家に帰ると異世界なんだが!?
「久しぶりに帰ってきた〜。まぁ3日くらいだけどw」と軽口を叩きながら長旅の影響によって多少の疲労を感じる体でマイホームの扉に手をかけたところでその腕が吹き飛ぶような勢いで扉が空いた。
「いらっしゃい! 今日は何にする? エールか、それとも飯か!」
飛び出してきたのは母親、なのか??いや、まてまて、そんなはずない。こんな口調で話さないしこんなに男勝りな性格では無いはずだ…そう思ったが顔を見るとやっぱり母親である。だが雰囲気が違いすぎてまだ確証が持てず、さらに自分にとっての母親要素を探したが顔以外の面影がない。服装もいつものエプロン姿ではなくファンタジー作品に出てくる酒場の店主みたいな服装をしていた。まるでアニメみたいだな…なんて今そんな考えをしている場合じゃない!!そんなことを考えていたせいでその人が母親であるかも判断できないまま今起こってる状況に理解が何もかもが追いつかず数秒間沈黙が続いた。その間も笑顔を絶やさず母親らしきひとはRPGのNPCみたいにこっちの次のアクションを待っているようだった、早く何か言わなければ。
「ご、ご飯ががいいかな…」
状況整理もままならず終始圧倒されていた俺は自慢の元気な声も出ず、かろうじて出た声も蚊の鳴くようなものだった。普通に質問に答える形になってしまったが「ただいま」、「おかえり」の挨拶すら出来ていなくて良かったのだろうか?そんな心配をしていたがその心配を遮るように母親らしき人が
「とりあえず入りな!いい肉が入ったんだ!最高のものを作ってやるよ!」
と言って家の中に招待してくれた、と言ってもマイホームなのだが。警戒しながら家に入ったところで家全体の異変に気がついた
「は?はぁぁぁぁああ!!!???」
驚きすぎて声が出た。おかしい、全てがおかしい。いつもの家のあかりは明るいLEDなのに何故かLEDはなく、カンテラが灯してあるし、床はいつものフローリングではなく木目のよく見える力強さすら感じる床だし、どこからともなくケルト音楽が聞こえてくるし、玄関が消滅している。靴を脱ぐスペースすらないのだ。奥では父親らしき人と姉らしき人がアニメや漫画でしか見ないような冒険者風の服装で大ジョッキのビールを飲んでいる。何をしているんだあの人たちは…しかも妹に限ってははなんか禍々しい魔王のコスプレ?をしている。俺の頭が疲れでイカれてしまったのか??夢だなきっと!と思い頬を抓るが痛い。現実なんだこれが…ならなんでこうなったんだ?俺がいない数日間で本当に何が起こってしまったのだろうか……
時は遡り2週間前
「あ゛〜疲れた。もう帰りてぇー」
いつものように学校に通ってはこのように文句を言っているやつが俺、斑目 慎太郎だ。別に成績がずば抜けている訳でもなく運動神経も大して良くない普通の男子大学生だ。
「おいおいw昨日も夜遅くまでアニメ見てたのかー?w」
この妙にウザイやつは俺の数少ない親友の蓮だ。毎日のようにこうヘラヘラしながら煽ってくるところに関しては多少癪に障るが、俺の良き理解者となってくれている良い奴だ。ちなみにとてつもないバカで高校を卒業出来るかすら微妙だ。
「夜更かししてると授業に集中出来ないぞ」
こいつも俺の親友である氷魚。成績優秀、運動神経抜群の自他ともに認める超優等生だが、俺達と趣味が合ってよく一緒にいる。こいつのお陰で蓮はギリギリ学校生活を送れていると言っても過言では無い。
「お前ら逆に昨日の話見てないのか!?マジで熱かったんだぞ!!」
「俺寝落ちしたから録画もできてねぇ!やばい!」
「私は録画してあるから今日帰ったら見るよ。」
こんな感じの話をしながらいつもこの3人をイツメンとして過ごしている。さっきの話にもあるように俺はアニメや漫画、ラノベが大好きで交友関係も比較的そこで決めている節がある。中でもファンタジーみたいな自分の生きてる世界では見られないような世界観が見れるものが好きで夜更かしして生命力を削ってでも楽しんでいる。
「そういえば来週修学旅行じゃん!準備進めとけよ慎太郎!結構やばいぞ」
「お前が言うな蓮!お前来る時間すら忘れてそうじゃん。」
「2人は修学旅行より勉強してた方がいいんじゃないか?w」
そうだった…蓮に言われたから咄嗟に煽り返したが修学旅行の準備を何も進めてない!早く進めておいてと親にも言われてるのに!!しかも持ち物とか予定リスト全部家に置いてきた!
