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第310話 魔剣キュリオス、発動

ウルバッハに斬られて倒れた俺の視界に、


傷の箇所が表示される。


痛みはあるが、すぐに引いていった。


特殊装甲のおかげで内臓まではいってないし、


どこからともなくやってきた機械蜂が、


すぐに傷を覆い、治癒を始めたからだ。


俺の機械蜂は全てザヤネに使った。


これはユウリナのか?


倒れて死んだふりをしていると、


首筋に注射を打たれた。


途端に体内から魔素が溢れてくる。


魔素増幅剤を打たれたのだ。


十中八九ユウリナのおかげなのだが、


なぜか通信が繋がらない。


その時、この空間の入り口に、


スノウ率いる二番隊が到着した。


『スノウ、目標は7体のウルバッハだ。


……やれ』


『了解』


脳内通信で密かに連絡を取ったスノウ達は、


連弩を構え、


前世の特殊部隊よろしく突入してきた。


「撃て!」


20名ほどが一斉に引き金を引き、


矢がウルバッハ達に飛んで行く。


カンカンッとボディに刺さるが、


誰が見てもダメージは与えられていない。


「そんなおもちゃが……


機械人に効くと思っているのか」


本体のウルバッハがそう呆れた時、


6体の予備ボディがバチバチっと放電、


一斉に膝から崩れ落ちて機能を停止した。


「なっ……!!」


スノウ達が放った矢の先端には、


ポルデンシスから渡された、


極小EMP装置が装着されていた。


機械人を殺るには機械人の技術が必要だ。


強力な電子攻撃を受けた予備のボディたちは、


あっけなく金属の塊となった。


「……こんな未来、見たことないぞっ!」


ただ一人となったオリジナルのウルバッハは、


狼狽えながらも、


飛んでくる矢を砂鉄の剣で叩き落とす。


そろそろか……。


少し離れた場所で、


バラバラになっていたクガの破片が、


一ヵ所に集まり元通りになった。


グロい、B級SF映画かよ。


俺はむくりと立ち上がり、


クガと同時にウルバッハに襲い掛かる。


クガの魔剣シェイクルーパの振動波を、


辛うじて避けたウルバッハに、


火球を撃ち込む。


以前とは魔素の濃度が格段に違うからか、


着弾箇所がドロドロに溶けた。


もはや火というよりも、溶岩だ。


俺とクガで波状攻撃を仕掛け、


ウルバッハは防戦一方となった。


時折レーザーや砂鉄の剣、


小型の炸裂弾などで反撃してくるが、


俺もクガも上手くかわし続けた。


スノウ達もしつこくEMP付きの矢で、


援護射撃してくれた。


その甲斐もあり、


俺はウルバッハの死角に回り込むことが出来た。


「もらったっ!!」


俺は魔剣フラレウムの刀身を伸ばし、


背を向けているウルバッハを一瞬で貫いた。


「なにっ!?……貴様っ!!」


抉られた穴から小さな火花が飛んだ。


「油断したな。


もう予備のボディはないんだろ?」


更にクガのシェイクルーパが直撃、


吹っ飛んだウルバッハの身体から黒い煙が出る。


どう見てもボディにガタがきている。


「……ソマチットを操れれバ、こんな傷瞬く間に治ルっ!


そして、お前たちカラ魔素を消シ、ただノ人間にしてヤルっ!


その時……コノ星は俺ノ意のまま二なルのだっ!!」


ウルバッハは叫び、


砂鉄の刃で四方八方を無差別に斬りつける。


防御と威嚇か。


「おい、いいことを教えてやる。


人生はな、そんなうまい事いかないもんなんだよ!」


俺は特大の火炎放射でウルバッハを包み、


駆け出した。


「数十年シカ生きていナい貴様が何ヲ言う!」


爆炎から飛び出した機械姿のウルバッハが、


ヒートブレイドで俺のフラレウムを受けた。


ボディの表面が熱で少し溶けている。


「数十万年生きてるくせに、


そんなことも気がついてないのか!


