火をつけよう
洞窟に着いた真紀は、そこいらに落ちている石を組み上げ、かまどをつくり、
良く乾いている落ち葉を敷き詰めた。
小枝から、大きい枝までを、かたわらにおいて準備万端。
さぁ火をつけようとして、ようやく気がついた。
マッチもライターも無いことに。
えっと、昔の人達は、火木と木を擦り合わせて、摩擦で火をつけたのだっけ。
真っ直ぐに近い小枝と、平らっぽい所がある倒木を組み合わせて、擦り始めたが、
火のつく気配はない。
その後も、擦っていたが、いい加減、手が痛くなってきた。
それでも、擦ったが手の皮が剥けてしまった所で、
今回は、摩擦で火をつけることを断念した。
手を見ると小枝の皮のささくれで、ボロボロになっていたので、
小川の水で、汚れた手を洗いつつ冷やした。
その後、おしりから包帯を出して巻いておいた。
他の方法は、火打ち石?
あれって、火花が出るような石が必要なんだよね。
そんな石、都合良くあるわけないし。
石って言えばと、艶やかな黒い石ころを思い出した。
取り出して見ると、一個足りない。
おかしいなと思いつつも、蜘蛛君の説明を思い出した。
それは、艶やかな黒い岩肌が白く光ったと感じたら、アタシの身体が出来たってこと。
もしかしてと思い。
石ころを握り締め、ライターから火が出る姿をイメージしながら。
火、出ろ!と念じた。
その時、背後が明るくなり、おしりが熱くなった。
振り向いても、明かりは背後にある。
まさかと思い。
背後ではなく、おしりを見ると、ライター程の、火が出ていた。
そう、火はおしりから出ていたのである。
そして、ガスが切れたように、火は消えた。
石ころは、すでに砂になっていて手からこぼれ落ちていた。
何が起きたか理解はしているが、納得いかない。
「なんで、おしりから火が出るの!」
そう叫んだ瞬間、疲労感が襲いかかってきた。
余計な事は、何も考えられないくらいに強い疲労感だった。
フラフラする身体を叱責しながら、なんとか繭玉に潜り込むと、安心した表情で目を閉じた。




