116 押しちゃった
俺は、このどうしようもない不安を気のせいだと思い込む事で乗り越えることにした。
そうしないと、自分が世界の何かに飲み込まれてしまいそうだったから
「…なぁやまと。今日の俺って変だったかな？」
「今更ですね」
「ぶっ飛ばしてやろうか」
ふぅ、もうあの憶測は心の奥にしまって次のことを考えないとな
「…なぁやまと。なんか俺すごい変な魔道具もらったんだけどさ、いる？」
「…効果は？」
「性別反転」
「絶対いらないし使いません。捨てましょうそんな危険なものは！」
ちょ、相変わらず過激だなぁ
「いや待てって。もしかしたら使う時があるかもしれないだろ？それに俺は少しだけ試してみたい事があるんだ」
「…試したい事？」
違うんだやまと。頼むから俺を変態を見るような目で蔑まないでくれ
「いや違うんだよ！」
「何が違うんですか！！」
「…中性のロックに使ったらどうなるのかなぁって」
「…なるほど」
ロックの女性バージョンも見てみたいけどなぁ
そんな邪なことを考えていた時
「おっ、貴様ら働かずにこんなところで何をしておるんだ」
聞き覚えのある声が俺の耳を貫いた
「…は？ロックがどうしてここにいるんだよ」
「うん？いやちょっとした調査でここまで来ていただけなのだが、まさか貴様らがここで働いているとは思わなんだ」
なるほどな。まぁロックにだって個人的にしたいことだってあるだろうし別に否定はしないさ
ただ俺が危惧している点としてはやまととのやりとりが聞かれていた場合だ。
…絶対イジられる…
そんな不安を消すためにも何か話を出さなくては！
「お、ロックが来たのなら丁度いい。ちょっとこのボタン押してみてくれないか？」
「…良いぞ」
一瞬ロックの口角が上がった気がするが気のせいだ気のせい
というか今さっきからの流れを追えていないやまとが可哀想なんだが。終始ずっと頭の中に「？？？」が浮かんでそうなほど困惑した顔になってたからな
「では、押すぞ？いいんだな向野よ。後悔するなよ？」
ハッ、何言ってんだ。後悔するのはそっちだっての
「後悔なんてねーよ。それよりそのボタンを押した後のロックが気になるからな。さぁ早く押せ！」
「さん、に、いち……」
……
…押しても反応がない…だとっ！？
「おいロックお前どう言うことだよ。やっぱ中性のお前には効果なんてないのか？」
そう聞いた瞬間、ロックが吹き出した
「うはははははは！っひひひひ…向野よ。いいことを一つ教えてやろう。これのボタンはな、効果を付与する相手をボタンを押した人が決めれるのだよ。こんな常識も知らなかったのか？…っあはははは」
…？？？？
「今からどうにか対処したら女性寄りの中性で済むかもな！」
…はぁ？さっきから何言ってんだよロックは
…冗談じゃないのかこれ…？
一応聞いてみるか
「それって嘘とかじゃないんだよな？ちなみにもしそれが本当だった場合、完全に今のままの男として戻るのは不可能なのか？」
「そりゃな」
…嘘だろ？
「一応聞いておくけどさ？効果が適応されてるのは誰なんだ…？」
「そりゃ向野に決まっておる」
「…ええええええええええ！？」
