52 雨宿り 前
「カイセイ…恥ずかしいのでこっち向かないでください…」
なんだやまとさん。服が透けてるじゃないですか
「大丈夫だやまと。俺も透けてるから」
「あなたって人は!!」
遡る事数分前
賭けを開始したが、たかがフラグで雨が降るとは毛頭思っていないので久々にチートを使って雨を降らす事にした
卑怯だって?好きなだけ言ってろ。チートをこの世界で行使するのは転生してきた異世界人として当然の権利ってもんじゃないか?だって、使うために貰ったのだから
俺は小声で《この快晴が打って変わって土砂降りになる》とチートを行使する
その瞬間左腕が麻痺したが、まぁそれで済んだのだから良き良き
「…あれ?空気中に水を感じる」
「変な特殊能力ですね。賭けに負けると思って狂っちゃいました…か…?」
その瞬間、ポツ…ポツ…と雨が降り出す
「…こんなの雨に入りませんよ」
駄々を捏ねても無駄だね。だってチート使って“土砂降り”を降らすようにしたんだから
最初は小雨程度だったのがどんどんと勢いが強くなって行く
あれっこの量はさすがにまずいんじゃ…
「おいやまと!急いでそこら辺の洞窟に逃げ込むぞ!このままじゃ風邪引くから焚き火用に幾つか枝を拾って行けよ!」
そうして今に至る
シワもなくピシリと整えられていたやまとの服装はびしょ濡れになり、所々にシワができて部分的に透けて見える。まぁそれは俺も同じだが…
「なぁ、流石に焚き火起こさないと凍え死ぬから。お前の方は見ないから焚き火起こさせてよ!なぁぁぁぁぁあ!!」
「この薄暗い所ですら服がどんな事になってるかうっすら分かるのに焚き火なんて起こしたら終わりじゃないですか!!せめて私に背を向けて焚き火してください」
焚き火自体は許してくれる辺り性格の良さが滲み出てるよなぁ
…左手が使えねえから火起こせないの忘れてました




