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モビレの砦②

お昼が近づいてきた頃、続々と集まってきている報告を聞きながらアルがルカに言った。


「なあ、おかしいと思わないか?」

「何がだ?」


「侵入者は何がしたかったんだろうな? 厩舎以外はどこも燃えるものなんてさほどない場所ばかりだ。馬を焼けばこれから行う戦略にはかなりのダメージを受けるがあんな吹雪の中行動を起こさなくても数日前ならカラカラでよく燃えたんじゃねえのか? どうして昨夜だったんだ? 昨夜はすさまじい吹雪で外は今じゃ一面白銀の世界だしな」


「そう言われればそうだな。しかも侵入経路は不明のまま、どこから侵入したのか全くわからない」


「ふあぁぁ…はあ…こう眠いとやってらんねえなあ…腹も減ったし、まったく誰だよこんな事仕掛けたやつは。いい迷惑だっての、こんなことをして何の得になるっていうんだ。燃やしちまったら。後で使おうとしてもつかえねんじゃないか」

ルカは机に足をのせ天井を仰ぎつつ、大きなあくびを何度もしながら言った。


「そうだな、ただのバカの仕業か、もしかしたら警告のつもりなのかもな」

アルの眠そうにしながら窓から外に視線を向けた。


「警告か…あいつが戻ってきたら実行する予定の例の作戦のか、だが、あの計画はまだ計画が途中で本決まりじゃないだろ。軍本部からの命令もまだ届いてないしな」


「そうだな。俺の思い過ごしかな、単純にフィスノダの奴らがここを奪い返しに来ただけかもしれねえしな」


二人がそんな会話をしていると、再び兵士の一人が飛び込んできた。

「ご報告いたします。砦の監視塔の者が砦にラールシア軍の旗を付けた荷馬車と共に、ランシェルド指揮官らしき人物がこちらに向かってきてるそうです」


「そうか、ようやく戻ったか!」


ルカが立ち上がって窓を開け下の砦の門を見下ろしていると、兵士が付け加えた。


「それが、お一人ではなく、マル―シャス様もご一緒のご様子です」


「なんだと! マル―シャも戻ってきたのか? まったく、あいつ何考えてるんだよ。こっちに来ている状況じゃねえだろうに」


ルカがそう言うと、アルが無言のまま部屋を飛び出して行った。

「おい待てよ」


慌ててルカも部屋を飛び出した。

二人が参謀室を出て、砦の正面の頑丈な門が開かれている場所にかけおりると、既に多くの兵士たちが集まってきていた。


二人は彼らをかき分けて前に出ると、目の前にランドと並んでマル―シャが手を振って笑顔でこっちに来るのが見えた。


ルカが走りだすと、マル―シャが愛馬のレアから降りてルカに向かって同じく走ってきた。

マル―シャはルカに勢いよく飛び込んだ。その拍子にルカはマル―シャを抱き留めながら後ろに倒れ込んだ。


「もうルカ! きちんと受け止めてよね」


マル―シャは笑いながらペシッとルカの胸の辺りを叩きながら後からおいついたアルの手を借りて起き上がった。


「マル―シャ、大丈夫なのか、戻ったりして」


「あら大丈夫よ、私は第一部隊所属の兵士なのよ、個人的な理由で脱退なんかしないわ。任務は最後までやり遂げるのが私の信条なんだから」


「いててて、まったく体重が増えてるんじゃねえのか」

頭を押さえながら起き上がったルカにマル―シャは舌をだして言い返した。


「あ~らごめんなさい、昨日の夜あなたのお腹に入る予定だった干し肉をお腹いっぱい食べちゃったからかしらね」


「なんだと! 俺が徹夜で消火作業をしていた時にお前は俺の大好物を勝手に食べていたのか!」

「い~だ」


二人がにらみ合いを始めると、アルがランドに近づき、昨夜の騒ぎの報告を早速ランドにしているようだった。


「そうか…犯人のめぼしはついている。もう大丈夫だろう。若干の作戦変更があるからこの後作戦会議だ」

「わかった。ところであれはどうするんだ?」


アルが話し終わって横を振り向くと、大きな輪ができていて、その中心ではルカとマル―シャが笑いながら足元に昨夜の間に降り積もっている雪を丸めてぶつけ合っているのだ。

それをえん護するかのように他の兵士たちも参戦し始めて、雪合戦状態になっていた。


「たまにはいいんじゃねえのか、今後のことを考えると息抜きも必要だ。あいつはあいつなりに覚悟を決めて戻る決断をしたんだ。俺達はあいつの決断をただえん護するだけだ」

「そうだな」


アルはそれ以上は何も聞かなかった。

二人がラミド城に滞在している間にスーリア王妃の死は既にラールシア全土に広まっていた。

アルもまた目の前で笑ってルカと話しているマル―シャを見て、自分の母親が死んだという事実を受けとめながらも、城に留まることをせず、再び笑顔で戦場に戻る決断をしたマル―シャの決断を受け入れ、何としても守りぬくという決意を新たにしたアルなのだった。


「おいアル、俺達も参戦するか、この砦を制圧して、あいつ食ってばかりで運動不足気味だろうから俊敏性を鍛えてやらないとな」


そう言うとランドはマントを外すと、雪合戦状態化している輪の中に入って行った。


「まったく、俺達は今戦争しているんだけどな」

アルは笑いがらもランドの後に続いたのだった。



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