Rainbow
雨の日は好きだった。
二人で歩くあの道、二人で収まるあの小さな空間が好きだった。
ほんとはね、今でも雨の日が好きなの。
雨が降るとね、虹が架かるから。
あの頃に戻れるような気がして。
私は今でもあなたの姿をさがしてしまうの。
例えば雨の降る頃に。
「あっ、雨?」
先ほどまで太陽を見せていた空。最近の天気予報ははずればかりだ。
私は駅の入り口から小さく空を仰いだ。
曇った空の隙間から綺麗な青空が見える。
きっと、夕立ね。
小さくそうつぶやいて、私は足元に溜まった小さな水溜りを見つめた。
「リア。」
どのくらいの時間がたったのだろう。
ふと顔を上げるとカサを差した愛しい猫の姿がそこにはあった。
そのとき私は本当に驚いた。まさかここにいるなんて思わなかったから。
「シキ、なんで?」
私がそうつぶやくと、彼は目を細めて私に左手を差し出した。
「デートのお誘い。」
依然として振り続ける雨。私の隣には大きな黒猫。
小さなカサの中に二人、窮屈そうに納まった。
私も彼も、肩の辺りが少しだけ濡れてしまっていたが、そんなのまったく気にも止まらなかった。
「迎えに来てくれてありがとう。ここまで遠かったでしょ。」
足元の水溜りをよけながら私は一歩一歩足を踏み出す。
そのたびに靴の先から水が飛び上がる。
「そんなにかからなかった。学校から結構近いよ。」
横目で彼をそっと盗み見る。
その見慣れた横顔に、私はそうかな、とつぶやいた。
「雨、止んだな。」
しばらく静寂に包まれていた二人の間に、彼の低い声が割って入った。
静かにはずされたカサから冷たい水が私の頬へと一滴落ちた。
空を見上げると先ほどの黒い雲は流れ、夕焼け色に染まった空が姿を現している。
そのあまりにもまぶしい茜色に私は小さく目を細めた。
虹、見えるかな?
そっとつぶやいた私は隣に立つ大きな猫を見上げた。
いつもは黒いはずの彼の髪が夕日で赤く染まっていた。
「きっと、見えるよ。」
そう優しく微笑む彼に、私はそっと手を伸ばす。
私たちの間に虹が架かればいい、鮮やかで綺麗な虹が。
The rainbow only has to be laid in you and me.




