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503話 地に落ちる

「ふざっ……ふざけるなっ!!」


 む? 急にどうしたんだろ?

 なぜかラルフィー少年がブチ切れてるんだけど。


「き、貴様らは私を……この私をバカにしているのか!?」


 バカにしてる? 急に何を言い出すかと思えば……


「は? バカになんてしていませんが?

 私は至って真剣です」


 私が実際に対峙している敵をバカにするはずがないじゃん。

 やれやれ、ラルフィー少年はこの私を誰だと思ってるのやら。


 私は人類の守護者たるSランク冒険者、それもSランク冒険者達の中でもトップクラスの実力を誇る〝白銀〟なんだよ?


 敵を挑発する事はあっても、油断してバカにする事なんてありえない。

 それがラルフィー少年のような、強大な力を持つ存在ならなおさらに。


「っ〜!!」


 ふむ……事実を伝えただけなのに、なぜか余計にラルフィー少年が憤慨しちゃってるように見えるんだけど。

 まっ! なんにせよ、これは好都合っ!!


「まぁいいです。

 そっちが来ないなら……」


 理由はわからないけど、激昂して冷静さを欠いてくれれば儲けもの!


「こっちから行きますよ?」


 愛刀である白の柄に軽く右手をかけ、怒るラルフィー少年の背後に回り込む。


「ッ──!!」


 スピードだけで言うと、私はルミエ様やガルスさんすら抑えてSランク冒険者の中でも最速を誇る。

 そんな私にスピードについて来れるのはさすがだけど……それじゃあ遅い!!


 あっさりと終わっちゃったら、貴族達(ギャラリー)は拍子抜けしちゃうかもしれないけど、そんな悠長な事を言ってられる相手じゃない。


 貴族達はフィルの結界で護られるし、多少手荒になっても構わない。

 この一撃で決める。

 確殺の意思を持って放つ神速の一刀をもって……


「神域展開」


 それは私のユニークスキル・創世魔法とは似て比なる力。

 本来は超越者……神と呼ばれる領域まで至った者にのみ許される権能!!


 創世魔法との違いはまぁ色々とあるけど。

 創世魔法が1から小世界を創り上げる権能だとすると、神域は世界を書き換える事によって一定の空間を自らの小世界と定義する権能。


 創世魔法のように全てが自由自在ってわけにはいかないけど、相手の魔素(エネルギー)量によっては作り出した空間に引き込めないとか、凄まじい消費魔力と言ったデメリットが存在しない。


 では神域とはなんなのか?

 それは……全てがその主人のために整えられた空間!

 女神アナスタシアがそうであったように、神域内において私の力は極限まで強化され、逆に相手は弱体化する。

 言ってしまえば、究極のバフ・デバフ空間!!



 バチィィィ!!!



 耳をつんざく雷鳴が鳴り響く。

 その瞬間──私の身体は雷を纏い、さらにその先へと。

 青白く雷光を迸らせる雷と化す。


 纏うのではなく自身の身体を属性魔力と一体化させる事で属性そのものと化す、魔闘法を極めた先にある極致。

 魔闘法・(イカズチ)


 私以外の全ての動きが止まる。

 魔闘法・雷による大幅な身体能力の向上に加えて、居合による極限まで研ぎ澄まされた集中力!

 世界の時間が止まったと錯覚してしまいそうなこの感覚!!


 神域内という事も相まって感じる圧倒的な全能感。

 まぁ今の私でも手も足も出せずに翻弄されてしまうような、圧倒的な強者達を知ってるからこの全能感に酔いしれる事なんてできないんだけど……


 ほとんど止まって見える程にスローになった世界で、驚愕に息を呑み目を見張るながら振り返るラルフィー少年の首筋へとスッと刃を走らせる。


「白雷一閃」


 そして世界が動き出す。

 青白い光の輪が王都の上空に走り抜け……



 ────────ッ!!!!



 光の輪を応用に凄まじい鳴雷鳴と共に、大気を揺るがす衝撃波が駆け巡る。

 光の輪の線上にある壁に、横一線真っ直ぐに線が走り会場の……


 ラルフィー少年が解き放った魔力の奔流によって吹き飛んだ会場の天井だけじゃなく。

 王城の半分より上が衝撃波によって吹き飛び、次の瞬間には雷撃に焼かれて塵と化す。


「「「「「「「「「……」」」」」」」」」


 この場にいる誰もが……Sランク冒険者のみんなや、四大国の王達とか一部の例外はいるけど。

 とにかく! セドリックもオズワルドも、ガイルもサイラスも!


 そしてさっきまでは何故か私とフィルを見てはしゃいでいた聖女エマさえも!

 全員がポカンと間抜けな顔を晒して静まり返る!!


 ふっふっふ〜んっ! 私の絶大な力を目の当たりにして呆けちゃってるみたいねっ!!

 まぁ私の実力は文字通り世界トップクラスなわけだし? こんな反応になっちゃうのは仕方ないんだけど……


「ッ〜!! ば、バカなっ!!」


 驚愕に満ちた声が静寂を破る。


「ふ〜ん、さすがというべきかな?

 本気で終わらせるつもりで剣を振るったのに……まさか今のを避けるなんて」


 私の視線の先。

 そこには……


「こんなっ」


 立派な3対6枚の熾天使(セラフィム)の証である純白の翼は焼け爛れ。

 左側の2枚に至っては半ばから断ち切られて消失。


「まぁもっとも、完全には避け切れなかったみたいだけど」


 さっきまで私達を見下し、見下ろしていたラルフィー少年が。


「こんな事がっ──!」


 地に落ちた天使が苦悶に顔を歪ませた。


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