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第40話 訓練

今日は外縁の森にて魔剣の訓練をする。


ダルク、ノストラと俺自身の力じゃ勝ち切れなかったのを受けて真剣に考えた。


結局ネネルは死にかけ、ユウリナも壊れかけた。


今後はあってはならないことだ。


フラレウムの能力開発はずっと頭の中にあった。


訓練にはユウリナとクロエ、


そして周囲には護衛隊長のダカユキー率いる8名の兵士が散らばっている。


クロエは諸々の事情を考えると俺の近くが一番いいと思い、王都に連れてきた。


切断された左足は自分で氷の足を作って補っている。


成程、その手があったか、と感心した。


氷は固形だからいいよなー。


俺ももし手が無くなったら炎で手とか作れないかな。


だめか、触った物が燃えるか。


とにかくクロエの足は日に日にリアルな造形になっていた。


動きもほとんど普通の人と変わらない。


ゆったりしたスカートを履けば街に出ても誰にも気づかれないだろう。


今は丈の短い白いワンピースに青いショールを羽織り、革のブーツという恰好だ。


ひざ下の氷が少し見える程度で、遠目で見れば貴族の娘のようだった。


夏と言っても北の半島、さすがに薄着だと寒いだろうと思ったが、


氷の魔人という事で寒さには強いらしい。


露出度が高いのは彼女にとってはむしろ暑いということか。


髪を綺麗にし、化粧も少ししてもらったみたいで、


栗色のショートカットがよく似合っていた。


少し目が鋭く、それが見た者の印象に強く残る。


きつね系美女と言ったところだ。


事情の知らない王都の兵士たちには早くも人気らしい。


生活様式や食事に慣れるのにそう時間はかからなかった。


文字が読めなかったので、時間がある時にユウリナかメイド達に教わっていた。


元々あまり喋る性格ではないらしく一人を好んだが、


城の者とは問題無くうまくやれているようだ。


時間には正確だし、皿洗いなど自ら率先して動いた。


マイヤーには気に入られたようで、


養鶏場や農場まで一緒に卵や野菜を取りに行ったりしていた。


ロミとフミに耐性はあるだろうか。そこだけが心配です。



ここにきてからクロエの心は穏やかになっているように感じる。


雨風凌げる家、温かいお湯、美味しい食事、そして理解者。


クロエにとっては普通の事じゃなかった。


初めて一緒に夕食を食べた時、クロエは感動して泣いてしまった。


ありがとうございますありがとうございます。


そう呟きながら彼女は涙を流した。


もう、メンタル崩壊でギカク化することはないだろう。





木々の生えていない広間で俺はフラレウムを発動した。


今までの戦い方は効率が悪すぎた。


すぐに体力が尽きてピンチを迎えてしまうようでは、


命がいくつあっても足りない。


中火くらいなら自分の意思で炎を動かせた。


ならば細く短くすれば自由自在に動かせるんじゃないか、そう考えた。


まずは弱火。火炎放射レベルの火を剣の幅くらいに細くした。


いいぞ、楽になった。


そしてしなやかに動くイメージ。例えば鞭のように。


剣を振ってみる。炎がしなった。


もう一度。もっとしなった。


何十回も振っていたら、だいぶ柔らかく動くようになった。


ぐにゃんぐにゃんって感じだ。


次。


左手で炎の鞭を操ってみる。


右、左、上、下……うん、軽い。思った通りに動く。タイムラグもない。


動かすと鞭というか蛇だ。


まるで意思を持ったかのような躍動感だった。


炎蛇としか名付けようがない。


ださいなぁ、いやだなぁ。


「マルデヘビネ」


「オスカー、火の蛇出せるのか」


分かったよ、炎蛇と命名するよ……。


もう一つ試したいことがあった。


まずは弱火。そして中火。


「ほっ」


火力を一段階上げる時、少し力む感覚があった。


その感覚を思い出し、力を一瞬だけ入れる。


弱火から中火へ切り替えてすぐキャンセルするような感じだ。


「……出た」


剣先からバスケットボールくらいの火球が出た。


火球はそのまま十数m先の木に命中、燃え上がった。


「あ、まずい。火事になる」


駆け寄ってフラレウムに吸収させようと思ったが、


クロエが素早く氷の砲弾を放ち、炎を凍らせた。


おお! すごい!


