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モビレの砦①

時は少しさかのぼる。ランドたちがシアフィスの森を抜けてモビレの砦を目指して出発した頃、モビレの砦にいたアルとルカが眠れない夜を過ごしていた。


既にスーリア王妃の死は早馬で伝わっていた。

だが先にラミド城を出発しているはずの二人が一向に到着する気配がないことに、少なからず二人の身の安全を心配していた。


「まさかマル―シャもすぐに戻ってくるなんてな。きっと本調子ではないからゆっくりこっちに向かっているのだろうが、大丈夫なのかな」

ルカが言うとアルも頷きながら言った。


「はぁそうだな…大丈夫じゃねえだろうな」


「なあ…だけどさっ、俺達もずいぶん変わったと思わないか。こうしてさ、似合わない指揮官補佐なんかやっているんだからさ。戦いが起きなかったら今頃はただの貴族社会ではみ出し者でしかなかったかもしれないな。つまらない貴族制度に嫌気をさしてながら何もしないでイライラばかり募らせてさ」

「いえてるな」

二人は顔を見合わせて同時に笑いだした。


「なあ、覚えているか? 俺達が訓練兵として城の寄宿塔に住み始めた頃、毎日学業と訓練の連続で嫌気がさし始めてさ、ランドと三人で剣の練習をサボって城内の庭園で昼寝していたらさ、スーリア王妃様にみつかって、王妃様がランドと勝負した事あったよな」


「そんなこともあったな、確かあの時王妃様が圧勝したんだったよな」

ルカが天井を見ながら言うと、アルも懐かしそうに答えた。


「あの時からだよな俺達が真剣に訓練するようになったのは」


「そうだったな…今の努力が未来の自分を作る。懐かしいなあ、俺達少しは成長したのかなあ…もっと訓練しとけば戦争ももう少し早くに決着をつけることができていたのかもしれねえな。はぁ…マル―シャに比べたら俺達の心の痛みなんか小さいだろうけど、やりきれないな」

「ああ…」


二人が昔を思い起こして暫く沈黙が続いていた時、ふいに外が騒がしくなってきた。

「アルセンド様、ルカリオ様大変です!」


突然、兵士の一人が血相をかえて二人の部屋に飛び込んできた。

「どうかしたのか?」


二人は枕元の剣を手に持ち飛び起きた。

「厩舎が炎に包まれています」

「何? すぐに鎮火させろ!」


「現在総出でとりかかっていますが驚いた馬たちが砦のあちこちに逃げ出して興奮して暴れて収集がつきません」


「わかった俺達もすぐ行く。お前は砦にいる全員を起こして、他の場所に火の手があがらないか徹底して見回りを強化させろ!」


アルが言うと兵士はすぐ出て行った。

二人は部屋の外に飛び出した。塔の外では兵士達が必死に消化活動をしていた。

幸い発見が速かったのかそれほど被害が大きく済んだようだが、全ての馬を外に出した為に興奮した馬たちを捕まえるのに多くの兵士たちが夜明け近い砦の内部で走り回っていた。


その後、全ての見回りが完了させ、数カ所に火を付けようとしていた形跡を発見したようだったが、全て未然に防ぐことができたようだ。


ただ侵入者は見つけることができなかったようだ。

夜明けすぐ、夜中の吹雪が嘘のように晴れ渡っている砦の外では燃えた厩舎の撤去作業や、見回りの徹底など再度行われ、その報告がアルとルカの元に続々と届き始めていた。



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