お腹がすいたです。
アタシは、月を見ていた。
「この世界の月は、真ん丸ではないのね。」
もしかしたら、見掛けがそう見えるだけで、実は違うかもしれないけど、
大きいほうは、男爵芋みたいな形をしていて、
小さいほうは、メークインみたいな形。
月を見て、地球ではないと気がついた瞬間、パニックを起こしかけたが、
その月をずっと見ていたら、どうでも良くなってきた。
アタシ(僕)は、天涯孤独(群れない孤独な生き物)だから、
両親がなくなってから、、ずっと独り暮らし、女の独り暮らしは敵が多いのよね(自分以外は敵か食べ物)
アタシが生きているところがアタシの(僕が居るところが僕の)[楽園]になるのよね。
あれ?なんだか思考にノイズがかかったような気がしたけど、まぁいいか。
楽園かぁ。良い言葉だね。
心の奥底って言うか、魂から、それを望んでいるような気がする。
うん、当面のアタシの目標!
この地に楽園(生活の場)を作ること。
でも、ここでは無理よね。
いや、逆に、ここならなんとかなるかも、でも、ここに居続けなければならない。
何故なら、今踏みしめているのは大地ではなく。
大きな岩である。
イメージ的には、オーストラリアにあるエアーズロック。
あんな感じ。
端まで行って、見下ろしたとこ。
目測で、多分ここから地面まで五十メートルくらい。
結構高い。
そして見つけてしまった。
巨大爬虫類!
丸まって寝ているから、実際の大きさは良くわからないけど。
トカゲ(爬虫類)って蜘蛛の天敵だよね。
いや、今は怪人?蜘蛛女だから、
普通のサイズのトカゲなら問題なしですけど。
アレは、アタシサイズでも、ぱっくりいけるでしょ。
出発したばかりだが、さっき出てきた穴の中に待避した。
う〜ん、どうしよう。
ここが、日本どころか、地球でもないことは理解した。
誘拐→改造→失敗→ポイ捨てではなく。
ファンタジー小説でお馴染みの異世界転生なのね。
そんでもって、アタシのチートは、蜘蛛の能力と。
ここを出るまでは、(失敗)怪人説で、納得していたのに、
今考えると、なんで納得していたのだろう?
蜘蛛の能力を、人間に移植する技術が日本にあるなら、
もっと話題になっているよね。
でも、こんなチート能力を持っていても、
あんな巨大爬虫類がいる世界で生き残るだなんて難しいよね。
難しいけど、何も出来ずに食べられて死ぬのは嫌。
何かしらの対抗手段を考えなければ。
でも武器と呼べる物は、艶やかな黒い石ころくらいしかないし。
こんなの投げつけたところで、たかが知れているよね。
戦っても勝てないなら、逃げれば良いか。
逃げる手段なら事欠かないね。
追われたって、おしりから糸を出せば、
きっと絡まって、暫くは追えなくなるはず。
でも、見つからないことが大前提だよね。
うん、それでいこう。
作戦は決まったけど、
夜歩き回るのは、無謀だよね。
眠くないけど、明日の為に、寝ておこう。
あの目を覚ました黒い岩肌のある場所なら安全に違いない。
石ころばかりで、何も居なかったし、何か居た痕跡とかもなかったしね。
ふふふ、寝床は、もう考えてあるのよ。
「わたあめのように柔らかい糸、放射状に出ろ」
糸を出すこと、数秒。
寝るのに十分な塊になったところで、横になる。
「おやすみなさい」
誰も居ないとわかっていながら、そう呟き、眠りについた。
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先ほど眠りについた真紀であったが、すぐに目を覚ました。
目を覚ました真紀は、先ほどの真紀とは、違うようだ。
そして、一言。
「お腹がすいたです。」