第78話 ケモズ共和国攻略編 宴~名剣30選の話~
ダンジョン攻略から数日後。
ケモズ共和国、東の町、シギロにてささやかながら戦勝会が行われた。
レニブ城は魔物により事実上の陥落。
ケモズ軍が復興に当たり、俺たちもダルハン軍300名を派遣した。
活躍したボサップ軍には休暇を与えた。
町長の館にはウテル王と王妃に挟まれたアーキャリー姫や親族の羊人族、
豹人、狼人、牛人、兎人など多種多様な獣人たちが集まっていた。
キトゥルセン王国からは今回救援に駆け付けた部隊の上層部だけ参加した。
怪我人は国に帰し、無傷の兵士達はシギロの酒場に繰り出している。
ここは海に近いので、食卓には魚料理が多く並んだ。
カルパッチョや香草焼き、フライなど、どれもうまい。
立食形式で、楽団が音楽を奏で、笑い声が絶えなかった。
ユウリナはエネルギー補給シナキャと宣言してから食べまくり、
クロエも感動して目を丸くして食べまくり、
ベミーも漫画みたいに食べまくり、そこだけ大食い大会みたいになっていた。
俺たちの所に町長がやって来た。ここは彼の館だ。
取り敢えず床や柱などを褒めてみたら上機嫌になった。
髭の長い町長はルレの帯刀しているブロッキスに興味があるようだ。
話してみると昔は武器商人だったそうだ。
「ベミーからお話を聞かせて頂きました。
おお、これが〝巨狼のシュペロン〟が晩年作ったという作品ですか」
「見ますか?」と言ってルレが鞘から剣を抜いた。
「素晴らしい。この曲線のくせ……間違いなく彼の……ああ、ほらここにサインが。
このにぎりのくせ、鍔のくせ……なんてくせがすごいんじゃ。このくせこそ彼の特徴……」
大分興奮していた。ルレと顔を見合わせる。笑いを堪えるのが辛い。
「ブロッキスはウルティア名剣30選に選ばれている貴重なモノ。
いったいどうやって手に入れたのですか?」
「これは部下のなんですよ。ちょっと今借りてるだけで、どこで入手したかまでは……」
「そうですか。それにしても珍しい……売れば1億リルはするでしょうな」
ルレはビクっと一瞬だけ身体を震わせた。
マジかい。売っちまえ、ルレ君。
「これシボのなんです」
シボ……思い出した、シボ・アッシュハフ。マイヤーと一緒にいる所に出くわしたことがある。
アッシュハフ家はイース公国出身の名家。高価な剣の入手先くらいあるのだろう。
「ちなみにだけど、魔剣だと売ったらいくらなんだ?」
興味本位で聞いてみた。
「えー確か当時50~100億リルで取引されていました。
そのフラレウムでしたら有名ですので200億はいくかと」
マジっすか? じじいマジっすか?
「まさかオスカー様、本気で言ってはいないですよね?」
「えっ? ああ、じょ、冗談冗談、王子ジョークだよ、あはは……」
一瞬、売っぱらって隠居している自分の姿が浮かんだことは口には出さない。
そしてルレはブロッキスを見つめたまま動かない。
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