0話_ある冬の話題
冬を迎えた大陸に、とある令嬢が出版した書籍が話題になった。
令嬢の名前は、アナベル・バーンズ。成り上がり貴族と悪名高いバーンズ伯爵家の長子で、チョコレート色の長髪が美しい令嬢だ。
時に度が過ぎるほど真面目な性格で、努力することに一切手を抜かない。休日も返上し、親の仕事の手伝いに勉強、課外活動などに取り組む。彼女は、0.1秒も時間を無駄にしないよう、厳しく時間を管理してきた。その厳格さは時計と変わらず、いつしか彼女は『レディ・クロック』と呼ばれるようになった。
それがアナベルという令嬢である。
今冬に出版された彼女の書籍は、その構成や文体に彼女の気質が現れていたものの、驚きのテーマが取り上げられていた。
それがなんと『休日の過ごし方』。
ある地区の観光スポットを取り上げ、時間がない中で、また遊び方が分からない人がそのスポットでどう楽しむかが、具体的に書かれている。
『時計』と呼ばれる令嬢が取り上げる『休み方』とは一体?
それは多くの者の興味を引いた。
店頭に並べば、あっという間に完売した。そして読んだ者が「面白い」「自分も楽しんでみたい」「休みを取りたい」と評判になり、働き詰めで少しの時間で気分転換したい者や、次のバカンス地を考えている者に特に求められるようになった。
「けどこれをあの、レディ・クロックが書いたとはな」
「ねぇ! 驚いたわ」
今まで『休み』や『遊び』など蚊帳の外であった彼女に、一体何が起こったのか。
それを語るには数ヶ月前、大地に熱がこもり始める季節まで遡る。
すべての始まり──実はずいぶん昔から紐づいていたが──、アナベル・バーンズの”運命”は夏の訪れとともにやってきた。
「レディ・クロックの夏休み〜働き者の令嬢は、婚約破棄により「お休み」いたします?!〜」をよろしくお願いいたします。