「ちょっと野暮用だからとりま今日は最速で帰るわ〜!氷魚!俺は勉強しなくても卒業できるから安心しろ!!お前らじゃーな!」
のんびり帰ろうとして準備を進めてないことを煽られたくなかったので、2人を完全に置いてけぼりにして爆速で帰路に着いた俺は足早に家に向かった。
「ただいま〜」
「あら!今日は早いわね〜おかえり。」
家に帰るといつものようにエプロン姿の母が出迎えてくれる。私の母は本名 斑目 絵梨奈、企業務めだったが今は専業主婦に落ち着き、今では毎度の如く家事に追われている。容姿が良く、40代とは思えない美貌を持っている。魔性の女というやつだ。自慢ではないが、マイホームはめちゃくちゃ大きい家で管理するのにも一苦労なのだ。だからそれをひとりで全てこなす母にはいつも感謝している。
「今日は修学旅行の準備するから早く帰ってきたんだ!早くしないと間に合わない。」
「まだやってなかったの?やべーじゃんw」
あまり聞かれたくなかった人の耳にも入ってしまった。この人は俺の姉で本名は斑目 静香。大学卒業後マッハで一級建築士を取得し、今は在宅ワークをしているかなりのエリートだ。悔しいが容姿も母親譲りで良く、勝てる要素が見つからない。だから煽られても煽り返せないのが悔しい。
「今から間に合わせるからいいの!お父さんいる?」
「お父さんならちーちゃんの迎えに行ってるわよ〜」
父に車を運転して貰えるよう頼むつもりだったが今日は厳しそうだ。
「ただいまー」
「お兄ちゃんも帰ってきたんだ!ただいま!おかえり!」
「お父さんおかえり!ちーちゃんもおかえりぃ」
私の父は本名 斑目 圭一。誰もが知ってる大企業の社長をしていたが、突如として「家族との時間が欲しいし金はもう一生分稼いだ」と言ってついこの間会社ごと売却した。今までは忙しくてできなかったが今はは少しずつ母の手伝いをするようになって母親の負担も減って来ている。めちゃくちゃいいオヤジだ。そして!俺がいまちーちゃんと呼んだ子は妹の斑目 千優!とにかく可愛い本当に可愛い愛しの妹だ、多分この子のためだったら地球だって救えるだろう。まさにこの家の天使だ。しっかしナイスタイミングで父と妹が帰ってきた!今行けば買い物に間に合うかもしれない!
