生死の境
振動感知の特訓も日課に入れてから、数日が過ぎたころ、
いきなりだが、真紀は生死の境目にいた。
それは、岩登りの日課を済ませたあと、振動感知の特訓を兼ねて、森の中を探索しているときに起きた。
これまでも、定期的に地面に手をつけて、振動を感知し、小型生物くらいの反応だったら、
どんな生物なのか、遠目に見ると言うことを繰り返してきた。
真紀の生活範囲では、大きいバッタや、大ネズミ、キツネの他に、普通サイズのトカゲ、カエル、ヘビ、ウサギ、(普通サイズ)ネズミ等が居て、
それぞれを感知出来るようになった。
鳥類も、小型のものから大型のものまで居るのだが、空を飛ばれると、何かが飛んでいるとしか感知出来なかった。
それだけでも、十分だと考えられるけどね。
今回は、小川沿いに行けるだけ下ってみようと思い。
いつものように振動感知をしていた。
真紀の生活範囲とあまり変わらない反応にも飽きてきたこともあるが。
かなり遠くまできてしまたので、そろそろ引き返そうと考え始めたときに。
キツネ程のサイズの知らない振動に気が付いた。
キツネサイズになると、肉食であるなら真紀も襲われる可能性があったので、今までは避けていたのだが。
せっかく遠くまで来たのに、収穫がないのも残念だし、
今まで一度も対象の生き物に気づかれることもなく、観察することが出来たため。
好奇心に負けて、見に行ってしまった。
真紀は慎重に風下に移動し、相手との距離を徐々につめて、
十メートルまで近づくことが出来た時に、姿を確認できた。
そこにいたのは、緑の体表をもち、二足歩行をする不思議な生物。
身長は真紀の胸の高さくらいで、左手にウサギを持ち、右手にこん棒をもっている。
どうやらウサギ狩りに成功したばかりのようだ。
あんな妙な生き物を、実際見たことないのに、真紀は知っていた。
そう、ゴブリンだ。
ファンタジー生物の代表格である。
真紀は、想定外の生物を見て、近くの草むらに身を潜めたが、その時に、音をたててしまった。
その音が聞こえたのか、ゴブリンは、周囲を警戒しはじめた。
身を潜めた真紀であったが、潜めたことにより、更に焦ってしまった。
目の前の武器を持つゴブリンも脅威だが、
草むらに寝そべって隠れたことにより、感知範囲が広がり、より大きい生物の接近の振動に気が付いたからだ。
大きい生物は、木を避けるようにジグザグに、移動しているが、明らかに、目の前のゴブリンを目指している。
もしかしたら、血だらけのウサギかもしれないが。
このまま、じっとしていると、大きい生物は、真紀の五メートル横を通過する見込みだ。
今動いたら、大きい生物に見つかる。
そう考えた真紀は、息を潜めた。
周囲を警戒していたゴブリンは、何もいないと考えたのか、ウサギにかじりついていた。
その時、大きい生き物が姿を表した。
その生き物は、ブタのような鼻と大きなキバを持つイノシシであった、
でも普通のイノシシではない。
ゴブリンと同じく二足歩行し、右手に大きなこん棒を持っていた。
そう、オークである。
これまた、ファンタジー生物の代表格である。
身の丈、二メートル。
その体躯から振るわれる、こん棒の一撃は、岩をも砕きそうだ。
ゴブリンは、ウサギに夢中で背後から迫るオークに気がつかない。
オークは軽く、こん棒をふった。
それだけで、ゴブリンは生物ではなくなった。
オークは、食べかけのウサギを拾い、口に放り込む。
その後、ゴブリンを引き裂きながら、次々に口に放り込む。
真紀は息を潜め続けた、骨を砕く音がするたびに、恐怖で頭をあげたくなったが、
なんとか抑え込んで、振動が遠ざかるのを待ち続けた。
その場からオークが立ち去り、振動感知範囲からも離れた時。
やっと真紀は、草むらから立ち上がった。
ゴブリンが居た所には、こん棒が落ちているだけである。
あたしも、一つ対処を誤れば、あのように食べられてしまったに違いない。
生と死の境界は、わずかしか無いと、いうことに戦慄しつつ、生き残れた事に喜びを感じていた。




