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第247話 古代浮遊遺跡編 〝ゴーレムキラー〟

1時間前


『準備ハいい? 


今からジャミングを開始しまス』


ネネル率いる先発隊の周りを飛んでいる、


特殊な機械蜂達が光り出す。


『これで敵の機械トンボから姿を隠せるハズ。


でも、あまり広がり過ぎナいで』


『ありがとう、ユウリナ』


ネネルは返事を返すとぐんとスピードを上げた。


『じゃ、ネネル、ベミー、


シボ、アルトゥール、頼んだわよ』


シボ、アルトゥール、ベミーらを、


背中に乗せたネネル軍精鋭部隊は、


雲を突き抜け浮遊遺跡に潜入した。


同時に数十の機械蜂が遺跡の細部から内部に潜入、


各部隊長以上の視界には次々とマップが形成されてゆく。


ルガクト率いる本隊は一定距離を開けて待機している。


本隊にはジョルテシアからの援軍も含まれていた。


遺跡後部の推進装置、


そして土や植物の根などがむき出しの壁に、


ユウリナから送られてきた爆弾を設置した。


「竜翼人がいる」


シボが呟く。


「そりゃ厄介だな」


アルトゥールは苦い顔をした。


「俺たちが引き受けるよ」


「ベミーの第一目標は〝ゴーレム〟だからね」


ネネルの背中でベミーは頬を膨らませた。


「分かってるよ。それ以外は相手しなくていいんだろ」


「あ、ほらやっぱりいた」


ネネルはベミーを遮って視界の一つの項目をアップした。


「ハイガー旅団、あんなにたくさん……」


「ハイガー……」


シボはハイガーにやられた古傷に手をやった。


「シボ、気持ちは分かるけど、作戦に私情は挟まないでね」


「分かってます」


「ハイガーはルガクトが必ず始末するわ」


一行は所々場所を変え、大量の爆薬を仕込んでいく。


「やはりいました。【千夜の騎士団】です」


部隊長のミミナが声を上げる。


「カフカスさん……」


ネネルはきつく目を閉じた。


覚悟はしてきたつもりだが……


気持ちは重い。


「やっぱり結構兵士乗ってますね。


敵戦力の方がかなり多い」


シボはアルトゥールと目を合わす。


古代浮遊遺跡に駐留する敵兵力はざっと1万強。


対して自軍はネネル、ジョルテシア連合軍3000、


アルトゥール軍1500、


ベミー軍1500の計6000。


「魔人、ゴーレム、ハイガー、


抑えるべきはこの三人。


その隙に目標物を奪う。


速さが命の急襲作戦よ。


各自位置につけ!


……爆破!」








「敵襲? ここは空の上だぜ」


「また訓練じゃないだろうな」


「南ブリムスの連中に行かせろよ」


地下4層の通路には、


テアトラ軍の兵士がごった返していた。


ほとんどの兵士が現在進行形で、


甲冑を着けながら歩いている。


武器保管庫から剣や槍を次々手渡されるが、


空中要塞に敵が来るわけがない、


来たとしても有翼人兵は数が少ないから、


危機にはならないだろう、


という雰囲気が蔓延しているため、


皆どこか覇気がない様子だ。


「おい、道を開けろ。ゴーレムが通るぞ」


ズンッズンッと重そうな足音を響かせながら、


重量級人型兵器ゴーレムが兵士を分けて進んでいく。


「いつ見ても不気味だな。


ちゃんと制御出来てるかも怪しいらしいぜ」


「敵側にもいるんだろ? 


