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青い月  作者: にゃろめ
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初めて貴方の手を取ったとき。

私はその手の大きさに少しだけ驚いてしまったの。

骨ばっているけれども長てくてしなやかな指。

私の手を、頬を優しく包み込む大きな手のひら。

私の手が何だか子供の手のように見えた。


「シキってさ、左利きだったんだね。」


ノートに並ぶ達筆でバランスの良い文字たち。

机に向かう大きな猫みたいな彼の肩越しにノートを除いたとき、ふと気がついた。


「いゃ、書くときだけ左なんだ。他は全部右だよ。例えば箸とか。」


そうなんだ、小さくつぶやいた私の声は普通だっただろうか。

新しく知った彼の一部に嬉しさが隠せない。

私はこんな些細なことで幸せになれるのか。


緑だった木々は季節を変え、鮮やかな赤から冬色に染まるころ。

息を吐き出せば呼吸が煙となって形を現すようになった。

私は口元に手を当て、手の隙間から零れる白を目で追った。

薄暗い帰り道、真っ白のコートを着た私と隣に並ぶ大きな黒猫。

少しだけ大人ぶろうとして履いたヒールのブーツが私の歩行の妨害をしていた。

私より数歩先を行く大きな背中。

なんだか寂しさを覚えた。


「リア。」


うつむいて歩いていると目の前に大きな手が現れた。

見覚えのある、愛しいそれ。

私は無言でその手をとった。

 繋いだ右手から伝わる体温、体中が沸騰しているかのようだ。


「こっちの手はリアを引くための手だから。」


なんの前置きも無く唐突に聞こえた声。

私は思わず隣を見上げた。

まっすぐ前を見ているその横顔を呆然と眺めた後、繋がれたままの手を盗み見る。


“書くときだけ左なんだ。”


ふと思い出したその言葉。

なんとも彼らしい表現に、私の目が一瞬細められたのをこの人は知らない。


The tying hand is not separated.


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