予算は最小、見栄えは最大! 雪像コンテストと内職フラワーで迎える凱旋パレード【準備編】
※5/23 修正
「勝った! 完勝だ!」
食堂に飛び込んできた伝令の絶叫を聞いた瞬間、私の脳内レジが「チーン!」と景気良く鳴り響いた。私は先に手紙で訊い取ったけど。ついに全体に情報が行き渡ったか。
ヨトゥンヘイム公爵、フロスト卿。北東勢力を完膚なきまでに叩き潰し、全軍帰還の途に就いているとの朗報に───
「うぉおおおおおおお!」
と、歓喜に沸く食堂。それはそれとして、私の視点はすでに「その先」の貸借対照表へ飛んでいた。
「……よし、これで戦争という名の不採算事業は終了や。次はこの勝利を、いかにして『永続的な利権』に変換するか……腕の見せ所やな」
今回の勝利で得た「資産」は計り知れない。 市場の拡大、降伏した村々という名の新たな労働力、そして賠償金という名の一時金。だが、そんなものは「端金」に過ぎない。
私の狙いは、北東沿岸にある不凍港の領有権。それ一点やった。
「ヨトゥンヘイムの海は冬になると流氷で閉ざされる。……それが、これからは一年中、世界と繋がれるっちゅーわけや」
私は地図上の一点を扇子で叩いた。不凍港――それは、二十四時間三百六十五日、物流の通行税を吸い上げ続ける「黄金の蛇口」や。
「鉄道と船を直結させる。そうなれば氷の輸出は世界規模になる。王家が徴税に明け暮れている間に、こっちは物流の根幹を握って、国ごと買い叩いてやるわ」
(フロスト様……アンタ、最高の『重機』やで。壊すだけ壊して、私に最高の『更地』を差し出してくれたんやからな)
「お嬢様、顔が完全に『悪徳商人のそれ』になっています。一応、婚約者の無事を喜ぶポーズくらいしてください」
隣でミヤハが呆れたように伊達眼鏡を直す。
「無事? 当たり前やろ。あんな怪獣が負けるわけないわ。……それよりミヤハ、凱旋パレードの準備や。予算は最小、PR効果は最大。コスパ最強の『見せ物』を仕掛けるで」
「……お花でも飾りますか?」
「戯け。生花なんてこの寒さじゃ一瞬で枯れてゴミになるだけや。……使うんは、紙と木、それに『雪』や」
私の提案はこうや。
1.ペーパーフラワーの雨: 貧困層の女性たちを内職で雇い、安価な色紙で「枯れない花」を百万輪作らせる。終われば暖炉の薪として城下町に配る。
2.雪像コンテスト: この地には腐るほどある「雪」を資材にする。優秀な作品には「極上の肉」を賞品として出す。
「雪なら仕入れ値ゼロ。彫るのは領民のボランティア……やなくて、肉という対価を求めた『自主的な労働』や。城下町がフロストの像で埋め尽くされれば、領民の支持率も爆上がりやろ」
「……焼却処分まで見据えた燃料配布。そして賞品による市民の動員。相変わらず、可愛げのない合理主義ですね」
ミヤハはそう言いながらも、手帳に「内職の募集要項」を素早く書き留めていく。
「ミヤハ。余韻や風情で腹は膨れん。……せやけど、綺麗な景色を見せて、なおかつ腹も満たしてやる。それが、私流の『福利厚生』や」
パンと手を叩く。フロストは仕事を果たした。次は私が彼を迎え入れる番や。
「……さぁて、公爵様。最高のパレードで出迎えたるからな。楽しみにしてや!」
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