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act.36_天才軍師、策を練る

「ばかといわれてもソーナとジュリー様を護るよ。そして、できれば依頼人がほんとに安心できるように、問題を解決してやりたい」


ララは何度か頷いてからソーナの肩に手を回す。赤面したまま戸惑うソーナを抱き寄せて、そっとハグする。

う、美しいぜ……。コリー犬に愛を注がれる悪魔っ子。絵になるな。


「うまくいくように力を貸しましょう? 私たちはパーティじゃない」


「そ、そりゃあそうだけど……」


「私は協力するわよ」


「う、うーん……。なんだか、はぐらかされているような……」


「仲間だろ、ソーナ?」


「あんたは黙ってなさい」


「仲間でしょ? ソーナ」


「うーん、まぁ、ララがそう言うなら……」


ララならいいのかよ。


「うふふ、ありがとう、ソーナ。大好きよ。では決まりね。それで、どうするつもりなの? カナエ?」


「あ、なんか余韻がないわね……」


「おお、うん」


俺は気を取り直して、道々考えていたことを2人に話す。


勝利にはグレードがある。大勝利か、ただの勝利。

ここでただの勝利とは、2日から3日間、ええい、この際3日間だと思おうじゃないか、3日間、ジュリー様を無事に護り、教会からの回答をもらって城外まで送り届ける。

兵士やモウラが傷ついたり、教会からの返事がいいものじゃなかったとしても、これは最低限の勝利だ。いわば、冒険者としてだけの勝利だな。仕事は果たしたぜ、っていうやつだ。


次に大勝利。

これはようするに、この3日間ですべて問題が解決して、みんな笑顔で「また会おうぜっ!」ってなるパターンだ。

ゴッザムトはバルバステラから手を引いて、教訓を得て、もう手は出さねーよ、2王子は廃嫡だ!ってなったりする。ジュリー様とモウラは帰りにお茶でもして、何かトラブルあったっけ? おぼえてないわぁ、それよりカナエ様ステキ!大好き!今夜いっぱい愛して! とかってなっている。

もちろん、俺たちと南門兵士も無傷だ。

ついでに相談を受けた教会の方も、まぁ腐食のガマィンが死んじゃったか行方不明だか、戦意喪失してしまったが、バルバステラもゴッザムトも納得しているから、問題ないよ。冒険者カナエ、恩人だ、名前を覚えておこう、みたいな。

衛門督ダキシャラももちろん俺の靴を磨くようになる。ううん? ダキシャラ君、靴磨きが板についてきたね……あ、指紋をつけるなハゲ! みたいな。いや、禿げてないが。


負け。

負けは負けだ。それ以上でも以下でもない。

誰かが傷つき、ゴッザムトが高笑いする。ジュリー様はサインポール兄弟の側室になってしまう。

俺たちは教会からも貴族からも追われる身。王都には二度と来られないな、みたいな。


まぁ負けのことは考えてもしょうがない。

なにがどうなってそうなるかなんて、今は考えている時間がない。その時々で、これはやばいってのを避けていこうや。


ということで、大勝利のことに専心しよう。

大勝利こそ俺にふさわしい。みなも拍手喝采するだろう。あ、変な意味じゃないよ。

何の偏見もないけど、宗教的なことはなにもないんだぜ。


まず、ゴッザムトがバルバステラから手を引くにはファクトとしてなにが必要か。


1,青絹交易において、バルバステラを糾弾する理由がなくなる

これは、まぁバルバステラが発行したとかいう免許を、その商人から取り上げればいい。

まぁ、難しいんだろうな。それができればもうやっている。

できないからこうしてジュリー様がライフストリーム教会まできている。


2,ゴッザムトが青絹交易から手を引く。

よくわからんがさすがの俺も2日3日でこれができるとはおもわんね。


3,ゴッザムトがバルバステラに手を出すのは良いことないって理解する。

これだな。サインポール兄弟の弱みを握って、実家に突きつけてやる、とか。

……ゴッザムト公爵領ってどこにあるんだろうな?