機械っつーのはあれだな、バカなんだな!」


その場で激しい斬り合いになった。


あらゆる角度から襲ってくる砂鉄の刃を、


熱波で殺しながら、


強力なバーナー状の魔剣で攻撃を加える。


既に暴走した機械兵器のような有様のウルバッハの身体に、


新たな傷が増えてゆく。


だが、やはり強い。


脳内チップの動作予測機能が無ければ、


俺はとっくに真っ二つになっている。


何度も冷や汗をかいたが、


自らの熱でその汗は一瞬で蒸発してゆく。


変幻自在の刃に、


予測不能の仕込み武器の数々。


刃に爆弾にレーザーに銃弾、


衝撃波に雷撃。


どれもギリギリで躱す。


動作予測機能もなく、


不死身の肉体を持つクガは


避ける癖がないのか、


何度かまともに攻撃を食らった。


運悪く、


その中に魔素抑制装置があったらしい。


血を吐いてダウンしてしまった。


「クガっ!!」


「クククっ……


お前モ同じ道ヲ辿るノだっ!!」


骸骨機械の化物のようになったウルバッハは、


自身の腕を変形させ10の細長い槍、


そして50を超える砂鉄の刃で、


一斉に攻撃してきた。


俺はより一層の魔素を込めて、


魔剣フラレウムを突き出す。


「炎ッ槍ッ!!」


炎の刀身から発生した炎槍は、


ウルバッハの攻撃の全てを瞬時に焼き消し、


その半身を溶かして、


背後の〝レンウィン構造体〟に穴を開けた。







アイリスが攻撃してくる直前、


強烈な火柱が二人の間に割って入ってきた。


さらに外から内部に、


ボロボロのウルバッハが吹っ飛ばされてくる。


その後にオスカーが入ってきた。


あれは……〝境壊〟。


魔剣の力が使用者の身体に宿った状態。


まるで太陽ネ……。


ユウリナは感慨深い想いになった。


自分が育てた力が、


今回もここまで大きくなった。


オスカーの身体は赤と白に光っている。


まさに炎の化身だ。


少し遅れてポルデンシスや、


リンギオたちも入ってきた。


「……ここは神聖な空間だ。


貴様らのような不完全な生物には消えてもらう」


アイリスの機械の触手が全員を狙った。


しかし、オスカーのフラレウムが一閃、


その全てを斬り落とした。


魔素と炎を凝縮した今のフラレウムは、


機械程度のものは一瞬で融解させることが出来た。


「……ぐっ! どういうコトだ。


ここへきテ〝球史全書〟トハ全く異なる展開ダ……」


バチバチと全身から火花を弾かせながら、


ウルバッハは這いずりオスカーから距離を取る。


ユウリナは見下ろしながら言った。


「〝球史全書〟は……


アなた達のミスリードを誘ウために、


私が作った代物ヨ」


「何を馬鹿なことヲ。


多少の誤差ハあれど、


大まかな道筋ハ符合してイタ。


アレは我らでも作れルものデはない。


適当なことヲ言うな」


ウルバッハは否定したが、


ユウリナは残念だけど……


と口元を耳に寄せた。


「……私ハあなたノ何百倍モ生きてルの」


怪訝な顔をしたウルバッハをよそに、


アイリスが再度攻撃を繰り出してくる。


「邪魔な連中だ。


もう私を止めることは出来んぞ。


あと数分後には、


この星中のソマチットを書き換える。


魔素という概念はなくし、


人類とそれに類する種族は、


軒並み死滅させてやろう。


火山を爆発させてもいいし、


津波を発生させてもいい。


ああ、種族が滅ぶ時ほど美しい時はない。


……今まで多くを見てきたお前たちも、


そうだろう?」


アイリスはユウリナとポルデンシスに問いかけた。


それと同時にアイリスは小さなボディを宙に浮かし、


背後にある〝根〟からガシャの結晶を取り出した。


パキパキと何千という破片が剥がれ落ち、


渦を巻いて襲い掛かってきた。


すかさずユウリナとポルデンシスが、


頭上の空間を停止させて防ぐ。


「機械人が空間干渉するかッ!!


明らかなオーバースペックだ」


「こっちはアなたを倒すためニ、


長い間準備してきたのヨっ!!」


二人は完全に戦闘体型に移行、


干渉空域を広げアイリスを包み込んだ。


「ヤメロォォォぉオッ!!」


ウルバッハが叫ぶ。


「そこにいなさい。


あなた達の野望が潰えるところを、


見てるがいいわ」


ウルバッハは腹から何かを取り出した。


「ナラバお前ら全員……!」


ユウリナが振り返って叫ぶ。


「戦術核ヨッ!!」


オスカーがその小さな球体を奪い取る。


「お前がやろうとしてることは大体わかる」


オスカーが自らの身体の中に核を入れると、


すぐに爆発した。


炎の身体が衝撃で多少揺れ、眩い光が漏れる。


お腹の辺りで大きな渦が発生しているが、


問題はないようだ。


「核エネルギーを包み込んでるの?」


ポルデンシスは驚いている。


「ああ、問題ない」


オスカーはそのままウルバッハの頭部を掴んだ。


「さて、お前はもういいだろう。


自らの野望のため、


たくさんの命を巻き添えにしたんだ。


報いを受けろ」


オスカーは手を白熱させた。


「クククッ……


お前ら全員もうスグ死ぬんダ。


せいぜい無駄ニ足掻くんだナ……」


強烈な熱を一気に浴びて、


ウルバッハはドパッと溶けた。


「残念。そうハならないワ。


リンギオ……お願い出来ル?」


ユウリナが合図すると、


リンギオが腰から剣を抜いた。


「いつでもいいぞ」


リンギオが魔剣キュリオスを発動、


アイリスの周囲の時空を歪ませた。


「どういうことだ、リンギオ。


お前、魔剣を持っていたのか?」


オスカーはじめ、


その場にいた全員が驚いていた。


「やっとここまでたどり着けた。


王子……後を頼んだぞ」


リンギオはオスカーに向かって微笑みかけ、


そしてサラサラと灰になって散っていった。


「リンギオッ!!!


おい、ユウリナ! 


これはどういうことだ!?」


ユウリナが手をかざすと、


落ちていた魔剣キュリオスが浮き、


その手に収まった。


「ごめンなさい、オスカー。


説明している時間はないワ。


私ともココでお別れヨ。


今回のアナタも、


よくやってくれた。


……ポルデンシス、行くワよ」


「いいわ。元気でね。


また会いましょう」


「おい、ちょっと待て……」


ユウリナはその場から飛び、


動けないアイリスの本体に、


キュリオスを突き立てた。



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