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深夜のコンビニ  作者: 綿貫乃紐
1/1

トイレの少女

店内には真面目そうな大学生が接客をしていた。


大学生「いらっしゃいませー、お会計は835円になりまーす。」


客「どうもー」


時間は午後3時を上回ったくらいか。人手はそこそこだ。レジに立つ大学生は割と絶え間なく来る客の対応にあたっている。陳列棚の方ではパートのおばさんが品出しにあたっている。



大学生「今日も忙しいっすねー」


パートさん「頑張んなきゃ、まだまだやる事はあるよ」


コンビニは至って一般的な大きさだ。店内も食材が並んだ陳列棚、ドリンク•チルドが並ぶ冷蔵庫、レジ。だいたいいつもレジに1人、品出しやバックヤードの管理に1人が平常だ。今日は大学生とパートさん2人で回っている。



大学生「この曜日忙しいんすよねー」


パートさん「普段は3人で回す時間帯だからね、やる事は1.5倍だね」


大学生「店長帰ってこないかなー」


パートさん「店長は店長で家のことで忙しいのよ」


大学生「はーん」



店長は夜勤や朝の空いてる時に来るが、この時間帯は家にいることが多い。代わりにパートさんが店内を仕切ってることが多く、パートさんが裏方にいることもある。今日はバイトの人がいないのでパートさんも表に出て働いている。



配達員「こんにちはー、商品でーす」


パートさん「どうもー、ここ置いといてくださーい」


配達員「よろしくお願いしまーす」


陳列棚にはところどころに商品の減りが見える。この時間帯になると、お菓子やチルドなどの納品が始まるようだ。パートさんはあくせくと納品と品出しに取り掛かる。



大学生「いらっしゃいませー」


客「メビウスオプション1ミリで」


大学生「はいー」


煙草は買う人数こそ減ったものの依然として一定の需要はある。大学生は手慣れた知識で煙草を渡す。



◯◯「あれー」


パートさんの近くに小柄な少女が立っていた。


少女「飴さん売ってない?」


パートさん「飴さんならここの棚にあるよ」


少女「違うの。赤い飴さんがいいの」


少女は駄々をこねていた。パートさんはそんな少女にちょっと困った様子だった。


パートさん「うーん、じゃあこれはどう?」


パートさんが選んだのはすいすい川の彩り飴。中には様々な味の飴がある。


少女「ありがとう」


パートさん「良いのよ」


少女「お兄ちゃん、これひとつ」


大学生「はいよ、198円です」


少女「ありがとう」


少女は足早に立ち去って行った。



次の週、パートさんが店番をしているとき、以前入っていたパートさん②と入れ替わりで大学生が入った。


大学生「おはようございまーす」


パートさんB「おはよう」


大学生「今日も寒いっすねー」


時期は冬、地域は積雪こそ少ないが、温暖な地方の割には雪がしばしば降る。今日は雪こそ降ってないが、気温はかなり低い。


大学生「飴舐めると寒さが和らぐって知ってます?」


パートさんB「何それ?」


大学生「飴舐めるとそっちに気を取られて寒さを忘れるんすよ」


パートさんB「仕事中に飴舐めちゃダメよ」


大学生「飴舐めたいんすよ」


大学生はパートさんAにも挨拶をして仕事に入った。



大学生「いらっしゃいませー」


客「セッター」


大学生「はいー」


大学生は慣れた手つきで煙草を渡す。煙草の銘柄の位置を正確に把握しており、ベテラン感が伺える。



しばらく立った時、1週間前に来た少女が同じ時間にやって来た。


少女「飴さん売ってない?」


パートさん「あ、この前の子、彩り飴があるよ」


少女「今度は黄色い飴さんが良い」


パートさん「このパイン飴はどう」


少女「ありがとう」


パートさん「良いのよ」


少女「お兄ちゃん、これひとつ」


大学生「はいよ、198円です」


少女「ありがとう」


少女は足早に去っていった。



大学生「Aさーん、どのくらい終わったー?」


パートさん「何がー?」


大学生「品出しー」


客足が少なくなって来て、大学生も品出しに加わった。パートさんとそこそこ仲は良さそうだ。



次の週、大学生はシフトの時刻に店に来た。


大学生「おはようございまーす」


パートさんB「おはようー、今日はちょっと忙しいみたいだから掃除をお願いね」


大学生「まじすか、了解でーす」


大学生は店内の掃除、パートさん2人はレジを打っていた。入り口近くの床から棚を挟んだ床を順繰りに掃除していく。それが終わったら、外とレジのゴミ捨てだ。


大学生「失礼しまーす」


パートさんA「結構大変だから3人で回すかも」


大学生「了解っすー」


パートさんA「掃除終わったらレジお願いねー」


大学生「了解っすー」


ゴミ捨てが終わったら、トイレ掃除だ。大学生はトイレ用のモップを持ってトイレに行く。


大学生はトイレの前で立ち止まった。トイレは男女兼用で鍵をかけるのは当然だ。しかし、トイレのドアはわずかに開いており、いささか違和感を感じたようだ。


大学生「誰か入ってますかー?」


特に返答はない。大学生は人はいないと判断し、トイレのドアを恐る恐る開けた。


◯◯「キャー」


甲高い声が聞こえた。大学生は非常に驚いて、バックヤードに退散した。


トイレの中に人はいなかった…しかし、絶対に悲鳴のような声は聞こえた。大学生は少し気を落ち着かせたのち、再びトイレに戻った。トイレのドアは開けたままになっており、トイレの便座の上には青い飴が一個置いてあった。



大学生はうちに帰ってその飴について調べてみた。すると、どうやら店に売ってないラムネの飴らしかった。さらに詳しく調べてみると、小学生の間で人気の飴らしかった。


大学生「ふーん、小学生の飴かぁ、あの少女に関係あんのかなぁ」


大学生は考えてみたが分からなかった。しかし後に残った事実としては大学生が見た少女の印象は髪がかなり長かったということと、満足そうな表情をしていたということだった。

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