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岩山を登ろう

翌朝、空腹により目が覚めた真紀は、りんごのような果実をかじっていた。


二個とも食べたが、まだ足りない。



続けて、オレンジのような果実も食べた。


このオレンジは、すっぱい。

甘味は十分にあるのだが、とにかくすっぱい。


その、すっぱさに口を曲げながら、こちらも二個とも食べた。


元の世界の真紀であったら、朝食はリンゴ一個で十分のはずであったから、自分の食欲に驚いていた。



まだ物足りないが、手持ちの食べ物は、食べきってしまったので、

昨夜の事は、置いといて、

まずは、食べ物採取に出掛けることにした。




道しるべの糸をたよりに到着。

樹を登り、リンゴみたいな物をもぎ取り、そのままかじりついたが、まだ足りずに、

更に追加で二個食べてやっと満足した。




少し多目に持ち帰ろうと思った真紀は、樹の枝に腰かけて、

先日作った、網を作り始めた。



リンゴは大きいので、網の目は粗くても平気だから、すぐに出来た。


出来あがった網に、リンゴを五個、すっぱいオレンジを三個入れて洞窟に戻り、張りぼての天井に、ベタベタ糸でぶら下げておいた。


ついでに、小石を付けたベタベタ糸を、網の回りに何本か配置して虫にたかられないようにした。



これで、まだ見かけていないが、きっと居るであろう、アリや、ハエなどから果実を守れそうだ。



そこまでし終えて、ようやく、昨夜の事を振り返った。


おしりから火が出たよね?


火を出せた理由は、艶やかな黒い石ころのおかげだよね。


火が出せるようになった直後に、砂になったし。

なんだか、良くある設定っぽいしね。



『力を使い果たしたクリスタルは粉々に砕け散った』って感じ。




でも、おしりからでた理由がわからない。


こんなとき、普通は指先から火が出ると思うけど。


タマタマなのかな?



そう言えば、昨夜は両手は石ころを握り締めていたから?

指先から出せなくて、おしりから出たってことかな?



それならばと、指先から火が出ろと、強く念じる。


が、指先から火の出る気配はない。


もしかして、一回限りの能力だったのかしらと思い始めたとき、

おしりが熱く感じた。



まさかと思い、おしりを見ると、やっぱり火が出ていた。



すぐに火を出すのを止める。



止めた瞬間、軽い疲労を感じたが、昨夜ほどではない。


どうやら火も、おしりからしか出ないようだ。



別の意味で、疲労感に襲われつつ、

真紀は、黒い石ころの事について考え始めた。



どうやら強く念じると、能力を与えてくれる。

エンチャットストーンのようだ。


そうなると、気を使えるようになったのも、この黒い石ころのおかげかも。



あと八個もあると言うか、八個しかないと言うか迷うけど、ともかく大事に使わないといけないね。



蜘蛛君の話を思い出せば、洞窟の奥のどこかにある縦穴を昇れば、あの場所に戻れると思うけど。


軽く天井を見渡しただけでも穴だらけなんだよね。


あの場所に行ける穴以外は、深くないのかもしれないけど、一つ一つ調べるのも、たいへんだ。



そうだ、上からなら見つけられるかもしれない。



さっそく、洞窟を出て岩山を登り始めた。


蜘蛛の能力を発揮し、スルスルと昇っていたが、

だんだんペースが落ちてきた。


真紀の体力があまり無いことも原因の一つであるが、

ある高さを境に、これ以上登ってはいけないと、

唐突に畏怖を感じるようになったのである。


何度か横に移動し、登ろうとするたびに、感じる畏怖。




登ってきた高さは二百メートル程、まだ頂上は見えない。


初めて異世界だと気がついた岩山から見下ろした時は、五十メートル程と感じたのは、暗かったせいで、目測を誤ったのかな。



これ以上、昇る事は諦め、周囲を見渡した。




岩山の裏側は見に行っていないので、想像でしかないが、この周辺は平野のようだ。



規模はわからないが、どこまでも続く森。



その中を大きな川がいくつか横切っている。


日の沈む方向は、何も見えないが、その他の周囲は、霞んでいて遠くに山が連なって見える。


コの字に囲まれた中に、この岩山があるみたい。




ここを離れる時は、まず大きな川に向かって行き、それから川沿いに、流れに沿って下ればいいよね。


地球でもそうだったけど、文明って大きな川沿いに発展するものだしね。



進むべき、指針を得られた真紀は、岩山を下り始めた。




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