全クリアは次代の勇者に頑張ってもらおう。
そう考え、シザーさんの墓をあとにした。
真紀の顔には笑みが浮かんでいる。
間接的と言っても、人の意思と関わることが出来たからだ。
他人との関わり合いが皆無では、人は生きていけない。
シザーさんは亡くなってしまったのだろうけど。
いつ現れるか分からない誰かを待っていただなんて、なんてイジらしい。
真紀は、そんな事を考えていた。




