20 小麦魚と大乱闘(後編)
「ガハッ…!?」
重要な内臓が集まった所を巨大なその魚ボディで貫かれた俺は無様にもぶっ倒れ盛大に血を吐き散らかしていた
痛い!血が肺に入り込んできたせいで呼吸ができなくて喋れなくなったけど!死ぬほど痛い!てか死ぬ!!!
次々に自分の五感が閉ざされていく感じだ
そういえば以前は即死だったから俺はまだこんな気分も味わった事がなかったな
そんな事をぼんやりと考えているうちに、意識が遠のいて…
「こんな短期間に何度もここに来る人。初めて見ました…」
気付けば真っ白な空間に女神様がちょこんと座っていた
まるで実家のような安心感
「俺また死んだんですか?嫌だわぁ…」
「いきなり世界の理に中指を立てたような生物が爆誕したかと思えばあなたが殺されて…未だに理解が追いつきません…」
そんなイレギュラーな事があの一瞬で起こってたんだね
「あ、女神様?俺実は貴女の名前を聞くことが出来なくて困ってたんですよ。丁度いいので教えてくれませんか?」
「丁度いい…?
私は女神ギドナ。かっこいい名前でしょう?」
ちょっとイタズラっぽく言うところがまた可愛い
それはそれとして…
「すみません。もう死ぬの二度目なんで正直ショックとかはないんですけど、あっちの世界に戻るってのは出来るんですかね?」
「残念ながらそれは叶えられない願い事です…すみません…」
はぁ…
俺は正真正銘死んだってことね
向こうの世界に戻ることが出来ないと知ってからもうすべてがどうでも良くなったなぁ…
と、突然少し緊張したような男の声がこの世界に響き渡った
「向野?おぉ、やはり魂は生きておったか。心配したぞ?いきなり小麦魚がお前を貫いて勝手に両者共に消滅し始めるものだからな」
そんな空気をぶち壊してくるもう1人のイレギュラーな存在
「ロックだ!!!こっちの世界に干渉できたのか!おーい!俺ってもう完全に死んだのか?」
こいつならまだ、可能性が…
「体はもう数分もしたら消えると思うが、一応まだ生命反応はあるぞ?」
…?
まだ体が死んでないのに俺はこっちの世界へ来たのか?
まあそれはいいか
「ならお前のそのイレギュラーな力を使って俺を蘇生してくれ!」
「了解。蘇生はさほど難しい術ではないので5分もしないうちに蘇生は終わるであろう」
目を見開いて驚いている女神様をよそにやっぱり俺はいい仲間を持ったんだなぁと心から思ったのであった