商隊の奴隷である俺にはそんな情報すらない。


仮にだ、ゴッザムト領が馬で1日でいけるところにあるとしようじゃないか。まず、弱みを握るのに1日、馬を走らせて1日、公爵が証拠を突きつけられて日和るのに半日、馬が帰ってきて1日。両王子が萎えるのに半日。

……だめじゃん。あり得ない速度で物事が運んでも、ぜんぜん間に合わない。しかもその間いくらでも襲ってくるな。


4,皆殺し

できるか?俺に? そりゃあ、この世界ではやくも人を殺してしまっている。盗賊とはいえ……、まてよ、殺めてないわ。うん、殺めてない。

盗賊に襲われたとき、俺がシャーリーで攻撃したのは鳥トカゲでした。はい。盗賊は死んでなくて、あとからオースンがとどめを刺したのでした。よって俺は人型の生き物を殺していない。

あー、で、その俺に敵の戦力をみんなやっつけるとか……、無理だな。冗談きついわ-。はい却下。


5,撤退

まてまてまて、負けてるじゃん。


6,誰か別のやつがゴッザムトを潰す

いいね、こういうアイデア、俺は好きだよ。

だれが腐食のガマィンをやっつける? カトーとオースン? どこにいるかわからんな。

メリィラとザキチュナ。あいつらガマィンと同じウィタ騎士じゃん。そしてやはりどこにいるか知らない。


……


……


テニスと糞女神。

おーい、使徒が困ってんだけど? ゴッザムトをこの世から消してくれ~?


……


……


鉄芯のロシャーナ・ウィンディア!

だから、そいつもウィタ騎士だっての。むしろ襲ってくる方じゃん。


……


……。


よく考えたらこのやり方は汚いな。スマートじゃない。むしろサインポール的なやり方だ。

俺はもっと正々堂々とやり合いたいね。


7,……


……


……。


よくわかった。ゴッザムトはこの際、置いておこう。

ねらいはむしろ腐食のガマィンだ。


戦は6割勝つのがちょうど良いって、小○館の偉人「武田信玄」にも書いてあった。

本当にそんなこと言ったのかな? 何割とかって概念あったのか?

まぁ、それはともかく、言いたいことはわかるよな。

勝ちすぎると、恨みを買う。恨みは恨みを呼び、いずれ我が身に返ってくる。


そうだ。

大勝利ってのは善し悪しだぜ。


よって腐食のガマィンを潰す。

そうしてゴッザムトの戦意を低下させよう。

ガマィンがやられたら、サインポールは手駒がなくなる。

あいつらアホだから、たぶん自分自身の戦闘能力もなくて、たちまち公爵に泣きつくだろう。

そして公爵は「こいつらにやらせていて大丈夫か?」って思うようになる。

両王子はどこかに幽閉とかされて、公爵家と侯爵家は一時休戦。


うん、これだな。


つぎに、腐食のガマィンの倒し方だが……。


あいつらが頼っている最大戦力。百傑百柱に名を刻む戦士。

得物は不明。戦い方は不明。正直、性別も不明。どこにいるかもわからない。ほんとにいるかもわからない。

とにかくやっつける。

わかったか! これで俺たちの勝利だ!


……


……。


そうだそうだ、俺たちを見張っている冒険者がいるんだったな。そいつを特定して、見張りの交替のときに後をつける。

ボスであるデブの冒険者ガイだったっけ? あいつのいる場所か、あるいはガマィンのいるとこまでいくだろ。

まず、そんなようにして敵のアジトをみつけようず。


俺は考えを整理してソーナとララに説明する。心配は無用だ、かいつまんで話したから、ちゃんと俺の賢さが伝わったはずだ。


「いい計画ね」


と、ララはあっさり承認する。えっへん。俺は鼻高々だ。


「だれが後をつけるの?」


ソーナはあくまで不満そうだ。


「もちろん、僕が行く。僕には見張りの存在を感じ取ることができるし、いざとなったら相手の攻撃を避けまくって撤退することも可能だ」


「アジトを見つけてどうするの? みんなで襲うとか?」


「正直言って、それはそのときに考えるしかない。公爵邸にあるかもしれないんだからな、敵のアジト。そんなときは引き返してきて、みなで方策を練ろう。そのぐらいの時間的余裕はあるはずだ」


