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悲しみとそれぞれの決意

ランドとマル―シャがモビレの砦に戻ってから、ランドがラミド城からの報告をアルとルカに伝え、今後の作戦を練り始めた為に会議が続き、アッという間に夜になっていた。


その夜は、食堂ではなく外の鍛錬場で野菜や主に肉を焼くバーベキュー形式の食事の提供となった。というのも実はランドとマル―シャが吹雪でシアフィスの森の手前の森の中で吹雪を避けて木の下で避難していた時、ロゴンドの砦から食材や備品などを配送していた所に偶然遭遇したは配送兵の三人と共に野宿した明け方前に、三人のテントに巨大な猪が三頭三人のテントに襲い掛かってきたのだ。


その騒ぎに気付いたランドが見事な剣さばきでアッという間に猪を三頭も仕留めたのだが、この騒ぎに全く気付いていないマル―シャは朝起きて目の前の猪の小さな山に驚き、これを砦に持って帰ってみんなで宴会をしたいと言い出したのだ。


そのため、大きな猪を元々運んでいた荷車の上に猪三頭を積み上げてモビレの砦に戻ってきていた。

それをさばいて本当に夕食は砦の中の広場で豪快に猪の肉を焼き始め、多くの兵士たちが外に集まってめいめいに会話を楽しみながら食事を始めた。


もちろんその中心には、一日中、お腹がすいたとブツブツ言っていたルカが占拠しがっつくのをマル―シャが笑いながらたしなめているといういつもの光景が広がっていた。


アルはその様子を少し離れた場所でキール酒を飲みながら眺めていたのだ。


「アルセルド様、こんなところで何をされているのですか? シアフィスの森でランシェルド様が仕留めた猪の肉を召し上がらないのですか? ルカリオ様がすごい勢いで召し上がってますからすぐになくなりそうですよ」

アルが振り向くと、そこにはサミュが立っていた。


「あまり食欲がなくてな。少し腹に入れたからもう十分なんだよ。お前こそどうしたんだ? しっかり食べておかないといつ何が起こるか分からないぞ、俺達は戦争しに敵国にきているだからな」


「はい、でも僕、あのこういうにぎやかなのは少し苦手でして」

頭をかきながらいうサミュにアルが隣に据わるよう促した。


「そうか」

アルはそう言うと雲間から見え始めた星を眺めた。サミュもアルに近づき横に腰をおろし星を見あげた。


「なあサミュ、空の星はラールシアから見るのと変わらないな」


「そうですね、星達はいつも雄大で変わらず輝き続けている。あの星達に比べたら、人間の一生なんてほんの一瞬のことなのでしょうね。それなのにその短い一生の中で人は争いばかり」


そこまで言ったサミュは突然だまりこんでしまった。

しばらく沈黙が続いて突然サミュは立ち上がり真剣な表情でアルの前に立ち頭をさげた。


「あのアルセンド様! お願いがあります。僕もこの次のバルデ城攻めの部隊に同行させてもらえませんか?」


アルは驚いた顔をして暫くサミュの顔を眺めてから反対に聞き返した。

「お前は何歳になったんだ?」

「はい十五になりました」

「まだ十五か…死に急ぐ必要はないんじゃないのか」


アルはそれだけつぶやくと無言になり首を横に振って視線をそむけた。それをみたサミュはさらに言葉を続けた。


「今朝スーリア王妃様がお亡くなりになられたことをお聞きしました。王妃様は以前僕に教えてくれました。人の一生にはそれぞれにいろんな悲しみや辛いことが起こるものだけど、その悲しみの渦に飲み込まれちゃいけないって、いろんなことを乗り越えた者には必ず神様のご褒美があるものだって。王妃様はたかが訓練兵の僕にでも優しく声をかけてくださっていつも励ましてくれました。僕に何が出来るかわかりません。こんな僕では、皆様達と行動を共にするなんてことは足手まといなのはわかっています。だけど…僕にも役にたてることがあると思うんです。やっぱりどうしても無理でしょうか?」


サミュはそう言うと、視線をそらし下を向いてしまった。


「お前は最前線で戦うということがどういうことかわかっているのか? バルデ城襲撃の部隊に加わるということは明日命が消えるかもしれないということなんだぞ」


「わかっています! 覚悟はできています。それに、こんな僕じゃ足手まといなのもよくわかっています。でも…ランシェルド様やマルーシャス様のおそばで一緒に戦いたいんです」


サミュは真剣な表情でアルをじっと見すえて答えた。

アルはしばらく考えているようだったが軽く溜息をついて答えた。


「そうか…わかった。覚悟が出来ているんだったら何もいうことはないな。俺も気持ちは同じだ。ランドには俺から報告しておくよ」

「ありがとうございます。僕頑張ります!」


ようやく笑顔をみせたサミュをみてアルもつられて微笑み返した。


「俺達にできることは、早くフィスノダに勝利することだけだな」

二人は雲間から見える星屑を眺めながら、笑顔のスーリア王妃の姿を懐かしそうに思い起こし暫く風に吹かれていた。


明るく振る舞うマル―シャ、そしてそれ以上にお茶らけてマル―シャと笑いながら兵士たちの笑いの中心にいるルカもまたスーリア王妃の死を悲しんでいた。

だが、涙はなかった。あるのは決意ただ一つ。

いよいよそれぞれの想いを胸にラールシア国とフィスノダ国の最終決戦へと突入していくことになる。


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