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レディ・クロックの夏休み〜働き者の令嬢は、婚約破棄により「お休み」いたします?!〜  作者: 烏賊


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71話_夏休み最後の日

 深い森を抜け、のどかな草原と青空が広がる道へ出る。保養地区と王都の間の区にはこの夏訪れることはなかった。また今度遊びに来よう、とアナベルは窓から景色を眺める。隣でまだ気落ちしている婚約者を誘えば喜んでくれるだろうか。イーサンの頬を優しく突けば、しゅんと下がっていた眉が上がる。


「ふふっ」


 しばらく馬車で走り、パラソルを立てシートを広げてお昼休み。料理人たちが作ってくれた夏野菜漬物とソーセージのサンドウィッチで昼食時間。塩漬け発酵させた甘酸っぱい、食感の良い野菜とパンの相性は良い。ポーラの掛けてくれた冷却魔術で暑さもすっきり流す紅茶も非常に美味しい。

 昼休憩も過ごしたアナベルたちは、ゆっくりと王都へと戻る。キャンベル家に立ち寄ってから、バーンズ屋敷へと帰宅すれば、「お帰りなさい!」と家族も使用人達も笑顔で全員がアナベルを迎えた。


「はい! ただいま帰りました」


 アナベルは無事に、家族の元へと帰った。



 アナベルは二ヶ月ぶりのバーンズ家の屋敷、自室で三日間、荷物をほどきながらゆっくりと過ごした。

 そして始業式前日、つまり夏休み最終日は学園へ赴いた。明後日に開かれる新学期や、新入生を迎える式の打ち合わせがあるのだ。久しぶりに制服に着替えた彼女は、夏のお土産を携える。玄関ホールにはイーサンが待っていた。少し気恥ずかしさもあるが、二人で一緒に学園へ。会っていなかった三日間を話しながら、生徒会室へ赴けば一番乗り。二人は土産を広げて待っていると、夜会で会った後輩たち、そして海外旅行から帰ってきたニコルの順に到着する。彼女たちも各々、夏の土産を持って来ていた。


「さあ諸君、また明日からよろしく頼む。今日は生徒会役員として打ち合わせだが、まだ夏休みだ。終わったら存分に遊ぼうじゃないか!」


 南の島のバカンスで健康的に肌を焼いた生徒会長の宣言通り、生徒会メンバーは教師らと時間通りに打ち合わせを済ませると、持ち寄ったお土産と話で盛り上がる。


「明日は囲まれるぞ、アナベルもイーサンも。会えなかった生徒もいるんだ。しばらく学園の星になれるぞ」


 ニヤリと笑う友人に、アナベルとイーサンは目を丸くする。お互い顔を見合わせて、笑いが漏れる。ま、そう言うこともあるだろう。その時は存分に。

 最後は各々遊ぶ予定を組み、金色の空の下で「また明日」と手を振り別れる。


 保養地区で買い求めた花の入浴剤で身を清め、お腹を満たしたアナベル。

 寂しさと、期待と、不安と、あと少しの名残惜しさを滲ませた夜。

 自然と思い出される日々の出来事。なんと忙しくて、騒がしい日々だったろう。

 眠りに身を任せて、夏休み最後の日を終えた。




 こうして。彼女の、アナベル・バーンズの運命を変えた夏は、終わりを迎えた。




 運命が変わった、と言っても、その未来を知るものは神のみぞ知る。

 どう変わったなど、彼女自身は知る由はない。

 しかし。

 夏休み明けの学園でクラス替えの紙が貼られ、またアナベルと一緒になれず落ち込むイーサンの姿。

 予言のごとく多くの人に囲まれ、何故か悩める恋人の相談に乗るようになったり。

 賑やかな友人が王都に引っ越して来たことに驚き、新しい出会いに興奮し、元婚約者とはしたことのなかったようなデートに恥じらう羽目になったり。新しい事業の立ち上げに参加することになり、彼女のやる気が爆発したり……。


 アナベルの毎日に、面白さや喧しさが待ち構えていたのは間違いない。


 そして。


 アナベルは彼女自身の力と、多くの人々の手を借りてまた新しい道を切り開いていくのである。


次回で最終回です。

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