「ありがとう、クロエ」


「これくらいなんでもないよ」


そっけないけど、彼女なりの精一杯ということは知っている。


それから一時間くらいで火球をうまく出せるようになった。


ちなみに放った火球は全部クロエに処理してもらった。


すまんね。



休憩してる時、ユウリナから身体にチップを埋めないかと提案があった。


ユウリナの体内で作った爪くらいの四角い機械。


物凄いオーバーテクノロジーだけど、もう今更何も驚かない。


互いの位置情報だったり、自身のバイタルチェックだったり、


魔力を数値化出来たりするという。


「バルバレスのも同じか?」


「アレハジッケン。拒絶反応ナイカドウカ調ベルタメヨ」


「お前……」


可哀相なバルちゃん。


「まあいいや。大丈夫なら入れてくれ」


ユウリナのことは信頼している。何といってもテクノロジーの塊だからな。


魔力とかよく分からんものより理解しやすい。


「私はいい……」


クロエは若干引いていた。まぁこの世界の人には抵抗あるだろうな。


バルバレスは十神教の神だから受け入れた訳で。


にしてもクロエ、そんな顔しなくても。


ユウリナの指がこめかみの上に触れ、皮膚が張るような感覚がした。


「デキタ」


「もう終わり?」


痛みはなかった。


「イマ極小ノ有機コードガ、視神経ト脳ノイチブニ伸ビテル最中ヨ」


すげえ。けど説明聞いてちょっと不安になってきた。


「ていうかユウリナ、声がなんか滑らかになってない?」


「身体ノ機能が50%マデ回復シタカラ。ア、クロエ、背中ニ氷ヲ」


クロエはユウリナの背中に手をやり、霜柱を立たせた。


「アー気持イイ。捗ルー」


変な機械ダナー。


そんなこんなでしばらくすると、視界にディスプレイが現れた。


「おわっ! なにこれ」


「出タ?」


スマホの画面のようなものが右端に出た。


ユウリナによると考えるだけで操作が可能らしい。


マップを開くと国の立体図とチップを入れている者の場所が表示された。


これはいい。千里眼でも見えるが、一目で情報が集約される。超便利。


ハートのマークを開くと心拍数、血圧、血中酸素量などが数値化され、


予想限界運動量が表示されていた。


今の俺の体力なら全速力で300m、持久走なら36㎞、


腕立てだと一分間に24回出来るらしい。


あくまで予測だが……ていうか俺の体力微妙!


最後に魔力。魔素というものが血液中にあってそれを数値化したらしい。


オスカー・キトゥルセン

フラレウム  総魔力量508。

予想使用可能回数  火炎放射50回、火球20回、火柱3回、熱波10回、炎蛇7回


ゲームかよ。 


508って基準がないから高いのか低いのか分からん。


クロエもやってくんないかな。




昼飯は兵士が町からフィッシュ&チップスとパンシチューを買ってきてくれた。


シチューの中身はチキンだ。


マイヤーに教えたのとあまり変わらないクオリティ。うまい。


やっぱりおいしい食が暮らしを豊かにさせるよね。


街に活気が出るよね。


目指せ食の都。


「お、美味し過ぎる……」


クロエは泣き出してしまった。


そうだろうそうだろう。俺が教えたんだからねっ。


というかクロエ、その癖そろそろ直そうか?


おい、ユウリナ。お前食べなくていいんだからバクバク食うなよ。


ぬぬ、すげえ力……さすが殺戮機械。


機械で食いしん坊ってどんなキャラだよ!


ああ、俺のを食うな! 


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