Liar
本当は最初からわかっていた。
こんな関係続くわけ無いって。
でもね、夢を見ていたかったの。
あなたのそばで。
甘くて切ない、あなたの夢を。
「別れよう。私たち。」
薄暗い静寂の中に包まれた公園に、無機質な私の声が響き渡る。
街灯の電気が小さく音を立てているのがわかった。
「理由は?」
無表情で私を見つめる彼は、いつもの大きな猫ではなかった。
私の目に映るのは一人の男。
私は小さく震える右手をそっと左手で包み込んだ。
「嫌いになったの。シキのこと。もう、好きじゃない。」
途中で飲み込んだ息に、私はひどくあせった。
ここで失敗するわけにはいかない。ここで、気づかれるわけにはいかない。
「嘘だよ。ちゃんと俺の目、見て言えよ。」
彼の左手が私の腕をつかんだ。
ふと鼻を掠める彼の香りに、いっきに胸が締め付けられる。
私は落ち着かせるように瞳を閉じた。
大好きな背中。
大好きな香り。
大好きな左手。
シキ、私の大好きな名前。
「離して。」
渾身の力で彼を腕から引き離す。
最初で最後の覚悟。
私は泣きそうな彼の眼を捉えて終焉の言葉を紡ぐ。
「さようなら、シキ。」
私は早足で歩いた。
後ろから聞こえてくる、私の名を呼ぶ声に振り向くことさえせず。
ごめんね、シキ。上手なけじめのつけ方がわからなかったの。
だから、私を嫌いになって。私を恨んで。
思い出は私がすべて背負って歩くから。
どうか、私を忘れないで。
私は今日、人生最大の嘘をつく。
It is the beginning and the last lie.




