5、真実
「由紀菜ぁ~」
今日も、由紀菜の家の前で叫ぶ、私。
何も知らない、私。
いつも通りに…。
「山河さんには、関わらないほうがいいよ?君」
おそらく、近所のおじさんと言える人が、私に話しかけてきた。
山河さんとは、由紀菜のこと。
…なんでだろ?
私は、モジモジしながらも言った。
「え…?何で…ですか…?」
「それは、おじちゃんの口からは言えないなぁ~」
おじちゃんは、顔を困らせながら、「それじゃ」と言って、戻って行った。
由紀菜が何やったの?
私が知ってる限り、由紀菜は何もしてない。
学校に行くと、教室がザワザワしてうるさかった。
…いつもは、みんな違うクラスに遊びに行ったりするのに…。
今日は、全員いる。
何で??
「あ、福沢さんっ」
クラスの女子が話しかけてきた。
話しかけてきてくれてうれし~、とか思ってたら、その女子は深刻な顔をして、私にこう言った。
「…由紀菜のお父さん、犯罪者なんだって」
「え?どういうこと?」
こういう風に人と話せててる自分に少しびっくりした。
でも、今はそれどころじゃない。
意味がわからない。
由紀菜のお父さんが犯罪者?
どういうこと??
「福沢さん、昨日、すぐ近くの交差点で車が人をひいた、っていう事故知ってる…?」
あ、昨日の…?
「知ってる…かも。それと、由紀菜のお父さんがどう結びつくの?」
……もしかして…。
「人ひいたの……由紀菜のお父さんなんだって」
「え!?本当?それ!」
「うん…。みんなも言ってるし」
え?
嘘?
何で由紀菜に限って…。
だからか。
近所のおじさんが、「山河さんに関わらないほうがいいよ?」って言ってきたのは。
「香織ちゃん?」
放心状態の私に話しかけてきたのは、美並ちゃん。
「……」
「これでうち等のグループに入ってくれるでしょ~?」
「……」
何も言えなかった。
なんか、ここで美並ちゃんのところに行ったら、由紀菜を裏切ることになりそうだから…。
由紀菜のそばにいたいから…。
でも、私は、美並ちゃんの一言で、由紀菜を裏切ってしまったんだ。
「入らないと、いじめるよ?」
脅しだけど、私は入らなかった時のことを考えたら怖くなって、
「…わかった……。美並ちゃんのグループに入る…」
と言ってしまったんだ……。
続く...