見たまんま
アントニオ・バーン、遺言書のような暴露本に書かれていた名前だ。
きっと遺体本人の名前であろう。
昨日は暗かったので、見落しが無いように、バーンさんの荷物を確認し直す。
確認がてら、まずは貨幣と思われる物が散乱しているので整理した。
整理に使うのは、包帯である。
包帯の端にベタベタ糸をつけ、重ねるようにして包帯を貼りつけ、袋のように加工した。
その袋の中に、金貨と思われる物三枚、銀貨と思われる物十枚、銅貨と思われる物二十枚を個別に入れた。
価値は判らないが、それなりに大金のような気がする。
空のビンは、有りがたく使わせて貰おう。
小川でしっかり洗い、日陰で干す。
何度か繰り返せば、元の液体も薄まり問題なくなるであろう。
刻印のあるプレートは、よく見ると、盾の前で剣と杖がクロスしいる。
その下に、アントニオ・バーンと刻印され星が四個ほど並んでいる。
裏面には、杖が大きく描かれてあった。
ファンタジー的には、ギルドカードとか、身分証とか、だと考えられる。
星の数、杖の意味から察するに、バーンさんは、ランクの高い魔法使いだと想像できた。
その割には、遺体の周辺に、杖らしき物が見当たらなかった。
見落としたのかな?
後でまた見に行くことにした。
羽根はペン代わりで、インク壺は、そのままだろう、深く考えずに纏めて包帯でくるんだ。
遺言書の呈した暴露本も、児童書も、読み返す気がしないので、これも纏めて包帯でくるむ。
空箱を調べたが、金属製の割には、軽いと思っただけでこれと言って不振な点は見られない。
後は、貴金属品だ。
魔法使いの持ち物だと分かったので、魔道具かもしれないと思い、網袋から、首飾りを取り出して調べる、調べる、調べたが、宝石付きの鍵と言うことしか判らない。
次に腕輪、指輪と調べたが。
やっぱり判らない。
こんな時に、鑑定能力があれば良いのに。
ぼんやりと、そう思ったが、黒い石ころは反応しない。
まぁ、そんなものでしょ。
基本となる知識がなければ、知らない事は、判らないだろうしね。
そう言えば、あのゲームでも初期の頃は、武器鑑定能力を持っていないと、武器の名前しか分からなかったな。
珍しく独りで狩りに行き、苦労したけど強い敵を倒して大量のアイテムを入手して、持って帰ろうにも重量オーバーになって、
でも置いていくのが勿体無くて、自キャラの後ろから前に置き直し、さもサッカーのドリブルをするかのように持ち帰って、
ワクワクしながら武器鑑定能力持ちの人に見て貰ったのに、
全部町売りの武器と同じ程度の能力しかなかった時はヘコんだな。
ドリブルにかかった一時間を返せと、泣きながら武器屋に売りに行ったな。
まぁ、それも良い思い出。
……網袋の下に砂がある。
黒い石ころが、六つに減っていた。
もしかしたらと思い。
鑑定と思いながら、指輪を凝視すると頭の中に情報が浮かび上がった。
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・宝石付きの指輪
・指に付けることが出来る。
・能力 不明
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続けて腕輪も見る。
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・宝石付きの腕輪
・腕に付けることが出来る。
・能力 不明
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まさかと思い。
金属製の箱も見る。
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・金属製の箱
・物を入れる事が出来る。
・能力 不明
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更に空きビンを見る
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・空きビン
・何も入っていないビン
・能力 不明
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小川の水を入れてから、再び見る。
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・水入りのビン
・水が入ったビン。
・能力 水が飲める。
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ここまでやってみて分かった。
真紀は久しぶりに、大声を出したい気分になり、そのまま叫んだ。
「見たまんまじゃないかぁ!」
どうやら鑑定と念じる事により、真紀の経験、知識に則った情報を思い浮かべられる能力のようだ。
貴重な黒い石ころを使って、今の真紀には微妙としか言えないような能力を手に入れることが出来た。




