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第50話 ウルエスト王国攻略編 王国併合

ウルエスト王国の反乱は成功し、エズミア女王は失脚した。


処遇はシーロ暫定国王と王妃マリンカに任せられる。


女王勢力の主要メンバーは恐らく羽を切り落とす


【羽落ち】の刑になるというのが大方の予想だ。


羽を無くし人間のように暮らすというのは有翼人にとっては極刑に近いらしい。


被害は予想よりだいぶ軽かった。何と言っても反乱軍の存在が大きい。


ウルエスト軍の半分が寝返り、国民の大半もそれを支持した。


それだけ前政権に不満を持っていた人が多かったのだ。


正規軍の兵士もすこぶる士気が低かったとユウリナが言っていた。


すぐに投降したり逃亡して敵の前線は非常に脆かったらしい。


つまりエズミアの求心力はほぼ皆無でいつ崩れてもおかしくなかったという事だ。


まぁ実の娘を兵器として操る精神性の持ち主だから国の運営も大方想像出来る。


それと予想だがユウリナが前線にて、


戦闘形態で暴れまわっていたからというのも大きいと思う。


敵から見たら手足がたくさんある得体のしれない化物で、


矢も火も効かないのだから。


ユウリナのおかげもあって、キトゥルセン軍は楽に攻略出来たらしい。


バルバレスなんかは久しぶりの実戦で楽しみにしてたのに、


物足りないといった顔をしていた。まったく、軍人の鏡だね。



ネネルはマリンカ軍の医術師に治療してもらった。


右腕には裂傷、翼は半分焼け焦げ、数か所の軽いやけど。


事後処理は任せ、俺はずっとネネルの傍にいた。


姉のマリンカも頻繁に顔を出していた。


ネネルが目を覚ますまでの間、姉妹の昔話を話してくれた。


初めて聞いたネネルの過去。


王位継承権が無いと言っていたので、何か込み入った事情があるのだと思っていたが、


まさかこれほどの辛い幼少期を過ごしていたとは。


すやすやと寝息を立てて眠るネネルを見て、改めて愛おしさが生まれた。



夜。


城の食堂や大広間ではキトゥルセン軍とマリンカ軍が勝利を祝って宴をしていた。


楽しそうな声や音楽がここまで届く。


持ってきてもらった夕食を食べていたら、ようやくネネルが目を覚ました。


「……ん、あれ? ここは……」


「ネネル。おはよう」


「えっ! オスカー? どういうこと?」


「ここはウルエスト城だ。何も覚えてない?」


上半身を起こしたネネルは頭を押さえた。


「ウルエスト……いてて……うわっ怪我してる……」


俺は事の顛末をゆっくりと話した。


「私……操られて……母上に……」


半ば放心したままネネルは涙を流した。


母親に裏切られたんだ。相当な辛さだろうな。


知らせを聞いたマリンカが飛んできた。


「ネネル!」


マリンカは入ってくるなりネネルに抱き着いた。


「マリ姉……」


二人は抱きしめ合いながら静かに泣いた。



朝方、リンギオという男に会った。


医術師に傷の手当と薬を処方してもらって容態は安定したみたいだ。


死にそうだったのに、一晩でここまで回復するなんてとんでもない体力だと医術師は驚いていた。


「身体は大丈夫そうだな」


「王子……すまなかったな。俺が余計な事をしてしまった……」


筋肉質でワイルドな男は寝たまま謝罪した。


「気にするな。お前が何もしなくても、あの女王はいずれ暴発していただろう。


で、これからどうする? このままウルエストで治療するか? 


それともキトゥルセンに来るか?」


リンギオは目を瞑った。


「……俺は元々どこにも属していない。属す気も無かった。


……けどあんたらは俺の命を救ってくれたしな。それにここにはいたくない」


素直じゃないな、こいつ。


「なに笑ってんだ、王子様よ……」


「いや、何でもない。リンギオ、俺の軍に入らないか? 


