罠には注意しましょ
朝の日課を済ませた真紀は、昨日とはまるで違う身体の調子に驚いていた。
昨日までは、岩山から降りきった時に、すぐ座り込んでいたのに、今日になったら、余裕はまだないが、立っていられたのである。
真紀は、荒い息をしながら、
やっぱりタンパク質って重要なのね。
しっかり食べて、筋力アップだ。
息を整えた後は、罠を仕掛けに行こう。
そう考えていた。
バッタにもカマキリにも切られなかったが、哺乳類や爬虫類にも、糸は切られずに耐えられるか実験も兼ねている。
丈夫な糸は、いくら力を込めても、真紀では切ることが出来なかったのは実験済みだ。
早速、強度を変えたネバネバ糸を、木と木の間に、あや取りで作れるハシゴの用な形に、十ヵ所設置した。
設置中の細かい描写は、伏せておこう。
ただ単に、木と木の間を行ったり来たり、おしりを振りながらウロウロしていただけだ。
本人は真面目だから、真剣に取り組んでいたけど、はた目から見ると、あやしいおどりを踊っているようにしか見えない。
知ったらきっと恥ずかしがるに違いない。
糸の強度を変えたのは、きちんと訳があるのよ。
強い糸は、やっぱり太くなるから目立つのよね。
何回か試して、罠用にちょうど良さそうなのを選ぶのよ。
何か、捕れればいいな。
真紀は、罠を仕掛けた後に、武器の改造に取り掛かっていた。
コボルトを撃退した、あの竹ホウキの先だけに見える、丈夫な糸の束だ。
あの時は、乱入してきたバッタに気をとられてしまい、コボルトの接近を許してしまった。
気がついた時には、もう目の前、慌てて突き出したら偶然にも、タイミングよく鼻面を突き刺すことが出来たけど。
アタシには、あそこまで近寄られたら、冷静に対処するなんて絶対できない。
と、言うことで、リーチを伸ばそうと考えた。
材料は、さっき罠を仕掛けに行ったときに、一メートルくらいの、枝を拾ってきたのよ。
早速、包帯包丁を使って、ゴボウの皮むきをする要領で表皮をはがす。
以前、摩擦で火を起こそうとしたとき、ささくれで、手を怪我したことがあるからね。
綺麗にむき終えたところで、軽く振ってみる。
いい感じだ。
調子に乗って思い切り振り回していた時に、石を叩いてしまった。
あっ、と思う間もなく、せっかく綺麗にむいた枝は、根元から折れてしまった。
どうやら、見つけた枝では強度が足りないみたいだ。
また森に入り、枝を見つける度に、地面を叩いたり、木を叩いたりして、強度を確認、やっと折れない枝を見つけることが出来た。
洞窟に持ち帰り、皮をむいた綺麗にむき終えたところで、ベタベタ糸を接着剤代わりにして、滑り止めにと、包帯を巻いた。
先から手前まで巻いて、手前から先にクロスする形でしっかり巻いた。
この巻き方は、アルミホイルとかラップ、トイレットペーパーの芯と同じ構造なのよ。
これで多少は強度が増したかな?
包帯巻き棒の先に、糸の束を取り付けた。
こうして、糸の束が棒の横にあるから不恰好であるが、槍っぽい武器が完成した。
でも、先ほどまでは、竹ホウキの先だけだから、手ホウキだったが、棒がついたため、今度は長柄ホウキにしか見えない。
やっぱり、落ち葉かきに重宝しそうだ。
罠に、何か掛かっていたら、この新武器の効果を試してみよう。
新しい武器を片手に、意気揚々と洞窟を出た。
罠を仕掛けた場所にたどり着き、罠の様子を伺う。
はたして、罠には大量の獲物が掛かっていた。
そう、大量の虫が……
真紀は、その光景を見て、その場に崩れ落ちた。




