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専門家(前編)

食事を終えカフェを出ると、もう外はすっかり夜となっていた。

空には雲一つなく二つの月が輝いているのがよく見える。


「目的地は向こうだ」

そう言って先生が指し示すのはゼールカラ南側の大通りだった。


魔導都市ゼールカラは東西南北に向けて十字状に大通りがある。

北は魔導学校、東と西は別な街へと向かう街道につながっている。それに対して南は魔物や魔獣の生息している広大な森への道だ。


利用する人に偏りがあるせいか、それぞれの大通りで特徴があり、北は主に魔法向けや学生向けと一部の高級品などの店が立ち並び、南の通りには一般向けの生活用品など、旅する人に関係ないものがメインとなっている。

東西の通りは、冒険者ギルドをはじめ、宿屋や転移門などの大きな施設や旅人、冒険者を対象としたお店が多い。


中央広場は市場となっていて野菜や魚介類など様々な食品を扱っている。



私自身、まだ街をちゃんとみて回った事がないので、名前を知っていても何をしているところなのか詳しくない。

転移門とかは利用料が高くてとてもじゃ無いけど一般人は利用できないとか、噂を聞くぐらいだし、ギルドも依頼を受けたり頼めたりするという程度の認識しか無い。



大通りには魔導具で作られた照明が等間隔で設置してあり、今の時間帯になると道路を明るく照らしてくれている。人通りがまばらになった静かな夜の街という見慣れない景色に少しワクワクしまう。


といってもそう大きな変化があるわけもなく、閉店し始めているお店を横目に見ながら

中央広場を通り過ぎ、南通りを歩く。


魔導書が意外にも静かにしているのは少し不気味だが、うるさいよりはマシなので特に気にしないことにした。


「専門家ってどんな人なんですか?」

夜の景色を堪能した私は、今から会う専門家について先生に聞いてみる。


「うーん、頭は良いが変な奴だな。あとは…おとぎ話に出てくる勇者の末裔とか言ってたな」

先生は困った様子で言葉を絞り出していた。


そんな感じでたわいもない話をしながら歩いていたら、ゼールカラ南の門が間近に迫ってきた。


「こっちだ」

そこで先生が脇道へと入っていく。


入り組んだ道を進んでいくとそのさきに、とても立派だったと思われる教会が建っていた。

草木が生い茂り、壁には苔が生えている様子は、手入れがされていない事が明白だった。

ただ、街灯の明かりが届かない暗闇の中に、月明かりと共に現れたその光景は、なんとも言えない不思議な魅力に満ちていた。


先生はその光景を特に気にした様子も無く、教会の扉を開け中へと入っていく。


『教会とは懐かしい物があるな』

そんな魔導書の言葉も気になったが、とりあえず呪いを解くのが優先だ。

私も先生の後を大人しくついていくことにする。


教会の中は、外とは違ってちゃんと手入れがされているのか汚れ一つ見当たらなかった。

入り口からみえる椅子に一人の男性が座って本を読んでいる。


銀髪を肩口まで伸ばし、ローブの様なゆったりとした服装のせいかとても知的な印象を受けた。


その男性が目線を上げ、立ち上がる。

「来たか。その子が噂の子かい?」


「そうだ。旧友を深めたいのは山々だが、早速本題に入らせて欲しい」

そう答える先生。


「ちゃんと先生をやってる様で何より。詳しい話を聞こうか、とその前に自己紹介ぐらいはしておこう。アオキの学生時代からの親友のシロガネだ。呪いや魔法陣を専門としている。よろしく」



頭のいい変な奴と聞いていたが特に変わった感じはしない。

多少緊張しながら私も自己紹介する。

「クロミヤヨゾラです。よろしくお願いします」


自己紹介の後、そのまま今日あった事の説明をした。二度目の説明ということもあり、特に問題無く説明を終える。



「ふむ、隠し部屋に、しゃべる魔導書、仮面の人物と、それに魔導書に体を操られた。正直、にわかには信じられないな。人に憑依して操る魔法に関しては、聞いたこともない」

考え込むシロガネさん。


「本当なんです。操られた時に魔王なんて名乗っちゃうし」


「魔王…」


「おい、それは聞いてないぞ」

アオキ先生が呆れた様子で呟く。


「その…てっきり魔導書の嘘だと思って…言う程の事じゃないかと…」

正直色々あり過ぎて忘れてたと言うのが大きい。


「他に言ってない事はないだろうな?」

アオキ先生が確認してくる。


「他は大丈夫なはず…です」

何か伝え忘れてる気もしたが、気のせいだと思う。うん、きっと大丈夫なはず。


「とりあえずは魔導書を調べてみよう」

そう言ったシロガネさんにいまだにぐるぐる巻きの魔導書を手渡し、見てもらうことに。



しばらくするとシロガネさんが顔を上げる。

「どうですか?」

何かわかれば良いのだけど、期待を込めて聞いてみる。



シロガネさんは難しい顔で答える。

「おそらくだが、離れられなくなった原因は魂の一部がお互いに封印されているからだろう。最初に触ったタイミングで魔王の一部がヨゾラさんの体に残り、ヨゾラさんの魂の一部が魔導書の残った。その状態で再封印がされたみたいで術式がかなり複雑に絡み合っている。正直、封印を一度完全に解除しないと治すのは難しい」


「この封印は解けるんですか?」

嫌な予感はするものの、聞かないわけにもいかない。


「少なくとも今すぐには無理だ」


そんな絶望的な言葉に私はショックを隠しきれなかった。


思ったよりも各内容が多かったので前後編になりました。次は7月30日予定

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