あの大雪蛇を一人で倒す奴なら大歓迎だ」


「……お誘いは嬉しいが、俺は群れたくないんだ」


なんだ、人見知りか。


「じゃあ護衛でも諜報員でも役職は作る。これも縁だ。来てくれないか?」


「……考えておく」


壁は多少取れたかな。あと何回か誘えば多分来てくれるだろう。



中庭でバルバレスがカカラルの翼を治療していた。


横でウルエストの医術師が頭をひねっていた。


「人は分かるが魔獣は……」


だろうね。


「バルバレス。どうだ?」


「おはようございます。オスカー様。


傷口は焼き切れているので腐ることはないでしょう。


ただ、筋を切っているらしく、右翼がほとんど動きません。


もしかするともう飛べないのかも」


俺も【千里眼】で見てみた。確かに一番重要な筋や筋肉が焼き切れていた。


「ドウシタノ? カカラル?」


もっちゃもっちゃと謎肉を食いながらユウリナがやって来た。


説明すると「ソンナコトカ」と言い、バルバレスに謎肉を渡した。


べちょっと鎧に汁がついて、バルバレスは何とも言えない表情だ。


ていうかバルバレス、酒臭い。


ユウリナはカカラルの傷口に指を入れたり、


自分の腹を開いて何かを出したりしている。


3分ほどして「デキタヨ」と振り返った。


カカラルは嬉しそうにカカカッと鳴いて翼をバサバサした。


「奇跡だ……さすがユウリナ様」


バルバレスは泣きそうな勢いだった。


「筋組織ヲ有機繊維デ縫合シトイタ。血管モネ。ソノウチ自己組織デ埋マルデショウ」


ユウリナはバルバレスから謎肉を奪い、どこかへ行ってしまった。


神かよ。あっ神か。……神なのか?




大陸中央部のとある有翼人国家に罪を犯した者が集まる流刑地があるらしい。


今回の女王一派は全員【羽落ち】して、そこに送られるそうだ。


ただし投降した兵士や臣下たちは審議の上、【羽落ち】は免れた。


一定期間の強制労働ぐらいで手を打つとマリンカは言っていた。


俺は見届け人としてその場にいることになった。


「母上……私は何年も前から忠告していました。


その時に心を入れ替えてくれれば、こんなことにはならなかった……」


マリンカは辛そうだった。


「私が支配者よ! 私の思い通りやって何が悪いのです?


皆は付いて来ればいいだけなんです! こんな簡単な事、なぜ出来ないのでしょうか」


うん、絶対に理解し合えない場所にいる人だな。考え方の土台がそもそも違う。


長期間病んでいた人の特徴だ。


「国は国民のものです。王族のものではありません。


これ以上話しても無駄なので【羽落ち】の刑を実行します」


縛られた女王一行は18名。玉座の間に一列に並んでいる。


「ネネルは? ネネルはどこにいるの? 


あの化物が有罪じゃなくて、私がなぜ有罪になるのです? 


あの子が悪いんです。 あの子が生まれてくるから……」


大声で喚き散らし、エズミアは泣き出した。ネネルがこの場にいなくてよかった。


「エズミア元女王」


俺は一歩前に出た。


「ネネルは俺の国で幸せに暮らす。あんたと違い国民に愛され、尊敬され暮らす。


……何が原因だったのか、何を間違えたのか、この先の人生で気付くことを願うよ」


エズミアは「離しなさい」とか「言う事を聞きなさい」など泣きながら叫んだ。


俺の言葉を聞いていたのか疑問だが、どうでもいい。


モラッシュは青い顔であごが震えていた。俺と目が合うとさっと逸らした。


「構え!」


マリンカ軍の兵士が罪人一人一人の後ろに立ち、剣を振り上げた。


「落とせ!」


玉座の間に白い羽が舞った。



昼過ぎ、マリンカとシーロから申し入れがあった。


「併合?」


場所はネネルの病室だ。


「ああ。この国は今回の事で疲弊した。


それに君たちの力をまざまざと見せつけられたら、


一つになってしまった方が国のためなんじゃないかと思って」


「今回の事で私たちの距離が近づいたのは事実でしょ? 


