第88話 イース公国攻略編 調印式と拳闘大会
ベリカの部屋は隣の隣に決まった。
間にはネネルの部屋がある。
その日は夕食を一緒に食べた。
アーキャリーとラムレスも一緒だ。
ベリカは食卓に紙とペンを置き、俺の質問に筆談で答えた。
声が出なくなったのは、幼少期に高熱を出したかららしい。
始めはおしとやかで気品があると思ったが、
どうも少しおっとりでぽわっとしているようだ。
ぽわっていうのは表現が難しいが、
まぁ不思議ちゃんと言うのがしっくりくるかな。
それでも美人過ぎて緊張する。
二人きりだと会話のテンポに困るので
アーキャリーとラムレスがいてくれてよかった。
特にアーキャリーは持ち前の天真爛漫さで遠慮なく次々質問したり、
勝手に喋ってくれる。
非常にありがたい。
食事中にベリカは横笛と絵が得意ということが分かった。
一か月後。
調印式をノーストリリア城で行うことになった。
今度は俺達がイースに赴くのが礼儀だが、
今キトゥルセンを手薄には出来ない。
それはギャインも了承済みなので今回はいいだろう。
今日は誉めて信頼関係をよくしておくつもりだ。
一応中身は38歳だからさ、
最低限の人間関係構築方法ぐらいは習得してるよ。
今度は認めてあげて安心させる。
下げてから、上げる。
これさえやっとけば当分は大丈夫だ。
調印式の後、催し物として拳闘大会を開催することになった。
イースからの提案だ。
キトゥルセン、イース両国の選りすぐり兵をトーナメントで戦わせる。
親交を深める娯楽試合……だが多分併合に反対する一派のガス抜きとか、
こちらの戦力を把握しておきたいとか裏事情もあるのだろう。
それともザサウスニアの密偵が結構な階級まで入り込んでいて、
こっちの戦力を知りたいとか?
まっそれでもいいよ、ノってあげる。
この一か月の間に外縁の森に闘技場を作った。
広場には一般国民も多く詰めかけた。
屋台が並び、辺りはお祭り騒ぎだ。
キトゥルセンからの参加者は立候補で参加者を募り、バルバレスがまとめた。
参加者リストにはバルバレス、マーハント、ミルコップ、ダルハン、
ボサップ、ベミー、キャディッシュ、ユウリナ、
アーシュ、アルトゥール、ルレの名前があった。
「ユウリナ出るのかよ。誰も勝てないだろ」
「はい、どうしても出場したいと申されて。
私もユウリナ神には逆らえないもので……
何かを試したいと言っていました。
しかし、頃合いを見て離脱すると言っていましたので……」
「うーん、それならまあいいか。
それにしても戦うの好きすぎるだろ、あいつ。
ていうかさりげなくアーシュって書いてあるけど……大丈夫?」
「こちらも本人がどうしてもというもので。
体調が戻っていればググルカ族の実力は折り紙付きです。
私が保証します」
バルバレスは自信満々に言った。
昔から知ってるみたいだからな、バルちゃんの事信じよう。
ちなみにクロエとネネルは圧倒的だから参加権はない。
本人たちも出る気はなさそうだった。よかったよかった。
VIP席の上質な革張りソファーに座って開会を待つ。
リーザはじめメイド達がワインや果物を持ってくる。
「向こうはどうだ?」
「ギャイン様はアイスクリームに感動していました。
今の所とても満足しているようです」
よしよし。グルメ人にはウケがいいだろう。
「引き続き頼むよ」
俺の両側にアーキャリーとベリカが座った。
クロエ、リンギオ、ダカユキー達6名が背後に立ち、他の10名は廊下に待機。
大狼も3頭入り口付近にお座りしていた。
いつの間にか護衛兵団の紋章が入った黒いハーネスを付けている。
入隊したの?
いいけどさ。給料とかどうなってんだろ。いい餌貰えんのかな。
ていうかはたから見たら姫を両側にはべらして、俺嫌な奴に見えるなぁ。
「アーキャリー、ベリカ、席替えしようか」
理由を説明したら笑って納得してくれた。
そんでリンギオ、ダカユキーを両側にしてみた。
むっさ……。そして濃い……。仕方ないさ。
後ろにはギルやベアーロなど大臣達も並び、ウルエスト城主シーロも来た。
「お、ここですな。いやースゴイ賑わいですぞ。
ノーストリリアの半分は集まってるんじゃないですかな、はっはっは」
ラムレスがポップコーン片手にトーナメント表を持ってきた。
いいな、それ。どこの屋台で売ってたんだろ。
キャラメル味とかないかな。ああ、コーラ飲みたくなってきた。
イース公国からの参加者は5名。
ミーズリー、ギバ、ソーン、ギング、バハラと書いてある。
バハラは王族の用心棒、それ以外は全員軍人らしい。
トーナメント表はこんな感じだ。
第一試合バルバレスvsボサップ
第二試合ミルコップvsバハラ
第三試合ダルハンvsベミー
第四試合ミーズリーvsキャディッシュ
第五試合アーシュvsルレ
第六試合ユウリナvsギング
第七試合アルトゥールvsギバ
第八試合マーハントvソーン
開始の花火が上がる。
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