第73話 ケモズ共和国攻略編 護衛兵団長の戦い
「いたぞ! こっちだ」
護衛兵団、ダカユキー・ヤーマ率いるヤーマ隊は、
アルウネア達の食料として攫われたレニブ城関係者4名を18層にて発見した。
全員が10代の子供だった。服装から貴族か王家の者だろう。
食べ物もなかったのだろう、皆衰弱して危ないところだった。
兵たちの携帯食料を分け与えると、貪りつかんばかりの勢いだった。
ダカユキーには4歳になる息子がいる。
自分の息子と重ねてしまい、思わず涙が出た。
「団長?」
部下の声に涙声で答える。
「すまん、息子がいるから」
ここは入り組んだ細い通路で、機械蜂によると危険はなかった。
なので二手に分かれ7名で来た。残りは大きな通路で待機中だった。
子供たちが食べ終わり、本隊のもとへ向かう。
薄暗い通路は小さな緑色の光が道しるべとなり、
足元に転がる障害物を照らしてくれた。
「大昔は凄かったんですね。何がなんやらわからないけど、
この作りを見る限り凄かったってことは分かりますよ」
「そうだな。この壁なんか鉄じゃなさそうだが鉄より堅そうだ。
火ではないのに光るものも仕組みがわからんし」
「そんな文明でも滅ぶときは滅ぶってのが、俺は怖いっす」
「そうだな、何で滅んだんだか……」
団長たちの会話を聞きながら、隊列の最後尾を歩いていた若い兵士は、
ふと、壁の隙間で何かが動くのを見た。
何だろうか? 地下ダンジョン固有の生き物だろうか。
その若い兵士は生き物が好きだった。
目を凝らしてみているうちに、仲間は先に行ってしまった。
あたりは静寂に包まれた。
剣を差し込む。抜いた剣先に黒いドロッとしたものがついていた。
「ん? なんじゃこりゃ……」
これは……魔物の体液?
何かが動いた。
その瞬間、黒い手が顔を掴み、若い兵士を引きずり込んだ。
「あれ、一人いないぞ」
「なに? 探してこい」
二人の兵士が通路を戻る。しばらく進み、先ほどの兵士がいなくなった場所で足を止めた。
「ん? これは……あいつのか?」
足元にはキトゥルセン軍の剣が落ちていた。
後ろでカシャンと音が鳴った。
二人して振り向くと曲がった鎧が通路にあった。
続いて手甲、兜、盾……次々と落ちてくる。
全て曲がり、濡れていた。
天井から長い手が伸び、一人を掴む。
「うわっ!」
もう一人は壁に空いた穴に引きずり込まれる。
「ひぃっ!!」
一瞬の出来事だった。通路はまた静寂に包まれる。
ダカユキーの足を掴んでいる子供が怯えてた。
「なんだ、どうした? 俺たちがいるからもう平気だぞ?」
「どうしました? 泣いちゃいましたか?」
部下に大丈夫だ、任せておけと言った時、子供が顎を震わせながら口を開いた。
「黒い人、黒くて細い人いっぱいいる……」
「……黒い人?」
はっと殺気を感じたダカユキーは身を翻して剣を一閃、
床の通気口から伸びてきた長い腕を切り落とした。
部下が呼ぶ。
振り向くと通路の奥に細長い人影。
そいつは手を地面につけ、四足歩行で走ってきた。
ダカユキーの背筋にブアっと鳥肌が沸いた。
「戻るぞ、走れ!」
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