64 星空の下で
「しょうがねえなぁ…俺が脱力しても落ちないようなところ探してやるから。お前は背中にしがみついとけ」
「しがみつく…?足に力が入らない私になんてこと…」
やまとがぼやいているがもうそんなこと知ったこっちゃない。やまとが仮に落ちたとして、最終的に困るのは俺じゃなくてやまと自身である。これでやまとがしっかり捕まらずに落ちたらそれはやまとの責任なのだから気にすることはないはずだ
「うーん。枝は割と太いからどこも安定しそうだが、丸いからなぁ…どっかに横たわる態勢なら落ちない所とか…」
「あそことかどうですか?割と頑丈そうで広そうですよ」
おぉ、あそこなら確かに丁度良…くない
「お前を担いでどうやってあんな所まで登れと?」
「身体能力強化魔法があるじゃないですか」
「ただの学生の精神のか細さ舐めんな」
俺達が、と言うか俺が立っているこの枝からさらに5、6メートルほど上にやまとの言っていた場所がある。確かに俺の高さの周りにあそこほど安定してそうな場所はない。ないが、別にあそこにこだわる必要はない気が…
「お願いです」
くそっ俺はなんて弱っちい男なんだ
「…しょうがねえなぁぁあ!登ってやるよ!?登ってやるからさ」
「登ってやるから…?」
「…お前の夢を教えてくれ」
…急に変なこと聞いてどうしたのかって?本当はやまとにとんでもない願い事を言ってビビらせてやりたかった。でも純粋な気持ちで続きを待たれたらさ?そんな事とてもじゃないけど言えないじゃん。俺ってこんな女に弱かったっけ…
「…?良いですけど…?」
「あの、やっぱいい。今のは忘れろ。今から登るからな。気をつけろよ」
「えっ!?」
そうして驚いたままのやまとを担いだまま次の枝へと飛び移って上へ上へと進んでいく
「いやぁぁぁぁぁぁあ!?」
「うるさいから叫ばないでくれ」
…にしても変な木だよなぁ。木自体は真っ直ぐなのに枝が複雑に曲がって枝分かれしてる。まるで針葉樹と広葉樹のハーフみたいな感じだ。て言うか本当にやまとがうるさいんだが
「もうすぐで着くから本当に黙ってくれ」
「…わかりました」
いきなり落ち着くな!怖い。
…まぁ、静かになったおかげで登ることに専念できるようになったし、ある程度怖くてもいいか
「…っと、よし着いたぞ。ほらどうだ。落ちそうな感じするか?」
「大丈夫っぽいですね」
大丈夫っぽいのか。なら良い
「こんな馬鹿なことしてたせいでもう空が暗いから、やまとはもう寝ていいよ」
「いくら木の上が安全だからとは言っても見張りは必須ですよ?それを私たちが寝たら誰が」
「俺も寝るなんていつ言った?大丈夫。俺が見張っておくから」
「寝ないつもりなんですか?」
「それが?」
「いや流石に私だって見張りしますよ?て言うかまだ夢語ってないので寝れないのですが」
「いやいい。俺が生まれた日本って国は夜が強いことで有名だからな。あと、夢を教えろって話は忘れろって言ったよな?…まぁ、語ってくれるならまた明日、無事に起きれたら話してくれ」
なにかやまとから怒りの気配を感じる気がするがおそらく問題はないだろう。てか何で怒りの気配が…?
「…怒ってる?」
「怒ってません。ただ、旅が始まってから私は…守られてばっかで……私、迷惑ですか?」
何だコイツ。めんどくささに磨きがかかってやがる…
「俺もやまとに助けてもらったじゃないか。お互い様だ。それにやまとが迷惑でお荷物だなんて今まで一度ぐらいしか思った事はない。安心しろ」
「今の発言不安要素しかありませんでしたよね!?…本当に今日ずっと見張ってもらっていいんですか?」
「だから良いんだって。俺ってしつこい人は嫌いだからな。覚えとけよ」
「…ありがとうございます」
…やまとに笑顔が戻ったな。よし。これで俺は心置きなく見張りができる。しっかし困ったな。この世界って何も娯楽がないだろ?何すれば良いんだろうか
…星でも観測するか
「おぉ、この世界にもさそり座ってあるんだな。つまり?俺の星座は生きてるってわけだ。さすがだな俺の星座。ていうか、星座の左右反対じゃね?つまり太陽系とこの世界ってさそり座を挟んで真反対に位置してるってことか?いやそれはないか。だって法則そのものが色々キモいもんな。魔法なんてもんがあるし、まぁパラレルワールド的な感じだろ。知らんけど」
こうして俺は周りの見張りをしつつ、空を眺め続けた。その時の空はあの日と同じく星で輝いていた
本作63話で書き忘れていたやまとの運び方(?)を記入しました。
明後日までにはハートフルな生活を求めて異世界放浪を更新しようと思います…最近忙しくて毎日投稿するのが厳しくなってきました。すみません