「お父さん!今から修学旅行の準備で買い物をしたいんだけどいい?」
「おし!善は急げだな!行こう!」
こういう時の父は話が早いし行動力もすごい、社長という立場で長年生きてきたからなのかは分からないが判断力が凄まじいのでいつも助かっている。
「じゃあその後にご飯にするわね!」
「ちーちゃんも手伝う〜!」
「早く帰ってきてねーお腹すいたんだから」
みんな家族仲良く多少の劣等感を感じる時もあるが幸せな日々をいつも過ごしている。うちの家族は誰にも止められない。家に帰りご飯を食べて修学旅行の準備もある程度終わらせたあとは家族とのんびり過ごしていた。
「最近はあんまりやることが無いなぁ」
仕事を辞めた父が言うと説得力がありすぎる。確かに父は仕事漬けで家族と関わる時間も取れないくらいだったから、今は時間が有り余ってても仕方がない。
「私もあんまりないわね〜」
母も父と家事を分担するようになってから空き時間が増えたようだ。こんな時時間を潰せるいいものはないだろうか……そうだ!アニメだ!いや、漫画でもいいしラノベでもいい!家族内にも布教できるいい機会じゃないか。思い切って提案してみると
「いい機会じゃないかwお父さんもお母さんもそういうのには触れてこなかったからいいかもしれないね。」
と案外あっさりと提案に乗ってくれた、家族では自分以外そういうものに興味を持ってないものだと思っていたので親友以外にも見てくれる人が身近にいるのはとても嬉しかった。
それから数日すぎて修学旅行当日
父も母もあれから自分の見ているアニメや漫画を貸したところかなりハマっている様子でそれに即発された姉も妹も見るようになりいつしか全員が楽しむようになっていた、これは自分としてもとても嬉しいし、こういったところで共通の話題が作れるのはありがたい。修学旅行から帰ったらまた色んな作品の話をしよう。
「行ってきます!」
「「「「行ってらっしゃい!」」」」
みんなに送られて行った修学旅行はどこも新鮮で高校生活最大のイベントと言われている理由が分かるとても楽しいイベントだった。お土産も買って思い出に浸りながら帰路に着いた。
そうして今……
「がっはっは!今日の冒険はどうだった!シンタローよ!」
「あんたまたその辺のスライムで苦戦してたんじゃないの〜?w」
「ガオー!!!魔王だぞー!!」
何だこのカオス空間は…あまりにいつもの家とは違う雰囲気に扉をまたいで世界が変わってしまったのではないかと思い。一瞬だけどこでも〇アが浮かんだ。それにしても、なんて完成度なんだろうか、しかもなんでこの数日間でここまでの変化を可能にしたんだろうか、思考が完結しない。いや、可能性はある、父が金にものを言わせ、この部屋のデザインは姉が設計したんだろう。あまりにも完成度が高すぎて驚きや呆れよりも先に自分の見れないと思っていた世界が目の前にあることに興奮が隠せない。満更でもないのだ。
「ここは、いい場所だな」
「あたりめぇよ!ほら!特性ステーキだ!これ食べて精をつけな!」
思わず自分もこの世界の中に入り込んでいた。ステーキも美味しいし。ちーちゃんはかわいいし、こういったのも悪くはないのかもしれない。ご飯を食べ、風呂に入り、自分の部屋に戻った。部屋も変わっている。え?なんでだ!?ここまでするのか!?自分の見慣れたベッドは冒険者の泊まる宿屋にありがちなデザインのものになっており、置いてあった漫画本も魔術書のようなブックカバーに包まれその雰囲気を変えていた。1部空間だけでなく、全てが変わっているとは…恐れ入った。だが楽しい!家に帰るのがさらに楽しみになった。
翌朝、リビングも全て昨日のままだった。あの可愛い魔王様は冒険者父に連れられ小学校に行き姉は仕事を、母は酒場のマスターとして朝ごはんを振舞ってくれた。
「行ってきます!」
「おう!いってきな!」
こういって見送られるのは少々照れくさくもあるが、家族も全力で楽しんでくれていたので俺も全力で楽しませてもらうとしよう。このことを学校で親友2人に話したら驚愕されたというか、信じて貰えなかった。
「お前俺よりバカになったんじゃね?wそんなことないだろw」
「私がそんな嘘信じるわけないだろ。」
こいつら…とは思ったが俺もこの2人から言われたとしても信じられないだろう。ならば百聞は一見にしかず!
