表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い月  作者: にゃろめ
5/22

Touches

風にさらさらとなびく黒い猫の毛。

触るとふんわりしていて私はそれに嫉妬していた。

まるで本当の猫の毛をなでるような感覚で。

本当に羨ましくてしょうがなかったの。

今はもう、触れることさえできないけれど。


小さい頃から、癖のあるこの髪が嫌いだった。

天然のウェーブで曲がる私の髪の毛。

ずっとストレートヘアーに憧れて、大人になったら絶対にストレートにするのだと躍起なっていた頃もあったほどだ。

私が部屋でテレビを見ていると後ろのドアが開いた音がした。

そのとたんにふんわりとしたシャンプーの香りが部屋に立ち込めるのがわかる。


「リア、髪。」


私は小さくため息をついて後ろを振り返った。

上半身裸で肩にタオルをかけて立っている大きな大きな猫。

いつものことだから驚かなくなったけれど、初めの頃はすごく照れくさかったのを思い出す。


「はい、ここに座って。」


私はソファに座ったまま自分の目の前に猫を座らせる。

彼の頭を上から見下ろすのはこのときぐらいしか機会がないのでなんだか新鮮だ。

そうして私は今日もこの猫の毛に手をかける。


「本当、シキの髪の毛って猫の毛みたい。ふわふわしてる。」


一束ずつ、丁寧にドライヤーをかけてあげる。

手にすんなりと落ち着くこの黒い髪の毛を私は休むことなくなでていく。

横から顔を除かせると気持ちよさそうに目を閉じる彼の顔があった。


「俺はリアの髪のほうが好きだけど。」


ゆっくりと後ろに手を伸ばして私の長い髪に触れる彼の手。

大きな手でなでられる心地よさ。

彼もこんな風に感じてくれていれば言いと思いながら優しく風を当て続けた。

そういえば、この髪が嫌いじゃなくなったのはいつの頃からだっただろう。

ずっと夢見ていたストレートヘア、いつのまにかその夢は泡のように消え去っていた。

私は、ドライヤーのかけ終わったふんわりとした彼の髪をなでながら、片方の手で自分の髪の毛に触れた。

あぁ、そうだ。この黒猫に出逢ってからか。

私は小さく微笑んだ。


I want to touch gently to your hair.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