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レディ・クロックの夏休み〜働き者の令嬢は、婚約破棄により「お休み」いたします?!〜  作者: 烏賊


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16話_夏のスイーツ巡り

迎えた夏スイーツ巡りの日。 ジャックの案内で、北南エリアを食べ歩く。

アナベルはもちろん、イーサンも初めての経験だ。

1日課題や夜会に向け踊りの練習に取り組みつつ、屋敷でゆっくり過ごしたアナベルとイーサン。今日に備えて早く就寝したため、元気も体力も十分だ。燦々と太陽が輝く中でも、元気に歩き回れるだろう。


「大丈夫ですよ。きちんと休み時間や太陽の傾きも考えて移動していきますから。さささ、参りましょう」


鼻歌混じりのジャックが、先をゆく。強面な彼にしては珍しく、ひどく緩い顔だ。楽しそうな姿に、イーサンも嬉しそうに笑っている。

親鴨の後ろをついていく小鴨のように、2人は付いていく。




先ずは北側のエリア。住宅街が立ち並ぶここには、個人・家族経営のお店が多い。午後早くに閉店してしまう店もあるため、まずは屋敷近くから巡る。

昼を過ぎ、席が空きやすくなる時間を見計らって、南側エリアへ移る。昼食の塩味系スイーツーを挟み、暑くなる午後は冷たいものや川辺近くの店で涼みながらのんびり過ごす。南は流行を取り入れている商品が多く、真新しいスイーツを食べられるとのことだ。

日が傾き暑さが和らぐ16時過ぎから露店や持ち帰り専門店に立ち寄り食べ歩きながら、お土産に菓子や調味料を買って屋敷に戻る。

店に入るのは5軒ほどで夕方からは、お腹の空き具合をみながら出店を巡る。

1人ずつ違うものを注文すれば、1日でたくさんの種類のスイーツにありつけた。


南国フルーツのプリンアラモード、パフェ、フルーツジュース、桃の杏仁豆腐、レモンサワー、夏野菜とスパイスのケークサれ、太陽花の種で作られたマフィン、クレープとガレット。


葛餅、小豆を挟んだ魚の形のパウンドケーキ、西瓜のジェラート、バナナのソフトクリーム、植物ゼリー、タルトケーキ、ブラマンジェ。


「…!すごいわ」


どれもこれも美味しい。スイーツの種類の多さもさることながら、己の胃の大きさにも驚きだ。シェアしているとはいえ、こんなに多く食べれると思っていなかった。


「この時期のスイーツは彩も増しますからね。見ていて楽しいものですよ」


「個人的にもフルーツ関連の甘いものが増えるのは嬉しいな」


「しばらくすれば市が出ます。行商の市が。そこには名物の氷菓子もありますから、行ってみるのをオススメします」


なんでも最近は凍らせた牛乳やフルーツの塊を削り、色んなものをトッピングして食べるのが流行っていると言う。ボリューミーで溶けないうちに食べるのが難しいとジャックは熱く語る。想像しただけでも美味しそうで、アナベルは分かりやすく頬を緩ませる。




満足感と達成感で心は充実している3人は、季節の焼き菓子や調味料をお土産に買って17時過ぎには屋敷に戻った。

すでに屋敷は夕食のいい匂いで満ちている。

お土産をたくさん抱えたアナベルとイーサンを使用人たちは笑顔で出迎えたが、ジャックを見るなり頬を膨らませている。中には小突く者もいて、ジャックは困り顔で受けている。


「どうかしたの?」


「ジャックが羨ましいんだよ。アナベルと出かけられて」


「はい。まさかジャックに先を越されるとは思っていませんでした。アナベル様。よろしければ他の者たちとも戯れてやってくださいな。もちろん私とも」


真面目な顔でソフィアに言われ、アナベルは瞬きを繰り返す。思わずイーサンを見れば、彼にしっかりと頷かれた。


(なんでこんなにも私を構ってくれるのかしら)


イーサンに聞こうとしたが、食事の前に汗を流しましょうとメイドに入浴を勧められる。今日はしっかり汗をかいた。確かにさっぱりしたいと、アナベルはメイドに着いて行く。香りの良い湯で汗を流したアナベルは、そのまま夕食の呼び出しがかかる。

すると夕食の絶品さに、イーサンに聞こうと思っていた話は吹き飛んでしまった。


「うーん。アイザックたちが今日1日の記憶を塗り替えに来たな」


「お昼からこの調子よ!もう食べすぎてしまうから抑えて欲しいぐらいだわ…」


レティシアが眉を下げる。

一口食べる度に、舌が幸福に溶けそうだ。アイザックが屋敷に来てから、料理人たちは切磋琢磨し合ってきた。おかげで息子は健康的に成長し、毎日美味しい食事に幸せを感じるがついつい食べすぎてしまう、新しい悩みが生まれてしまった。同じ悩みを抱えるレティシアはひっそり同情の念を送る。


「奥様、イーサン様、アナベル様。よろしければお屋敷でバーベキューはいかがでしょうか?」


ぬるりと現れたアイザックは、レティシアたちに1つ提案をする。

というのも、屋敷の話題はアナベルとの時間不足問題で持ちきりだった。仕事も持ち回りもあるため、使用人たちの中でもアナベルと接する時間が少ない、ゆっくり話す時間がない者もいたのだ。レティシアも気を使い、イーサンとの時間を優先させているが義理の娘となる可愛い、自慢のアナベルと思い出を増やしたい。

料理に夢中なアイザックも、主人の妻となるアナベルの好みを把握しておきたいところ。またイーサンの夏休み企画に貢献でき、皆で何か楽しめることはないかと考え、出た答えがバーベキューであったのだ。

良く言ったアイザック!仲間達から尊敬の眼差しが向けられ、レティシアもイーサンも手を叩き賞賛する。


「いいわね!」


「いいですね」


「こ、今度はお肉祭り…?!」


アナベルは動揺する。このままでは本当に体型に影響がでてしまう。

狼狽えるアナベルに、アイザックは胸を張って主張した。


「ご安心下さい。食事のバランスも大事ですので、美味しい野菜も魚介類もご用意いたします。もちろんデザートも!」


「うぅ〜…」


大きな船に乗ったつもりで任せて欲しい。その意味だったが、アナベルが小さく唸り出し、アイザックは狼狽えた。イーサンに「そうだけど、そうじゃないんだよアイザック」と諭される。「あとでしっかりアイザックに話をしておきます」とソフィアに厳しい目線を送られ、アイザックは首を傾げるばかりであった。


「アナベルわかるわ。私も体重計と睨めっこしてるもの…。それはそれとして、バーベキューはやりましょう!決定!」


レティシアの宣言が屋敷中に響き渡る。宣言を聞いた使用人たちの歓声が屋敷中から上がった。

準備があるため、3日後にバーベキューは開かれることになった。


その後は1日の出来事ースイーツ巡りーの話で盛り上がり、賑やかに1日は幕を降りた。

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