「今日うち来いお前ら!俺が嘘ついてないって証明してやる!」
こうして俺は2人を家に連れてきた。だが、今日も俺は腰を抜かすほどびっくりすることとなる。
「よくいらっしゃいましたね慎太郎公爵にご友人方」
「「「え?」」」
あれ?昨日と違う?今日も何か変わったのか?しかも珍しく出迎えてくれたのは父だし、何より紳士チックな服装に呆気にとられる。
「今日はあなた方の歓迎パーティです。心ゆくまでお楽しみください」
入ると家族全員貴族の格好をしてそこにいた。というより家の中!昨日まで冒険者酒場のようだった部屋が大理石の床にシャンデリア、オマケに高級レストランの机のような丸テーブルが数個置いてある。なんか料理も次元が違うんだが…まずい!2人を置いてけぼりに、と2人に視線を当てると2人は泣いていた。
「私はこの世界を見るために生まれてこの方頑張ってきたんだ。」
「俺馬鹿だけどよォ、この世界が輝いて見えることは分かるぜ。」
そうだ、こいつらもみんな好きなんだ。あまりのすごさに自分も圧倒されていたが2人はもう出会えた時の感動の次元が違った。きっと昨日のも見たら泣き崩れてただろうなぁ…
「せっかくだから楽しもうではないか!2人とも」
「「はい!」」
友達も全力で楽しみ帰っていった。今日も幸せだった。部屋もまた全てが変わっていてとにかくびっくりした。なんでここまで1日で変えられるのだろうかという疑問は野暮なので質問するのはやめた。家に帰ると世界が変わるのなんて、俺の家だけだろう。明日はどうなっているかと楽しみに思い、眠りに落ちた。
いつものように?見送られ学校に着くと2人から感謝と信じなかったことへの謝罪が来たが、あんなの普通に信じろというのが無理だろう。また次の機会があれば行ってもいいかという質問にも俺は2つ返事で承諾した。今日はどんなことがあるのだろうと期待してまた早めに学校に帰った。
今日はSF、その次の日はは原始時代と毎日家の中が目まぐるしく変化を遂げて行く中で、段々と自分の中にある疑問が芽生えてきた。
「自分の家族は一体誰なんだろう……。」
最近、家族全員で役に入っているからどうしても自分の家族の元の形が上手く思い出せなくなってきてしまっていることに気づいた。それに気付いてから楽しさはあれど少し寂しさを感じて、家族の作る「異世界」を全力で楽しめなくなってきてしまった。それをそのまま親友に相談すると。
「言ってみりゃあいいじゃねぇか!きっと家族もお前の気持ちを大事にしてくれるぜ!」
「私たちも楽しませてもらってるんだ、お前が寂しい思いをするのは私たちにとっても幸せとは言えないな。」
「おまえら…」
持つべきものは友とはよく言ったものだが、本当にそうだと思う。学校帰りに友達に背中を押され、言う決心をした。
「ただいま!みんな!」
いつもとは違う帰ってきた時の自分の様子に家族が一瞬だけ固まる。決意は固めてきたんだ、言うだけ言ってみよう。
「実は…」
俺は胸の内を明かした。いつも楽しませてもらってること、でも本当の斑目家としての家族の形をもっと大切に過ごしたいとも思っていること。
「そうだったんだな慎太郎…寂しい思いをさせてすまなかったな。」
「私もちょっと調子に乗りすぎちゃったわね、ごめんなさい。」
「おねーちゃんとしてもっと早く気付くべきだったわね。」
「お兄ちゃんが悲しい顔するのは私も悲しい!」
あぁ、なんて優しい家族なんだろうか。
「でも本当に楽しかったんだ!完成度も高いし、何より本当にあんな世界に自分がいるんだって思えた時幸せだった。」
続けて言う
「だからこれからは週一にしようよ!そしたら家族の時間も増やせるしこの楽しい異世界旅行も続けられる!」
後日談にはなるが、結局自分の出した案に家族全員納得してくれて毎週金曜日に異世界デーとしてそのイベントが置かれるようになった!もちろん友人も時々呼んで全力でその日を楽しんでいる!紆余曲折はあったが、やっぱり自分はこの家族も家族の作る異世界も、アニメも漫画も大好きだ!
「やっと週末だぁ〜」
「ようやく終わったなぁ〜授業ダリー」
「真面目に受けろ授業を!赤点とっても知らんぞ!」
ようやく眠いだけの授業を乗り越えいつものようにイツメンで他愛もない会話を交わした後、別れを告げ帰路に着く。1週間分の疲労はあるものの俺の足は早まるばかり
「今日はどんな世界が広がっているんだろう…」
思わず口に出てしまう。あぁ、幸せだ。
俺は今日も、胸を踊らせながら玄関のドアを開けた。
初書きなんだ…誤字脱字と文才の無さだけは許してくれ〜




