第68話 ケモズ共和国攻略編 アルウネアの襲撃
ルレの剣の柄に填められた光石が光った。
豹人の攻撃を普通の人間が腕力で耐えられるのなんて3秒が限界だ。
しかし、ルレの剣の光で豹人の狂戦士化が徐々に収まってきた。
よし、よく分からんがいい傾向だぞ。
豹人は凶暴なフォルムを解き、通常時の姿に戻った。
戻った途端、荒い呼吸でその場に膝を付いた。
「……ルレか。助かった、ありがとう」
力を使いすぎてくらくらする。
「いえ、当然のことです。それよりオスカー様、大丈夫ですか?」
「ああ、力を使いすぎただけだ。……今のはなんだ? なんで元に戻ったんだ」
豹人に目を移す。やっぱりよく見るとかわいい。
ショートカットに大きな目。そして思ったよりも猫耳が破壊力抜群だ。
ボーイッシュで活発なスポーツ女子って感じ。
「ケモズ共和国の〝十牙〟か?」
「……そ、そうだ」
息が荒く起き上がれないようだ。危険はないと判断して俺たちは剣を収めた。
「なぜ俺たちを襲う?」
「ごめん。アレやると衝動が抑えられないんだ」
ルレ隊の兵士たちが倒れた【王の左手】たちを介抱する。
3人とも意識は戻り、ひとまず安心した。
ユウリナもあの程度じゃ壊れないと思うが、放電したからかまだ再起動しない。
耳を寄せるとボディの内部からシュィィィィンと小さく駆動音が聞こえた。
うん、コイツはほっときゃいつか目覚めるだろ。
「……なあ、その剣、どこで?」
この顔面レベルで口調は少年……いい!
「借りものだ。僕のじゃない」
「……それは【巨狼のシュペロン】が鍛えた剣だ」
「……伝説の魔剣使いか」
「もうだいぶ前に亡くなりましたよね」
「たしか余生は刀鍛冶として生きたと書いてあったな」
「……【ブロッキス】」
「ん?」
「その剣の名だよ」
「魔剣か?」
「いや魔剣じゃない。その石は獣人の狂戦士化を抑える効果があるんだ。
シュペロンも獣人だったからな。
それより……あの人たち、死んでないよな?」
「安心しろ。大丈夫だ」
「ていうかお前誰だ?」
「……そっちから名乗れ」
猫耳少女は少しムっとした。
「……ベミーだ。豹人族戦士団長で、ケモズ共和国〝十牙〟の一人だ」
「俺はオスカー・キトゥルセン。キトゥルセン王国の王子だよ」
「ッッ!! 嘘だろ……。なんでこんなところに」
「おたくの王から救援要請があったんだ。他の〝十牙〟はどこに……」
その時通路の奥に魔力を感じた。すぐに千里眼で確認する。
「どうしました?」
そこにいたのはこちらの標的、アルウネアの親玉だった。
「来るぞ!」
まさか【腐王】自ら来るとは。
クロエたちはまだ頭を抱えて横になっている。
その時、何かが脇を通り抜けた。白い影がいくつも飛んでくる。
「ぐえ!」
「うわっ! なんだ?」
兵士たちに当たったようだ。
もう一度千里眼で見てみると、アルウネアがこちらに何か吐き出している。
俺たちの迎撃態勢が整う前に、離れた場所から白い砲弾を放ってきたのだ。
ベチャ! ベチャ! と次々兵士に当たっていく。
「ぐあ!」
「うぐ!」
白い砲弾は粘着質の糸で出来ていた。当たった兵士は壁に貼り付けになっている。
俺は通路の暗闇に向かって火球を連続で放った。
しかし、自動小銃の如く、敵は糸の砲弾を撃ってくる。
直撃しなくても触れた部分がとりもちみたいにくっついてしまうため、
短時間で多くの友軍が行動不能に陥った。
「あ、やばい」
ルレは半身を白い糸の塊にうずめていた。
「うっ!」
横の兵士が直撃を喰らった。そのまま俺の方に倒れてきて、一緒に呑まれる。
片足が糸に埋もれてしまった。
「くそ! うわ、きも……」
凄い吸着性でまったく身動きが取れない。
【王の左手】の三人も既に白いベチャベチャに捕獲されていた。
……ん? なんだ?
もがいていたら急に眠気が襲ってきた。
周りを見ると大半の兵士たちが意識を失っている。
「しまった……」
この糸に強力な催眠効果があると気付いた時には、既に眠りに落ちていた。
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