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第28話 マイヤー・ラトリウムの日常

おはようございます。


ノーストリリア城の料理番、マイヤー・ラトリウムです。


今日はオスカー様が街の繁華街や市場などを視察して回ります。


もちろん身分は隠してです。


一般庶民の恰好に身を包み、護衛の兵士も私服です。


護衛していると分からないように、無関係の人を装い、


オスカー様から少し離れた場所に計12名が散らばっています。


ただ皆鋭い目つきなので、分かる人には分かってしまいます。


今日はうるさいロミとフミはいません。二人っきりのデートです。


あ、今の娘可愛い。お尻触りたい。……失礼しました。


オスカー様と手を繋ぎたい衝動が凄まじくて、抑えるのが大変です。



ガラス瓶を量産したのでソースや酢漬け、オイル漬けなどが国中に広がりました。


保存食を作る方法も人づてに伝わり、商店には商品化されたものが並んでます。


今年の冬は食卓が彩り溢れるものになりそうですね。


外縁の森は伐採と建設が進んでいます。


街の通りからでも家と家の隙間から木が倒れるのが見えます。


様々な家畜の飼育場もずらりと並び、


数か月後にはこの通りにもお肉が溢れそうです。


南の方では農地を大幅に開墾したと聞きますし、


食材を扱う身としては今から胸が高鳴ります。


ついでにお酒の生産量も増やしてもらえるとありがたいです。


城の酒はネネルがすごい飲むので消費が早くて困ってます。


ええ、ネネルが。いーえ、ネネルが。断じてネネルが。あの羽だぬきが。


それにしても以前は食糧難で病気や餓死する者が多かったのに、


この数カ月で大幅に減りました。


オスカー様はどこであんなにたくさんの知識を手に入れたのでしょうか。


【腐樹の森】を焼き払う事に成功し、死んだネネルも生き返らせ、


もう神なんじゃないかと城内でも囁かれているくらいです。


実は私も本当に十神教の神々の一人なんではないかと思っています。


今屋台のパンを買って食べてます。


ああ、なんと愛くるしいお姿なんでしょう。今すぐむしゃぶりつきたい!


