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予行練習 その1

背負い袋と、マントが完成したので両方とも装備してみる。


背負い袋には、金属箱と完成した薫製肉を詰めてある。


歩く、走る、飛び跳ねる、反復横跳び、色々動いたが背負い袋は、動きの阻害にならないようだ。


最後にラジオ体操で締めようとしたけど、マントが絡まってくるので、ちょっと鬱陶しい。


でも、肌が露出しない身を包む抱擁感?安心感?は、想像の遥か上であったので、作って良かったと思えた。



この後は、防具の強度試験。


ベタベタ糸で貼り合わせた硬い包帯が、どれだけ丈夫なのか確かめてみた。


防具の素材である硬い包帯を、なるべく厚くした物を岩と岩の間に橋のように置く。



小石くらいなら弾くことが出来るのは、初めから判っていたので、真紀が持ち上げる事の出来る最大の重さの岩を落としてみる。


さすがに折れ曲がってしまった。



二枚重ね、三枚重ね、四、五、〜十枚重ねた所で、折れる事無く岩を弾き返した。



硬い包帯、十枚重ねで三センチくらい、この厚さで、この強度なら十分だろう。


ハニカム構造が作れれば、強度が上げられると考えたが、そんな複雑な糸は出せないので、硬い包帯の間に普通の包帯を挟むことにした。


厚さ四センチになったが、それでも軽くて丈夫な素材が出来ることに満足した。


この素材を利用して、両腕の前腕部を守る籠手と、両足の先から脛を守る、すね当てを作る予定である。


包帯を腕と足に巻き、ベタベタ糸で硬化させて作った型に、防具素材を取り付ける。


硬い包帯を曲げることは出来ないので、消しゴムが着いているようにしか見えないのが残念。


隙間を包帯で埋めてオール蜘蛛糸素材の防具の完成である。



本当は人間の急所の一つである心臓と頭を守る防具も作りたかったが、心臓を守る胸当は、試作を着けた瞬間、身体に巻いていた回復包帯が能力を失ってしまった。


さんざん悩んだ末に、回復包帯を選択した。


頭は、ヘルメットなんて作れないし。


鉢金みたいな物は、曲げられないからダメだし。


結局、包帯をハチマキ代わりに頭に巻くことにした。



フル装備して動いてみる。


多少動きづらくなったが特に問題は感じない。



そのままの格好で狩りにも行ってみたが、問題なくウサギを得ることができた。



翌日、旅の予行練習を兼ねて、小川沿いを下ってみた。


振動感知能力の向上により、コボルトと戦った場所までは、半分の時間で着いた。



小川の片隅で、座り込み感慨に耽っていると。



ゴブリンの振動を感知した。


まだ遠いが、ゴブリンは一頭で、こちらに近づいて来ているようだ。


進行方向に居たゴブリンに気が付いた小動物は、いずれも離れていく。


周囲に中型以上の振動は無い。


真紀は、小動物達に習って逃げることも出来たが、戦う事を選択した。



体調も万全、武器防具もしっかり装備している。


これで戦って負けるようなら、長旅なんて出来ない。



気合いを入れて茂みに隠れた。


ヘタレと言われても、まだ正面から戦う所まで選択出来なかったからだ。


不意討ちでも、まず一撃入れて効果があるか確かめたい。


そんな心理である。


徐々に近寄る振動。


目当ては真紀ではなく、小川の水のようだ。


真紀の隠れる茂みに一別もくれず、通りすぎた。


真紀は、茂みから飛び出し、無言でゴブリンの背中をホウキで突き刺した。


ホウキの切っ先は期待通りに、ゴブリンの背中の皮を突き抜け肉を穿った。


ゴブリンは突然受けた衝撃に動きを止めていたが、背中を襲う痛みに気づいたのであろう、全身を使って暴れだした。


一撃で倒すことが出来なかったと思い、ホウキを引き抜き、そして距離をあけて、真紀は身構えた。


ホウキの支えが無くなったゴブリンは倒れて、転がり回っている。


地面は、背中から噴き出した血で、真っ赤に染まっていき、

徐々にゴブリンの動きが鈍くなり、やがて動かなくなった。



振動感知でも、ゴブリンの反応はなくなったことで構えを解いた。



ホウキでの一撃は十分に効果を発揮したようだ。


ゴブリンの血でよごれた切っ先を小川で洗い。


傍らに置き、包帯包丁を取り出しゴブリンの解体に取り掛かった。


これは肉を得るためではなく、ホウキが何処まで刺さったのか確認する、いわゆる解剖である。


適当に切り裂き、内蔵に穴が開いている事を確認した。


一本一本の糸は、一ミリにも満たない太さなのに、折れずに突き刺さる。


一対一の状況なら無類の強さを誇るので無いだろうか?


子供の頃、近所の巫女さんが、竹ボウキで野良犬を追い払っていたのを思い出して作った武器ではあるが、小動物どころか、こんな良く判らない生物にまで効果があるだなんて、純粋に驚きであった。




せめてもの供養にと食べられるか判らないが、ゴブリンの死体から少し肉を切り取って袋にしまって、この場から離れた。



肉食の生き物が近づく振動を感知したからだ。



昼食代わりに焼いて食べてみた所、肉食系動物全般に言える事だが。


食べられない程ではないが、臭くて硬かったので、口直しにオレンジを食べることにした。



まだまだ旅の予行練習は続く。




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