Shadow
初めて出逢った時。
なんだかその後姿に、彼を見た。
実際はまったく彼とは違うのに。
違うのだとわかっていても、ふと目の前をちらつく影に。
私は今でも心奪われる。
「はじめまして、片桐清雅です。」
そう手を差し出してきた彼は、なんだか雰囲気がシキに似ていた。
「芹澤さんって俺より二つ年、下なんだ。」
そう言って笑う彼は、タイヨウみたいに眩しくて。
シキとは違う、とそう思った。
「まだ、帰るなよ。」
ふいに掴まれた右手に、一瞬シキのことを思い出した。
「好きだ。」
彼の腕の中に収められて、シキとは違う香りに自然と涙が零れ落ちた。
彼の後ろにちらつく私の思い出。
もうあの腕に包まれることは無いのに、もうあの声を聞くことは無いかもしれないのに、それでも付きまとう影。
「リア、さん?」「見つけた。」
彼と目を合わせた瞬間、私は捕らわれたように動けなくなった。
「大学生、か。」
そうつぶやいた彼は、自身が着ていたブレザーを突然脱いで、私の手をとった。
「離したくない。」
後ろから大きな腕に包まれて、耳元で低く落ち着いた声が聞こえた。
「アイシテル。」
彼は必ずそう言ってから軽く口付ける。
やさしく触れる唇、その瞬間が好きだった。
どんなときも、何をしていても、思い出すのは愛しい彼の姿。
目の前にいるのは彼とは違う人なのに。
ふとした瞬間に重なる彼の姿に、私はどうしていいのか、わからない。
彼の姿を見たい。彼に触れたい。彼の声が聞きたい。
シキに会いたい。
「リア?」
ふと見ると目の前を歩いていた清雅が後ろを心配そうに振り返っている。
私は小さな声でなんでもない、と言って彼に笑いかけた。
シキとは違う後姿。
私は黙ってその背中を見ながら、歩き続けた。
Though you and he are different people.