もっと小さいらしいが……。


俺たちじゃ手も足も出ない。


こいつに頑張ってもらわんと」


突然、ゴーレムが戦闘隊形に移行した。


頭部からチェーンガンが出て、装甲が広がり、


身体中から蒸気がバシュ―ッと噴き出す。


「おい!なんだ!」


「離れろ!」


「壊れたのか!?」


その時、グオオオオオーーー!!!と、


野獣のような声が響き渡った。


「なんだ、この声……」


ふいに突き当たりの角から、


兵士が大勢飛ばされてきた。


「武器を構えろ!」


部隊長の声が響く。


通路の角からまた人が紙きれのように、


ぶっ飛ばされてきた。


息も絶え絶えな兵士が叫ぶ。


「獣人だ!狂戦士化してる!」


「ベミー・リガリオンだ!!」


兵士たちがざわつく。


「……ベミーって【七将帝】の?」


「各戦線で何体もゴーレムを破壊してる、


〝ゴーレムキラー〟だ。


本営から優先抹殺対象にされている」


冷や汗をたらした部隊長が呟く。


そこからは一瞬だった。


通路の角から影が見えたのと、


ゴーレムのチェーンガンが作動したのはほぼ同時。


影は通路の壁や天井を飛び跳ねながら接近、


ゴーレムのチェーンガンは追い切れず、


ただ味方の兵士を千切れ飛ばしてゆく。


一発で6、7人を貫通する弾丸の威力は強力で、


通路はあっという間に血の海になった。


影は一瞬でゴーレムの背後に回り、


その鋭い爪を首筋に突き立て身体の内部を破壊した。


地響きと共に崩れ落ちたゴーレムの後ろには、


身体から蒸気を立ち上らせ、


殺気を放つ豹人族の少女がいた。


狂戦士化を解いた後も強烈な威圧感を放つベミーに、


わずかに生き残ったテアトラ兵達は、


腰を抜かして戦意を喪失した。


「……お前ら、竜翼人はどこにいる?」


ベミーに話しかけられた兵士は小さく「ひぃ」と叫び、


天井を指差した。


ベミーは嬉しそうに笑うとその場から立ち去った。








シボ、アルトゥールら約50名の兵士たちは、


地下へと向かっていた。


「やっぱりハイガーいたか……」


「おい、さっきネネルにも言われてたけど、


ルレの仇討とうなんて考えてるんじゃないだろうな」


「心配しないで。さすがに任務優先するわよ。


もしも偶然目の前に現れたら仕掛けるけど」


階段を降り、朽ちかけた通路を進んでゆく。


ケーブルがぶら下がっていたり、


こじ開けられた扉が転がっていたりと、


大昔から何度も荒らされた形跡があった。


「シボ、お前、ルレの事まだ……」


長い金髪を揺らし、


険しい表情のシボは横を歩くアルトゥールをチラッと見た。


「……さあね。自分でも分かんない。


あの時、私の腕の中でルレさんが息を引き取る時、


自分の事は忘れてくれって言ったの。


……なんでだろ」


さっぱりとした表情で独り言のように呟く。


「……別の男を見つけて、


シボは幸せになってくれってことだろ」


「え、そういうこと?」


「いや、そーだろうよ。


俺だって同じ状況なら同じようなこと言うよ」


二人は顔を見合わせて共に驚いた。


「……それを汲み取れなきゃ、


ルレも浮かばれないな」


「う、うるさい……」


赤面したシボはしかし、すぐに真顔になった。


「……別の男って、ちょっと冷たいよね」


「重たい女だな。死者に怒るなよ」


アルトゥールの軽口にシボは反応しなかった。


「死者は何も語らない……か」


笑顔をひっこめたアルトゥールは、


真っ直ぐ前方を見るシボの横顔から、


しばらく目を離せなかった。








地下13層の通路にて、


シボ率いる【護国十二隊】三番隊と、


アルトゥールら7名は、


ウィド率いる南ブリムス連合軍と衝突した。


兵数は4倍ほどだ。


直前に機械蜂を爆破して弓兵を殲滅、


敵がたじろいでいる所に突っ込んだ。


「最速で崩す! 


穴が開いたらシボっ!


半数を連れて目標地点まで行け!」


アルトゥールは次々と敵を斬って道を作る。


アルトゥールが連れてきた数人は、


特に優秀な兵士達で、


剣術レベルも実戦経験も相当に高かった。


たった七人で既に40人以上を屠っていた。


更に【護国十二隊】の基本装備は連弩だ。


圧倒的な速力で装填できる飛び道具は、


敵の数をあっという間に減らした。


通路は明るく、天井も横幅も広い。


すぐに敵の隊列は乱れ、


向こう側に抜ける穴が出来た。


シボ達がすかさず穴を抜ける!


「あとで会おう!」


「生きててよ、アルトゥール!!」


残ったアルトゥールたちは喜々として剣を振るう。


「楽しいかー!」との声に、


部下たちは「オオー!」と応える。


「ヴァンダム!そいつを逃がすな、多分偉い奴だ!」


こそこそと壁際を張って歩く豪華な鎧の禿げ頭に、


ヴァンダムは「了解!」と言いながら短刀を投げた。


刃は首筋に深く刺さる。

ネネル・ラピストリア  雷を操る魔人で有翼人の少女。

キトゥルセン軍【七将帝】。敵であるカフカスの元弟子。


アルトゥール   キトゥルセン軍の若き将軍。

初期の頃から王国に尽くしている。


シボ・アッシュハフ 【護国十二隊】三番隊隊長。

名剣ブロッキスを持つ女剣士。


ベミー・リガリオン   豹人族の少女。数少ない狂戦士化できる天才戦士。

獣人族を束ねる【七将帝】 一人称は「俺」。野生児でややアホ


ルレ   【護国十二隊】の元となった部隊の隊長。シボの上司。

シボとは恋仲だった。将軍候補だったがハイガーに殺された。


ルガクト・ミゼル 有翼人。元ウルエスト最強の戦士「三翼」の一人。

若い頃腕を失い、斧を嵌めている。通称「斧手のルガクト」

将軍の打診があったが自らの意思でネネル軍の副将になった。


ミミナ・スタークス ネネル軍の小隊長 

真面目で優秀な美人有翼人


ヴァンダム・トーラン アルトゥール軍の小隊長。

オスカーの子を産んだメイドのメミカ・トーランの兄。



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