表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/323

第45話 ウルエスト王国攻略編 ノーストリリア城の戦闘

円卓会議にはラムレス、モルトが座っていた。


議題は国民の衛生水準の見直しで、


病気やケガの回復率をいかに上げるかについてだった。


「つまり、強い酒には消毒効果があるという事ですな」


モルトはメモを取りながら真剣な顔つきだ。


「そうだ。だからあんまり城の酒を飲むなよ?」


「これは手痛い……さすがオスカー様。なんでもご存じで」


苦い顔で笑ったモルトにつられてラムレスも豪快に笑った。


その時、背筋にぞわりと悪寒が走った。


同時に、王の間の天井が崩れる。


「大丈夫ですか! オスカー様! 護衛!」


真上ではなかったので被害はなかった。


割れた天井から現れたのは有翼人の兵士たちだった。


銀の甲冑に羽の生えた小隊が下りてくる。20名はいるだろうか。


縛られた人間を連れている。あれは誰だ?


「こんなところから失礼します、オスカー王子」


隊長らしき人物が手を広げながら頭を下げた。芝居がかった動きだ。


最後に降りてきたのは人の倍はあろうかという化物じみた有翼人だった。


ダカユキーたちと共にユウリナ、クロエが王の間に入って来る。


「ラムレスたちは下がれ」


「し、しかし」


「早く行け!」


有翼人たちは完全武装していた。


「何だお前たち。ウルエストか? 戦争をしたいのか……」


ん? ……あれは……嘘だろ?


でかい化物を見て思考が止まった。


「……ネネル! まさかネネルなのか!」


人の倍の大きさで、羽と同じ白い毛が腕や足まであり、まるで鳥のようだった。


胴体は人間のまま、鉄の下着をつけているだけだ。


髪は白く伸び、同じく目も真っ白。手足は肉食獣のように大きく爪も鋭い。


どこからどう見ても野獣だった。


「ネネル……ギカク化シテシマッタノネ」


ネネルはこちらを見ても表情を変えなかった。


「私はモラッシュ。エズミア・ラピストリア女王の側近です。


今回、あなたの兵士が女王のペットを殺してしまった件について、


相応の対価を払って頂くために訪問致しました」


「ペットを殺した?」


「ええ、この兵士です。ダルクを併合しましたよね?」


「……ああ」


「違う、俺はどこにも属していない……」


縛られたダルク兵は瀕死で喋るのもやっとのようだった。


「まだ言うか!」


モラッシュはダルク兵の腹を蹴った。


その時扉が勢いよく開き、バルバレスが部下を率いて王の間に入ってきた。


「オスカー様! ご無事で?」


25人ほどの兵士が玉座の前に陣取った。盾を構え、剣は既に抜いている。


「あれは!?……ネネル様、ですか?」


「そうだ。ギカク化したネネルだ」


「敵……として認識しますよ?」


「……」


言葉が出なかった。


「あなたの国の国民が我が国の女王のペットを殺したと言っているんです。


どう責任を取るおつもりかを伺いたい」


「……ダルクの兵よ。この話は本当か? お前が殺したのは事実か?」


ダルク兵はこちらを見て、力なく頷いた。


「そうか……それならば謝ろう。すまなかった。


だが使者を送れば済む話じゃないのか?


金銭を払えば納得するようには見えない。


このような訪問の仕方は戦争をしたがっているとしか思えないな。


……それになぜネネルがギカク化している?」 


ネネル、意識がないのか? 


「ガキの癖にむかつく話し方をしますね。まあ、でもその通りですよ。


こちらも領土拡大したかったし、色んなタイミングが合ったので、丁度いいかって話でね」


モラッシュは切れ長の目をさらに細めた。


「……さて、前置きはここまでとして、死ぬか降伏か選んでもらっていいですか?」


「ふざけるな」


俺は魔剣を抜いた。


「ふふ、まあそうですよね」


有翼人兵士が前に出て、モラッシュは下がった。


「ネネル! 分かるか? 俺だ! これは自分の意思なのか? 


すぐに帰ってくると言ったのはこういう意味だったのか? 


