Transient
幸せで、暖かくて、そして切ない夢を見た。
こんな私にはもったいないくらい甘い夢。
この夢がずっと続けばいい、そう思う私は欲張りなのかな?
静けさに抱かれながら、私は今でも夢を見る。
あなたの隣で微笑む私の姿を。
薄暗い空、私は曇った窓の内側に指で名前を書いた。
”セリザワ リア“
自分の名前が透明なガラスの上にポツリと浮かび上がる。
私は冷たい指先を暖めるように口元へ持っていった。
「俺のは?」
私の頭に軽く手を乗せた大きな猫は、上機嫌といった様子で窓に映る私の名前を指差した。
“レンドウ シキ”
私の名前の隣に浮かぶ、大好きな名前。
振り向いて笑いかけると、彼も嬉しそうに微笑み名前の周りをなぞり始めた。
真ん中に線を引き、その上に三角とハートの図を書き足す。
「こうゆうの好きだろ?」
出来上がった相合傘に、私は小さく笑った。
「あっ雪?」
ふと窓の外に目をやるとうっすらと舞い落ちる白い影。
私は急いで窓を開けた。
その瞬間に暖かい部屋に流れ込む冷たい冷気に、私は小さく身を震わせる。
「初雪か、冬だな。」
後ろから私の体を包み込むようにして抱きしめた彼は、そう言っておもむろに右手を窓の外へと突き出した。
「ほら、リア。」
私も誘われるがままに冷たい外気へと手を伸ばす。
手のひらに静かに舞い降りた綺麗な雪。
綺麗だけれど触れてはすぐに消えて水になる。
「雪ってさ、儚いよね。」
私はおなかの辺りにある彼の手をぎゅっと握り締めた。
彼の手は冷気に触れて、氷のように冷たく冷え切っていた。
「儚いからこそ綺麗なんだよ。雪は。」
私に答えるかのように手を握り返した彼。
私はそっと先ほど窓に書いた二人の名前を盗み見た。
形無く崩れたカサが、そこにはあった。
儚いからこそ美しい。
彼の腕に抱かれながら、私はそっと目を閉じた。
It is beautifully because of transient.