「あんたが敵の見張りにやられちゃったら、私たちとしては知りようがないんだけど」


「それはリスクとしてあるね。だけど、運命を切り開くとはそういうことだよ」


俺は胸を張ってかっこつける。

ソーナは気に入らなさそうに怒った表情を浮かべている。


「奴隷が勝手に死んだら、私がカトーに叱られる」


「ソーナは僕を信じてくれよ。あまり長い付き合いじゃないかもしれない。だけど、僕にすこしでもウィタの導きのようなものを感じてくれているのなら、僕のやることを信じてくれ。リスクはあるけど、僕は殺されやしない。そういう気がするんだよ。直感でしかなくて、うまく説明できないけど、必ず、うまくいく。これで終わりなんて、ありえないだろ」


ソーナは表情を変えずに窓の外を見たりする。眉間にしわを寄せて、両腕で胸を抱くようにする。俺のこと、心配してくれてるんだな。それくらいわかるさ。

だが、これはおれにとってもやらなきゃならんことだ。

俺はたぶん、死なない。相当むちゃをしても死なない。


強いからじゃない。そんなように仕組まれているからだ。


そのことを確かめたい。


「大丈夫だ。すぐに始めるつもりだから、ジュリー様にも話しに行くよ?」


「私もいくわよ?」


と、ララが言うが、俺はそれを断る。

3人でぞろぞろ行って、警備をおかしくさせるわけにはいかないだろ。階下から物音がしたら、俺たち冒険者が真っ先に駆けつけなきゃならんからな。


うん。

ここに残るソーナとララだって、戦闘に巻き込まれる可能性は高いんだ。俺とガマィンは行き違うかもしれないし、そうでなくても別働隊が宿屋を襲ってくるのはいつであってもおかしくない。

うむ。行動は早いほうが良い。

兵は拙速を尊ぶ。


そんなわけで、俺はジュリー様のいる角部屋のドアをノックする。

名乗るとモウラの声で「入れ」と応答がある。


ドアを開けると女の子の匂いが部屋に充満している。

あ、このまま朝まで滞在したいところだ。もっとむんむんに体臭を立ち上らせながらな、俺たち3人でっ!


だがしかし状況はそれを許さない。


よくわからんけど満足そうに俺を見ているジュリー様と、怪訝そうに見ているモウラを前に俺は計画を説明する。

計画って言っても、決まってるのは敵の見張りを見つけてアジトまで追跡するってだけだがね。

それでも味方の1人が集団を離れるんだ、状況の大きな変化だわな。


「反対だ。やめろ」


モウラはにべもなく拒否する。


「いえ、やってみましょう。私はカナエにかけてみたい」


と、間髪いれずにジュリー様が賛成する。

モウラは何か辛そうにジュリー様を見る。ですが……、と、再考を求めようとするが、ジュリー様はそれを最後までは聞かない。

ジュリー様、マジイケメン。

わかった。子を成そう。たくさんつくろう。

三日三晩でも愛し続けるぜ。2人でだれも到達したことがないくらいハイになろう……。


「きさま、なにをにやにやしているっ!」


モウラが俺の心を読んだかのように怒りをぶつけてくる。

いや、ちがった。自分の反対が退けられて、モウラはいらいらしてるんだな。


わかった、モウラ。君とも子を成そう。3人でだれも到達したことがないとこまで上り詰めよう……。


モウラが身震いをする。


「な、なにか背筋が凍るような邪気が……」


邪気じゃねーよ。ダイゴウイン無邪気だぜ。いやいや、ともかくだ。ジュリー様は賛成のようだ。ここはモウラにも退いてもらわないと。


「モウラ、聞いてください」


「なんだ。まだ言いたいことがあるのか」


俺は一呼吸置いて、2人を交互に眺める。



          to be continued !! ★★ →

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