革命を助けて貰った恩もあるし、何よりあなたが統治者なら、うまくいく気がするわ」


「そちらがいいのなら構わない。……お互いの足りない部分を埋めていこう」


ネネルは嬉しそうな顔をした。


「ネネルもあなたに懐いてるようだし」


一気に顔が赤くなる。


「なななな懐いてなんかいないわよ! 何よ、人を猫みたいに」


マリ姉は昔からいつもそうやって……とブツブツ言いながらそっぽを向いた。


シーロはそんなネネルを見て笑った。


複雑な想いはあるのだろうな。


肉親同士の覇権争いなんてこの世界じゃ普通に起こることだ。


でも、過ぎた事は過ぎた事として、この3人は前に進もうとしている。


俺に出来ることは傍にいてあげる事くらいだ。


俺はそっとネネルの手を取った。


「ネネル、これからもよろしくな」


急な事にびっくりした様子で、顔を赤らめて目を泳がせながらも、


ネネルは小さく「……うん」と頷いた。






数日後。今回の出来事は大陸中に広まった。




大陸南部、某国


城が燃えていた。その周りには壊滅した軍。数は1000人を超すだろう。


その城から続く小道に黒装束の男たちがいた。


「魔剣ないじゃん! すごい無駄骨」


「まあいいじゃねえか。小国だけど敵対してる国だったんだろ? 


詳しく知らねえけどさ。それに久々にいい運動になったし」


同じく黒装束の大男はガハハと笑う。そこへ一匹の伝書鳥がやって来た。


「おい、クガ。お前のだろ、その鳥」


「ん? ああ」


クガは鳥の足の筒から紙を取り出す。


「なになに……お、やっぱりきたかキトゥルセン!! 


ウルエストを落とすなんてやるなあ。有翼人は手強いのに」


「キトゥルセン? 聞いたことねえ国だな。なんだよ随分うれしそうだな」


「ああ、この国の王子は僕と同じ匂いがするんだよ」


二人は森へ入っていった。もうすぐ夜が来る。




イース公国


国家元首ギャイン・ゼルニダと側近たちは海の見える部屋で恒例の会議をしていた。


「マルヴァジア共和国からの情報によりますと、


ザサウスニア帝国は南部の軍から数千人を北部に移動させたようです」


「くそ! いずれ北部に攻めてきますぞ」


「キトゥルセン王国が落ちれば次は我が国!!」


「同盟を組むべきか、いっそザサウスニアに付くか……」


「それはならん! 我らは元はキトゥルセン王国の一部じゃないか」


白熱している会議室に一人の伝令兵が入ってきた。


伝書を一人の側近が受け取り、中身を読む。


「キトゥルセン王国がウルエストを併合……」


「なに! 本当か」


「……あの王子に掛けてみるべきか……」


ギャイン・ゼルニダはぼそりと呟いた。





ザサウスニア帝国北部の要所、ムルス大要塞


赤銅色に光る竜の鱗を模した鎧を皆が避ける。


ザサウスニア軍のその将軍は急造している要塞の最上階を歩いていた。


「受け入れ態勢は出来たか?」


「……げ、現在8割ほどは完成しましたが、千人規模となると時間が……」


将軍は剣を抜き、報告した兵士の首を落とした。


「使えぬ奴め。ここに来てからイライラしっぱなしだ」


将軍はテラスに出た。伝書鳥用の止まり木に3羽の鳥が止まっていた。


一羽の足から文を取る。


「なに~? また国を大きくしやがったのか、あの王子め!」


将軍はその情報を持ってきた伝書鳥を握り潰した。





オスカー達はまだ知らなかった。


キトゥルセン王国の一挙手一投足を見ている者が、世界中にいることを。

いつもお読み頂きありがとうございます。


第一章はこれで終わりです。


タイトルとあらすじを変更するか迷ってます。


どちらにしても、引き続き、お読み頂ければと思います。

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