私は自分の美しさを知っています。街の男なら誰でも落とす自信があります。


しかし、なぜかオスカー様の前だと恥じらう乙女になってしまうのです。


これは恋でしょうか、これが恋ですね。この胸がキュンキュンする感じ、


まるでワインと間違えてビネガーを一気飲みしてしまった時のよう。


今の娘すごい巨乳! 揉みてー! ……失礼しました。



オスカー様は大変な美食家で料理人でもあります。私も料理人です。


ふらっと厨房に来てささっと見たこともない料理を作られた時は、


さすがに眉根を寄せましたが、食べてみてぶちのめされました。


旨味と甘みが効いていて、どれも食べたことのない最上級の味でした。


すぐに私は料理人として負けを認め、オスカー様を師として仰ぎました。


もちろん心の中でです。


ああ、この方の頭の中はどうなっているのでしょう。


解体して脳みそを食べれば分かるのでしょうか。


やだおそろしい。


まったくもって味覚も素晴らしいものなのでしょう。


オスカー様の舌を舐めまわしたら私も神の味覚を手に入れられるのでしょうか。


やだいやらしい。


生ハムをもしゃもしゃ食べて目を輝かせているお姿も素敵です。


大陸の中央で生産される貴重なオリーブオイルくらい輝いています。



市場に入ります。ここはイース公国やザサウスニア帝国の商人も訪れます。


目的の屋台に着きました。


屋台の中にはギル大臣とダルクという国から来たワグという少年がいます。


二人はオスカー様の命で、鹿肉サンドウィッチを売っていました。


ギル大臣には現場の経験を積めということらしいです。


あまり人と喋らない性格でしたし、高飛車な言動もしていたので、


社会の荒波に揉まれてこいという意図もあると思います。


命を受けた時は死にそうなほど嫌な顔をしていましたが、


今はどこか覇気があり、生き生きしています。


ワグちゃんは元兵士だそうですが、


剣より金の方が得意との事で、商売を学ばせているようです。


商品は一日200個の大反響で、レシピ作りに参加した私も嬉しい限りです。


うっわ、あの娘の生足たまんね~! ……失礼しました。


もう数日売って、集計を取り、鹿肉の加工工場を作って、隣国に輸出するのが目標です。


夢は広がります。



市場での売れ筋は鉄製品です。


オスカー様が指示した場所からザックザック地下資源が出ているようで、


王国には今じゃらじゃらとお金が入ってきているようです。


バブルだバブルだ! と先日オスカー様がご乱心しておりました。


バブルとはどういった意味でしょうか。


ムースの事でしょうか、メレンゲの事でしょうか。


そこかしこでイース公国の商人が店や屋台の主人と交渉しております。


イースは北東に位置する海辺の都市国家です。


大陸中央と船で取引している豊かな国です。


そこに特産品を卸せれば莫大な収益になるでしょう。


オスカー様の顔はいつになくニヤニヤしています。


そして目がリルになっています。


そういえばイース公国の姫たちはイースの五真珠と言われるくらいの美人姉妹だそうです。


でも多分私の方が美人です。なんぼのもんじゃい、です。


いつか会ってみたいものです。


もし私より美人なら顔の形が変わるまでぶん殴……失礼しました。



帰りがけに髪留めを買ってもらいました。


遠慮したのですが強引に買われてしまいました。


付き合ってもらったお礼だと。


そして私の綺麗な髪が好きだと言って下さりました。


全身が熱くなり、嬉しくて涙が出ました。


十も年下の男性にここまで心をかき乱されるとは思ってもいませんでした。



ラトリウム家は貴族ではありません。


昔々の王がたまたま先祖の料理を口にし、気に入られたのが王族の料理番の始まりです。


お給料はいいのですが、日々料理の試作で使ってしまうのでほとんど貯えはありません。


しくじれば首を飛ばされる時代もあったので気が抜けないのです。


先祖代々いつも気が張っていたので、


私のような、女でも欲情してしまう変態が生まれてしまったのでしょう。


きっと深層心理が抑圧されてうんぬんかんぬんと、


飲んだくれの医術師は言っていました。勝手にワインを開けるな。


でも普通の人より二倍楽しめるから私は良かったと思っています。


うっほ、あの娼婦2人組に挟まれてぬるぬる……失礼しました。


オスカー様は何も聞いていないのに好きに試作をしろと言ってくれました。


上限無く城が払うと。神様です。一生ついていきます。



結局手は繋げませんでしたが、いい思い出になりました。



城に帰ってからアーシュの専用食を作ります。


今日は芋をすりつぶしたミルクシチューです。流動食です。


今では大人しく私の運ぶスプーンを口に入れてくれますが、


初めの頃は関節を捩じられて首を掻っ切られそうになりました。


流石にその時は怖くてマジで漏らしました。


今は私の可愛いお人形のようです。早く回復してお喋りしたいです。



鹿肉のレシピ開発が成功したら褒美をやると言ったこと、


オスカー様は覚えているでしょうか。


メイドの夜番表にしれっと私の名前を書いてみました。


これが私の望む褒美でよろしいでしょうか。


あれ、マイマ、いつの間に横に? 


一瞬鬼かと思いました。鬼、と言って指差して笑いました。


冷たい。なぜ水を掛けられたのでしょうか? 


なんで縛られるのでしょう。興奮するじゃないですか。


あ、これはそういうプレイですね。マイマも中々積極的になったものです。


おお、外で! 誰かに見られてしまうかもしれないというドキドキがまたいいですね。


あれ、マイマは城に帰ってしまうと。


新しい! 


これはこれでたまらないですな、うひひ。


まあ下品な笑い方。


でも結構寒いです。


いや、この寒さがまた一段とそそって……


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