惨状
糸がどこまで通用するのか、それを検証するために、それぞれ堅さを変えて十ヵ所に罠を仕掛けていた。
柔らかい方から五番目までは残骸しかなかったが、それ以降は切れずに大量に虫が掛かっていた。
中には、糸まみれになっているカマキリもかかっていたことから。
柔らかい糸にかかっていた虫を横取りする際に、絡まったけど気にしないで、引きちぎっていたが六番目で身動きがとれなくなったようだ。
六番目から十番目まで、普通の虫サイズからメートル超えしている大型の虫まで、少なくとも百匹は張り付いている。
あまりの惨状に、膝から崩れ落ちていた真紀であったが。
見てしまったが、見なかったことにして。
洞窟に逃げ帰った。
落ち着いたところで、実験の整理を始めた。
えっと、虫なら六番目の堅さで大丈夫なんだね。
そこで真紀は同じ堅さの糸を出して、引っ張ってみた。
簡単には切れなかったが、なんとか切ることができた。
と、いうことは、アタシはカマキリより力があるってことだね。
やっと力の基準を知ることが出来たけど、大カマキリより強いってだけでは意味ないよね。
爬虫類や哺乳類がかかるまで、様子見かな。
そうだ、あれだけ虫がわさわさ居るのだから、虫を食べにくる奴を、狙えば良いのよね。
再び惨状の場に戻ると。
八番目以上の堅さの罠を、同じように周囲に仕掛けた。
「次は、肉がある動物がかかりますように」
真紀は手を合わせてから、その場を後にした。
自身の都合で始めたことが、大事になるとも知らずに。
そして翌日、日課を済ませた真紀は、再び罠を仕掛けた場を訪れて驚いて岩影に身を潜めた。
本当の意味で惨状の場になっていたからである。
あちこちに散乱する、虫や、トカゲ、ネズミの死骸。
ネズミ、トカゲ、キツネ、タヌキ、大トカゲ、多種多様な生き物同士が入り交じってバトルをしていた。
食料が大量にあるからなのか、ある程度以上の大きさの生き物同士の戦いはしていなかった。
体液や血の匂いに引かれて、次々と小型の生き物が表れ、大型の生き物が補食し。
大型の生き物も、お腹一杯になった物から森の奥に引き返しているが、逆に新たに表れる物もいる。
ここは、一大狩り場と化していた。
六番目、七番目は、引きちぎれていたが、八番目以降は、グシャグシャになってはいたが残っていた。
そこまで見て、アタシも狙われたら大変と、慌てて洞窟に逃げ帰った。
しばらく、あの周辺には近付かない方が身のためだね。
惨状を引き起こした原因としては、身の置き場もない真紀である。
あんな事になるだなんて。
自分のためとは言え、大規模な実験は、二度とやらないと誓っていた。
でも、これでわかったことがあるよね。
あんなに一杯、生き物がいたけど、ベタベタ糸に捕らわれて居なかったって事は、くっついてもはがせるって事。
だから、蜘蛛の巣を張っても、虫しか捕まえられないって事だね。
あと、八番目以上の堅さなら、中型の生き物に引きちぎられる可能性は低いって事だよね。
そんな事を考えていたら、大きな振動を感じた。
振動感知能力とは関係なく、誰にでも感じられるような振動だ。
不審に思って、思わず外にでてしまった。
はたして、そこにいた生き物は……




