Temperature
初めてあなたと肌を重ね合わせたとき。
私はあなたに気づかれないように涙を流した。
それは嬉しさからだったのか、それとも。
わかっていながら罪を重ねる私を、誰が許してくれるというのだろう。
でも、そのときの私にはどうしても守りたい居場所があった。
どうしても譲れない温もりがあった。
薄暗い部屋の中に静かに聴こえる規則正しい呼吸音。
私はしばらくカーテンの隙間から零れた光できらきらと舞うほこりを見ていた。
ふと視界を下げれば、ベット脇に散らばった下着。
最近ではいつものことですっかり慣れてしまったが、少し前まではその存在が非常に羞恥を煽っていたことを思い出すと少しだけ笑みがこぼれる。
私は後ろから回されている重い腕をそっとよせて身を起こした。
体中がぎしぎしとしなるような感覚に少しだけ目を細める。
「シキ、起きて。」
隣で穏やかな寝息を立てている大きな猫に私は耳元で優しくささやく。
自分でも信じられないくらい甘い私の声。
どうしてこの人にだけはこんな声が出せるのだろう。
「シキ。」
何度目かの私の声に小さく「んっ」と返事をした猫はまだ夢と現実の境をさまよっているらしい。
ゆっくりとベットから体を逃がし、床に足をつけた。
小さく音を立ててしなる床、そして一瞬にして私の足を纏うひんやりとした空気。
もう何度目だろう、この感覚を味わうのは。
そして体を労わるようにゆっくりと立ち上がる。するとその瞬間後ろから右腕をつかまれ少しだけ体制を崩す。
こんなイタズラ、するのはウチの大きな猫くらいだ。
「リア。」
後ろに戻されながら互いの唇を重ねる。
もう、言葉はいらなかった。
そこにある暖かさを求めて、彼を求めて、私は必死に彼の背中へと腕を回した。
時間が止まってしまえばいい。
このとき私は世界中の誰よりも幸せで、可愛い女になれた。
I want to be held in your arm through all eternity.




