Tears
あれからどのくらいの時間がたったのかな?
私は今でもあなたを思い出しては涙を流すの。
きっとあなたは笑うわね。
あの頃みたいに、目を細めて。
私の涙はあなたのせいなのに。
それは本当に偶然だった。私はソファに座って宙をぼぅっと見つめている。
私はそのまま氷が溶けておいしくなくなったオレンジジュースをいっきにのどに流し込んだ。
まさかこんなに取り乱してしまうなんて思ってもいなかった。
力の入らなくなった手からお気に入りのグラスが床に滑り落ちた。
鈍く音がなったと同時に、何かのはじけるような感覚が私の中に溢れてくる。
「…なにやってんの。」
ゆっくりと声のするほうへ視線を向けると、そこには見慣れた大きな猫。
いつもなら甘く色づく見慣れた姿は、今日は私の感情を高ぶらせるものにしか過ぎなかった。
「なんで、泣いてんの?」
ふと頬に手を当てると暖かい水が私の指を濡らした。
あぁ、私、泣いていたの?
「知らない。」
彼はそっと私の足元に散らばった透明な欠片を拾い集め始めた。
私は金縛りでもあったかのようにその場から動くことができなくて、綺麗になっていく床をじっと見つめていた。
「俺のせい?」
私を見上げる彼の瞳は射抜くようにまっすぐで、目をそらすことができない。
部屋の中に広がる静寂に私は小さく息を呑んだ。
「しらない。」
あの女の子のことなんて。
やっとのことで目をそらしてそうつぶやくと、彼はくすくすと声をもらして笑い始めた。私はわけがわからず、眉を顰めて彼の奇行を見つめていた。
「俺のための涙か。」
ちょっと優越感、小さくつぶやいた彼の顔は本当にうれしそうに歪められていて、ゆっくり頬に伸びてきた冷たい指先に私は一瞬身を強張らせた。
「泣くのは俺の前だけにして。」
真剣な表情、私は小さくうなずいた。
そして静かに重ねられた唇に、私は先ほどまでの熱がだんだん引いていくのがわかった。
だから私は嫌いなの。
あなたの瞳に捕らわれた私は、弱くなってしまうから。
涙なんて、弱いところは見せたくなかったのに。
私の涙の理由はいつもあなた。
私は、彼のぬくもりを感じながらゆっくりと大きな背中に腕を回した。
My tears are proofs to love you.