それとも逆らえないのか?」


ぱちぱちとわざとらしくモラッシュは拍手した。


「ああ、すばらしい、愛の一幕。まるで舞台を見ているかのようです。


水を差すようで悪いのですが、無駄ですよ。


こうなってしまっては何も聞こえませんから」


ネネルが身体の周りに電気を出し始めた。バチバチを青白い光が走る。


一歩、ネネルが踏み出した時、横からクロエが飛び出した。


「クロエ、ま……」


氷の砲弾がネネルと周りの敵兵士に降り注ぐ。


「ぐああ!」


「うっ!」


床に崩れた敵兵は身体の一部が凍っていた。


「知り合いなのかもしれないけど、オスカーに危害を加えるなら容赦しない」


クロエは敵との中央に立ち塞がった。


ネネルも被弾した箇所が氷で覆われていた。しかし構わず右手を前に出し、電撃を放つ。


一瞬身構えたが、クロエが氷で壁を作って防いだ。


だが、氷を貫通してネネルのレーザーがクロエの肩を抉った。


「うぐっ!」


クロエは吹っ飛び、柱に激突した。


「クロエ!」


仰向けからうつ伏せへと何とか態勢を変えたが、起き上がることは出来なかった。


重症じゃなければいいが……。


その時、氷の壁が電撃で崩された。


ガラガラと崩れ去った氷の向こうにはネネルの顔があった。 


再びネネルがこちらへ手を向ける。


まずい、あんな電撃喰らったら皆一度にやられてしまう。


誰もが身構えた時、ユウリナのネット弾がネネルを包み込んだ。


「強度バツグンノカーボンネットヨ」


四本足になった戦闘状態のユウリナは、蜘蛛のように動きながら素早く距離を詰め、


ネネルによじ登り顔に向けてガスを噴射した。


「ヴウ……」


効いている。


「魔素中和剤ヨ。一時的ニ魔力ガナクナルワ」


「おいっ! ネネル! そんなつまらないものにやられるな! 殲滅しろっ!」


モラッシュのヒステリックな声に反応したのか、


ネネルは大きく腕を振り回しユウリナを吹き飛ばした。


円卓に突っ込み派手に転がる。


ネネルはもがき、すぐにネットを力尽くで引き裂いてしまった。


「ネネルっ! 分かるか? 目を覚ませ!」


俺の声に一瞬ネネルの動きが止まり、目が合った。気のせいか顔に表情が戻る。


「馬鹿がっ! 命令を聞け! 殲滅しろっ!」


しかし、モラッシュの一声でまた電撃を纏ってしまった。


くそ、やるしかないのか。


俺はフラレウムを両手で構え、火球を放った。命中と同時にズンっと建物が揺れる。


「ぐおおおっ!」


「ぎゃあ!!」


粉塵と炎が上がって見えなくなったが、後ろの敵兵は吹き飛ばした。それは分かる。


しかし、薄くなった粉塵の中からネネルがゆっくりと姿を現した。


無傷だった。


腕を伸ばし、こちらに向けた。絶望が流れる。


「ウオオオオオオオオ!!!」


バルバレスが向かっていった。兵士も続く。


「やめろ!!」


やめろ。勝てる訳ない。捨て身の攻撃なんか……。


ネネルと目が合った。一瞬瞳が揺れた気がした。


ん? 瞳……? 赤い瞳……。さっきは白かったはずだ。


視界一杯に光が舞い飛ぶ。次いで激痛。全身が一気に痙攣して筋肉が強制的に締まる。


閉じるまぶたの隙間に、全員が一斉に崩れ落ちる光景が映った。





灰色。これは床か。……生きてる。けど身体は動かない。


「ふう。まったく、手こずらせやがって」


気を失っていたのは一瞬だけらしい。足音が近づいてくる。モラッシュか。


頭を掴まれ、引き上げられた。


「分かっただろ? 魔人も魔剣もネネルには敵わない。


また来るからな。答えを出しておけよ」


床に叩きつけられ、そこで意識を失った。


「面白いかも」「続きが気になる」と思った方はブックマーク、評価頂けると大変ありがたいです。

執筆の励みにもなります。宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