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レディ・クロックの夏休み〜働き者の令嬢は、婚約破棄により「お休み」いたします?!〜  作者: 烏賊


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12話_楽しい夏休み

日が昇り始める4時に、アナベルは目を覚ました。

体を起こして、ぼんやりと彼女は部屋を見つめる。深く息を吸えば、鼻から肺、全身の隅々へと清々しい香りで満たされる。まだ残る眠気に千鳥足になりながら、バルコニーへ出る。柵にもたれ、緩い夏の風を浴びる。


ここは王都ではない。

馬に乗り3時間の場所、保養地区にある「サイドハウス・ノア」。キャンベル家が毎夏に過ごす屋敷であり、イーサンの婚約者となったアナベルの為の部屋である。



✴︎



『夏休みを利用して仲を深めるべきだ』という侯爵夫妻に賛同した彼女の両親は、早速使用人たちにアナベルの荷物をまとめるよう指示を出した。

そこからは怒涛であった。

キャンベル家に負けないバーンズ家の優秀な使用人たちは、あっという間に荷物をまとめると、キャンベル家の馬車に積み込んだ。やたら荷物が積み上がった馬車が止まっていると思ったら、キャンベル家のものであったのだ。

どうやらアナベルの保養地行きは、最初から決められていたらしい。この調子では、もし告白を断ったとしても保養地に連れて行かれたに違いない。半眼で馬車を見つめる娘を尻目に、家族は会話を弾ませている。


『娘をお願いいたします』


『こちらこそ。私たちにとっても大事な義理の娘だからね』


『向こうに到着次第、ご連絡します』


『着いたら時々でいいから手紙を送ってねアナベル。それではよろしくお願いします。イーサン、侯爵ご夫妻』


『えぇ、最高の休みにしますわアニー!』


『お姉様、お土産よろしくね!』


『んね!』


家族と使用人たちはアナベルを笑顔で送り出した。

途中、馬車はキャンベル家に立ち寄り、デービッドは馬車から降りた。彼はまだ仕事が残っており、数日後に合流するとのこと。


『良い夏を過ごそう。それでは後で』


アナベルとイーサン、レティシアを乗せた馬車は颯爽と道を駆け、保養地区にあるサイドハウス・ノアに到着した。そこにはすでに、本邸の使用人であるソフィアやジャック、アイザックたちがいた。


アナベルが馬車から降りると皆嬉しそうに、また1人の主人として出迎えてくれたのだ。


『アナベル様。どうか末永くよろしくお願いいたします』


ソフィアの言葉に、アナベルはゆっくり頷くことしかできなかった。






それから数日間。夢のようなひと時を、アナベルは毎日振り返る。


「…まいにち、たのしすぎる」


婚約者として、バーンズ家の1人として成すべきことはあるというのに。

全てを差し置いてそう思ってしまう自分は、なんて非情なのだろう。

アナベルは顔を覆いながらも、今日の夏休みの予定に、ワクワクする期待を抑えきれずにいた。


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