68 タイムリミット
「…血?」
いやいや。そんなわけない。この血の持ち主がやまとな訳…だって、俺が拉致されてから結構時間が経ってるだろ?その間起きないってのは流石に不自然だし急に消えた俺を心配しないってほど薄情ではないと思う
…まさかそんな訳ないよな
「やまと!おーい!いるなら返事してくれ!頼むから!俺が1番嫌いなのってドッキリだからな!?」
一応呼んでみたが応答はない
…そうだ。血の渇き具合でいつ頃出血したかが分かるから、もしやまとの物でもまだ乾いてなかったら…
「…」
…やはりと言うべきか、血は固まってこびりついていた。まぁ、薄々勘付いてはいたさ。もしこれがついさっき出て来た物であれば上から垂れてくるだろうし…俺が下にいた時血が垂れて来たような痕跡はなかったぞ?
犯人側からしたら垂れた血を拭く必要なんてないし、仮にやまとが出血していたとして、垂れた血を拭いている暇なんてないだろう
つまりコレは上から垂れる時間もなく乾いたわけで?たしか大量の出血って乾ききるまでに数時間かかるだろ?
乾くまでの数時間、この隙間だらけの枝の間を血が垂れないはずがない。
まさかとは思うが、コレって血糊…
「カイセイ!何をしているのですか?」
「いぁ!?」
驚いて振り向くとやまとがそこに立っていた。
あっやばい。驚いた反動で体が傾いて…
「あっあぶない!…ふぅ、危なかったね」
「あぁ…助かった。ありがとう」
やまとが手を伸ばして俺を支えてくれたおかげで木から落ちる事はなんとか免れた、が…
「お前さ、なんだよこの血糊みたいなやつ。ドッキリ?俺が拉致されたって言うのもドッキリ的な類だったのか?てかお前音もなく忍び寄るなよ。心臓に悪いだろ…」
「すみません。カイセイの驚く顔が見たくて…」
はぁ、何なんだこいつ。人騒がせすぎるだろ。正直やまとが寝ていた所に血が付いてた時点でもうダメかと思ったぞ…
「…泣いてるのですか?」
「…うるせぇ。汗な?俺今急いで走って来たから…」
本当に良かった。ドッキリじゃなくて、もしコレが現実でやまとが死ぬ。なんて物だったらショックで立ち直れないだろうし、あいつらにも何で話せば良いのか困るからな
「…やまと。こうしてドッキリも成功しちゃったんだし、そろそろ木から降りて行動しようぜ?時間がもったいないぞ。お前の目的はグリフォンだろ?ほら」
「…そうでしたっけ、まぁ降りましょうか」
「…?お前いきなりこういうアクティブな行動が大丈夫になったんだな?」
一体どうしたんだろうか。自分の目的すら忘れるなんてやっぱり頭でも打ったんじゃ…
…?
…こいつ、目的忘れてたよな?そんでもって…行動が大胆になってて…普段しないようなドッキリを仕掛けて来て…俺を支えるほど力がある…?
スペックがまるで別人じゃないか
…まさかな
「お前、まるで別人だな」
…まさかね
別人だななんて言葉すぐに否定してくれよ…な?
「…よく気付いたな。あーぁ、行けると思ったのになァー…まぁいっか、そろそろ時間だろうし」
俺がそれに対して反応する間もなく突如俺の目の前、空中にホログラムのような物が現れ、2人の影が映し出された
その2人のうち1人はよく見知った顔で…
「カイセイ!逃げてっ!!」
ホログラムで現れたやまとは、ズタボロな姿で拘束されたまま、俺を見つめていて…
直後、後頭部を強い衝撃が襲う
「薄々勘付いていただろう?今回の目的はやまとの抹殺ではない。あの勇者と同郷であるお前の抹殺だ。それでは、せめて最後くらい幸せな夢見て死んでね。さようなら」
どうしようも出来ない睡魔が俺を襲う中、やまとの叫び声と消えた彼らの姿のみが頭の中に鮮明に焼き付いた
最終的にハッピーエンドにするかバッドエンドにするかでとても葛藤しています。
まだ終わらせる気はありませんがね




