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第84話 クロエの日常

どうも、私は【王の左手】、クロエ・ツェツェルレグ。


本当の名前はただクロエってだけなんだけど、


書類やらなんやらに苗字がいるから自分でつけてみたんだ。


ツェツェルレグの森には嫌な思い出が多いけど、


幼い頃、母と過ごした場所でもあるから。


今日はネネルと訓練をしに外縁の森に行く。


ネネルは軍団長なので最近忙しそうだ。


魔人同士にしか分からない感覚の話が出来るのは正直救われた。


やっと理解者が現れて、だいぶ心が晴れたんだ。



ネネルとよく話しているのは


「どうやったら最小のエネルギーで最大の攻撃を出せるか」だ。


オスカーみたいな魔剣使いや私たち魔人はとてつもない力を持ってはいるが、


いざ力を使うとすぐにスタミナが尽きてしまう。


何度かの実戦で痛感した。このままではいつか死んでしまう、そう思った。


「クロエの場合はさ、氷の大きさを小さくしてみればいいんじゃない?」


自らの手を放電させながらネネルは言った。


「氷の砲弾は威力があるから小さくても十分強力だと思う。


小指の先くらいで試してみれば?」


「なるほど、やってみる」


ネネルと訓練してみて分かった。私はどうも無駄に力を入れてしまうようだ。


盾も壁くらい大きくて分厚くしてしまうし、地面から氷柱を出すときも無駄に大きい。


考えてみれば相手の足が凍るくらいの少量でいいのだ。


盾も氷の層を圧縮できれば薄くても固いのが出来ると思う。


新技の氷吹雪も一回で相当疲れてしまうし。




何もない空間の空気をぎゅっと固めるイメージ。


そして体の内側からエネルギーを掌に集めーー弾く!


訓練用に土を盛って作った壁に、ボッと穴が開く。


連続で撃ってみる。命中精度は以前よりも上がっていた。


1分、2分、3分、まだ疲れない。5分撃ち続けて息が切れてきた。


「いいじゃない、クロエ。あーあー、土が凍っちゃった」


以前の3倍は長く持った。


「次は私ね」


ネネルは手のひらに電気を集めた。


バチバチと放電が凄かったので私は少し距離を取った。


気付けば周りの木々の陰から数十人の兵士が覗いていた。いつのまに。


「放電もレーザーももう改良できないから、私は次の形に挑戦しようかと思うんだ」


「次の形って?」


ネネルの放電が収まった。ただ強い光が右手を覆っている。


「……雷の剣」


ネネルの手の中で光がぐにっと伸びた。それはみるみる短剣ほどの長さになる。


ネネルの額には凄い汗が浮かんで、辛そうだった。


光る剣は時々放電するも形を維持していた。


しかし、ネネルの手が小刻みに震え始めるとバリッと弾けて掻き消えてしまった。


「はぁはぁ……だめか」


「いや、凄いよネネル。無形の物に形を持たせるなんて。


私が氷じゃなくて水出すようなもんなんじゃないかな」


「そうかな」とネネルは笑った。


ネネルは褒められることに慣れてないようだ。




訓練後は城に戻り、食堂で昼ご飯を食べた。


キャディッシュとリンギオもいた。


「あれ、オスカーの警護は? いいの?」


「ああ、ネネル様。こんな所で会えるとは! 危険な目には遭っていないですか?


何かあったら仰って下さいね!


元【三翼】として、私は今でもあなたのためにこの命を捧ぐつもりです!」


「命を捧げるのは王子だろうが」


リンギオはぼそりと呟く。


「また君は……確かにオスカー様の護衛だけど、あの人魔剣使いだぞ?


僕らより遥かに強いじゃないか」


「だったらネネルも魔人なんだから守らなくてもいいだろ。


しかも雷出せて飛べるなんて王子より強いだろ」


「ぐぬぬ」


「話聞けよ、お前ら」


私たちのやり取りを聞いてネネルは吹き出した。


「仲いいね」



今日は遅番なので午後は仮眠をとる。


私にあてがわれた部屋はオスカーの部屋の正面。


大きな部屋をいくつかに区切って改装された2人部屋だ。


同居人はリーザ・ベリサリカというメイドの女の子。


今は仕事中なので私一人だ。


どこからか大狼のギーがやってきて、ベッドに潜り込んできた。


せ、狭い。けどもふもふで幸せだ。



遅番はあまり好きじゃない。


オスカーの部屋の前、もしくは同階の廊下に一晩中いるのだが、


夜番のメイドの嬌声をずっと聞いているのはあまり気分のいいものではない。


特に今晩のリーザなんか、翌日部屋で気まずいのなんのって。


それにずっと聞いていると変な気分になってくるし。


オスカーもいくら子供を残すのが仕事だからって、少しは自重してほしい。


……私は嫉妬しているのだろうか?


でも、最初は嬉々としていたオスカーの顔も、


最近日によって疲れてる顔の時がある。


私はその顔を見るのが好きだ。

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