Cowardice (シキside)
本当は今すぐ会いたい。
会って、抱きしめて、キスをして。
この腕に閉じ込めてもう離さないと誓うのに。
それができないのは俺が情けない臆病者だから。
貴女の幸せを奪ってまで、貴女を攫う勇気が無いから。
だからせめて、貴女は幸せで。
俺のために、俺を忘れて。
貴女の隣は俺の特等席だった。
遠くに見える、見覚えのある後ろ姿。
それは見間違えるはずも無い、俺が愛して止まない女性の。
そしてその傍らに立つ、黒いコートの大きな背中。
俺は自分の目が信じられず、走って彼らの背中を追いかけた。
見間違いだったと、確認したくて。
弾む息が白く煙となって吐き出され、自分の足が一歩ずつ近づくにつれて、喉の奥に痛みを感じるのがわかる。
リア。
あと少し、俺は小さく左手を伸ばした。
「清雅。」
耳に聞こえた、心地よい声。
愛しくて、愛しくてしょうがなかった、彼女の声。
その声に、繰り返し出されていた足の動きが止められた。
セイガと呼ばれた男は横を歩く彼女に優しく微笑んで、そっと彼女の右手をとった。
その瞬間、俺の中でなにかが崩れ落ちたような気がした。
貴女の右手は俺の、俺だけのものだった。
懐かしい横顔からわかる、彼女の嬉しそうな、暖かい笑顔。
俺はただその場に立ち尽くすことしかできなかった。
また、あの時のように。
だんだん小さくなっていく二人の姿を、俺は静かに見送った。
いかにも幸せそうな恋人同士の後ろ姿に、俺は嗚咽をこらえることができなかった。
きっと周りではすれ違う人が、俺を不思議そうに横目で眺めているのだろう。
俺は、馬鹿だ。
本当に子供で、何一つわかってはいなかった。
二人でいれば、どんなことでも乗り越えられるのだと、本気で思っていた。
俺は本当に、なにも知らない子供だった。
リア。
どんなに遠く離れていても、貴女が愛する人と結ばれようとも。
俺は一生リアを、貴女だけを愛してる。
I dedicate love of a lifetime to you.




